買うのが恥ずかしい本

 本屋で買うのが恥ずかしい本というのがある。大きく分けて2種類のタイプがあって、まずは「題名が恥ずかしい本」。

 世間的にはちょっと誤解を受けそうな名前が付いている本がある。
 デカダンス(頽廃芸術)や、ある種の幻想文学を語る時には“エロティシズム”という概念が付きもので、割と“学術的な香り“がする本だったらそれほど恥ずかしくはないのだが、それでもエロティックな種類によってはどうしても苦手なものがある。例えば直截的にロリコン系を連想させるものがそう。例えば澁澤龍彦の『少女コレクション序説』(中公文庫)しかり、ロリコンという言葉自体のもとになったウラジミール・ナボコフの『ロリータ』(新潮文庫)なども、ホントはそれだけの本じゃないのに買うのに気が引けてしまう。
 『少女コレクション…』なんて本を1冊だけレジにもっていくと、いかにもアルバイト風の若い店員さんに「ああ、そういう人なんですね。」と思われるんじゃないかという気持ちで一杯になり、とっても恥ずかしい。別にエッチなものを買う訳じゃないのだから(いや、エッチはエッチか/笑)、堂々とすればいい訳だが、かといって何冊かの本と一緒に持って行ったとしても、一番上に置かれた“かの本”を店員が持ちあげて、お客のいる前で「カバーをお付けしますか?」なんて訊かれるのが恥ずかしい。じゃあ他の本の下にして持って行けば良いかと言えば、「ホントはこれが買いたいだけで、他はダミーなんでしょう」なんて思われてるんじゃないかと考えると、やっぱり恥ずかしい。(ちなみに『少女コレクション序説』は最終的に年配のおばちゃんがレジをやっている古本屋で買いました。)
 いっそのことバタイユの『眼球譚』や『マダム・エトワルダ』、あるいはマゾッホの『毛皮を着たヴィーナス』あたりまでいってしまえば、バイトの店員には分からなくて良いのかもしれない。沼正三の『家畜人ヤプー』くらい有名になってしまうとばれちゃうけどね。(*)

   *…少しタイプは違うがこんな話もある。笠井潔の『サマー・アポカリプス』(角川書店)
     というとてもかっこいいミステリがある。新刊で出た当時は貧乏学生だったので
     値段の高い単行本は買えず、文庫落ちするのを待っていた。数年たって念願かない
     文庫になったのは良いけれど、そのとき付いたタイトルが『アポカリプス殺人事件』
     という間の抜けたもの。(笑)
     当時はまだ「青かった」ので、レジにもっていくとき、三毛猫やタロット占い師が
     探偵役のミステリと同じようなものと思われるのが、しゃくに触るのと同時に妙に
     恥ずかしかった憶えがある。(今では創元推理文庫に移って、無事にもとの
     『サマー・アポカリプス』という題名で出されている。)

 次は2番目のタイプ「表紙が恥ずかしい本」について。

 本屋でライトノベルの売り場を通りかかると、個別の本の書影を見なくても場の雰囲気が変わるのですぐ分かる。マンガチックでハデハデな表紙が平積みになっているコーナーに特に用事は無いので、そんな時はそそくさと通り過ぎることにしている。ところが最近なぜだか、この手のイラストを表紙に採用した本が普通の文庫にも増えつつある。電撃文庫とかスニーカー文庫なんてのはハナから読む気は無いので、幾らでも描いてもらって構わないのだが、講談社文庫なんかに使われるとちょっと困ってしまう。ひとつ例を挙げると、さっきも触れた笠井潔という作家の『ヴァンパイアー戦争』(講談社文庫)。最初に出たときには、わざわざ高いノベルズで買う程じゃないと思って文庫になるのを待っていたのに、いざ文庫落ちしたらラノベ風のイラストがついた本になってしまった。これじゃ40をはるかに過ぎたオヤジが買うにはちょっとばかり“こっぱずかしい”なあ。(おかげで未だに読んでない。)
 もっとひどいのは徳間書店。ハヤカワ文庫版が絶版になっていた川又千秋の傑作SF『反存士の指環』を出してくれたのは良いけれど、よりにもよって徳間デュアル文庫とは。雑誌掲載時の深井国によるスタイリッシュなイラストが印象に残っているだけに、(コヤマシゲトというイラストレーターには悪いが、)今までのイメージとの落差が…(泣)。
 文庫の初収録作もあったので仕方なく買ったけど、恥ずかしかったなあ。(**) 多分どこかの会社の部長さんなんかも、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッガーの「マネジメント」を読んだら』(ダイヤモンド社)を買おうとするとき、同じような思いをしてるんだろうね。

  **…困った挙句、「子供に頼まれて」という顔をして買ったつもりだけど、でも絶対に
     ばれちゃってるだろうなあ。まあいいけど。(笑)
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Author:舞狂小鬼
サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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