『文豪怪談傑作選・幸田露伴集』 東雅夫/編 ちくま文庫

 文豪・幸田露伴の幻想系のフィクションとエッセイ(だけ!)を一冊にまとめた、自分にとっては理想的な傑作選。「怪談」と書いてあるがこれは本叢書についたシリーズ名であって、本書に限って言えば怪談といえるのはごく僅か。若干の怪異はでるが殆どは幻想譚と言った方が良いくらいのもの。
 でも、前からこういう本がでるのを待っていたんだよね。何で出ないのだろうと思っていたら、解説で編者による理由(言い訳?)が述べられていた。それによれば、露伴があまりにも博識なので注釈をつけないと分からない単語が多くて、今まで手が付けられなかったそうだ。確かに本書をみると、どの作品にも懇切丁寧な注釈がついているのでとても良く理解できる。もっとも全部が理解できなくても、字面だけ追って雰囲気で読んでしまってもそんなに支障はないんだけど。(笑)

 話は少し飛ぶ。本書を読んでいて幸田露伴と泉鏡花の違いについて感じた事を、忘れないうちに書いておこう。
 露伴と鏡花、どっちも好きだけど傾向は少し違っている。それは何かというと、露伴が「理」で鏡花は「情」ということ。怪談は「出るか出ないか」というあたりが一番ドキドキして面白いのだけれど、鏡花の場合には「そういう世界」は実在するのが前提であり、怪異のポイントは「いつ出るか」という点につきる。それに対して露伴の場合は「理性では信じがたいが、実際にはあるかも知れず無いかも知れず…。」という、鏡花の一歩手前の不安な心理状態でふらつかせることで恐怖を煽っている。このような書き方だと実際に怪異が起こってしまえば話はおしまいな訳で、初期の作品「対髑髏」などでは最後がとってつけたような終わり方になっているのも致し方ないといえる。しかし円熟味を増した「幻談」などでは最後まで「出るかも知れず」をうまく引っ張っていて何とも言えない余韻を残す仕上がりになっていて、とても上手い。

 でもいくら上手くても、きっと一部の物好きな好事家が買うくらいで売れないんだろうなあ。(笑) そのあたりは筑摩書房もよく承知していて出版部数が少ないらしく、近くの本屋に配本されてないので買うのもひと苦労だったし。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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