『質量はどのように生まれるのか』 橋本省二 ブルーバックス

 素粒子物理学の研究者である著者が、最新の研究を踏まえて書き下ろした「質量が発生するメカニズム」の解説書。パウリの排他律とかフェルミ粒子、ボース粒子とか、高校時代に習った言葉が次々に出てきて懐かしい。一般読者向けに数式を極力使わず説明してくれていて、僅かに出てくる数式も高校卒業レベルの数学知識があれば、何が書いてあるかくらいは充分に理解が可能。(ただし内容はさすがに難しい。クォークが登場したあたりから先、真空中で粒子と反粒子の対消滅が起こるとか量子色力学とかの記述になると、ホントにちゃんと理解できているのか自分でもちょっと自信が無くなってくる。)
 それでもすごく乱暴に結論をまとめてしまえば、だいたい次のような感じ。

 『真空で発生する粒子と反粒子の対称性が自発的に破れることによって、本来は光速であった粒子の速度が光速以下に遅くなり、そのため本来なら質量を持たなかった粒子が質量を獲得した。』

 まあ、やっぱり分かったような分からないような…。(笑)
 これをきちんと理解するには速度と質量の関係だとか(=特殊相対性理論ね)、そもそも真空とは何ぞや?だとか、前提として知っておかなければいけない話が沢山あるので、一言で説明するのは正直言って無理。(笑)
ただ、良くできた科学解説書を読んだ時にいつも思うことだが、多くの研究者たちの努力によってこれらのことが分かってきた経緯を読むと、本当に面白い。
 普通ではまるでありえない不可思議な犯罪(現象)がおこるが、やがて探偵(理論科学者)による天才的な推理と警察(実験科学者)による地道な捜査が真犯人(原因)を追いつめていき、ついには唯一の合理的な答えが白日のもとに晒されて大団円を迎える。 ―まるで良くできたミステリを読んでいる感じがしてこないだろうか。
数式が出てくるのが嫌だとか、そんなことを知って何が面白いのか?だとか、理系の本は好き嫌いがはっきりと分かれがちだが、ミステリ好きな人なら意外と面白がってくれそうな気もする。どうだろう?

 この分野における次のビッグイベントは、ヨーロッパで2009年に稼働を開始した「大型ハドロン衝突型加速器(LHC)」によって、「ヒッグス粒子」および「ヒッグス場」のエネルギー状態が分かること。結果が出るのが何年先になるかは分からないが、それを愉しみに待つことにしよう。

<追記>
 立花隆は10年ほど前に、これから面白くなる研究分野として「脳科学」「再生医療」などとならんで「素粒子物理学」を取り上げていた。当時はそんなものかな?くらいにしか思わなかったが、今にして考えるとその先見性の高さには脱帽。

<追記2>
 この記事を書いてから2年弱ほど後の2012年7月4日。アメリカ合衆国の独立記念日に記念すべきニュースが飛び込んできた。99.9999%の確からしさで、17番目の新たな粒子(つまりヒッグス粒子)が発見されたとのこと!新聞の1面にデカデカと取り上げられるほどのビッグニュースではあったが、解説を読んでも皆いまひとつ理解できなかった様子。職場でもまったく話題にすら上がらなかったのは、返す返すも残念なことだった。
 でもいいのだ。ひとりでこっそり祝杯を上げたから。(^^)
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同感

>数式が出てくるのが嫌だとか、そんなことを知って何が面白いのか?だとか、理系の本は好き嫌いがはっきりと分かれがちだが、ミステリ好きな人なら意外と面白がってくれそうな気もする。どうだろう?

⇒同感できます。数式を見ると、自然に拒絶反応が出てしまいますね。。。
やはり、面白い!って思えるかどうかですね。

Re: 同感

> 数式を見ると、自然に拒絶反応が出てしまいますね。。。

うーん、やっぱりそういう人多いですね(笑)
でも楽しいことがひとつ多いと、人生の楽しみもひとつ増えますよ。
(これはたしか横田順彌あたりからの受け売りですが。)
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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