『新釈雨月物語 新釈春雨物語』 石川淳 ちくま文庫

 この本を読んだ理由は2つ。ひとつは本邦幻想文学の傑作『雨月物語』が、石川淳の手によってどんな風に仕上げられているか?そしてもうひとつは原作が絶版で読めない『春雨物語』はどんな話なのか?このふたつを確かめてみることだった。
 ひとつめの『雨月物語』については、格調高い原文の雰囲気はそのままにサクサク読めて快適だった。どの物語も傑作だがとくに「白峯」「吉備津の釜」「青頭巾」なんかは最高。こうなると昔読んだ時の記憶に頼るばかりでなく、上田秋成による原作にも直接あたって読み比べしてみたくなる。なお後書き代わりに収録された「秋成詩論」の中で石川は、「菊花の約」の原作の冒頭にある一文を、読者に誤解を招く無駄な文句であるとばっさり切り捨てているが、自分の記憶と今回の新釈版では全く印象が変わらなかったので、そこまで言わなくてもという気もする。きっと一文ずつ比較すると細かいところが違っているんだろうとは思うし、それが筆者のこだわりなのだろうと思うが、自分のような鈍感な読者にはあまり意味をなさないかも。結局、原作がもともと良かったから面白かったのかリライトが良かったのか分からなかった(苦笑)。 また「菊花の約」については、そもそもの元ネタである『聊斎志異』も一緒くたにして3つ巴で比べてみたい気もするが、2冊とも本を仕舞ってある段ボールの山から探し出さなければいけないし、“お気らく読書”なのでそんな面倒なことはしない。記憶を反芻して楽しむだけ。
 ふたつめの『春雨物語』については、絶版になっている理由がだいたい分かった。筋運びがあっさりしすぎて、雨月のようなものを期待するとちょっと戸惑いがある。起伏がなく淡々と進む物語は、星新一の時代小説を読んでいる時のような不思議な感じがする。それがぴったり嵌まって傑作に仕上がったのが、石川淳も述べているように「樊噲(はんかい)」である。これなら無理して絶版の原作を探すまでもないかな。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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