叢書を編む

 以前、アンソロジーについての記事をブログに書いたことがある。(「アンソロジーについて(その2)」/2014.06.22)本好きな人ならば、きっと自分のお気に入りの作品ばかりで編んだアンソロジーを夢想したことがあるのではないだろうか。好きな短篇の著者と作品名をずらりと並べたリストが出来たら、眺めているだけで愉しくなる。ただし翻訳物のアンソロジーの場合は、ちょっと難易度が上がるかもしれない。
 まず世の中に既に出ている本が、訳者などによってセレクトされたものであるケースが多い。そのため自分で全く新しいアンソロジーを編もうとすれば既にある本の二番煎じになるか、それが嫌なら自分で原書から未訳作品を選ばなくてはならないわけだ。(英語圏以外のものではまず不可能。昔の雑誌に掲載されたきりで埋もれている短篇を集めるという手もあるが、古い雑誌を探すのもまた一苦労だ。)そんなわけで、時間/資金/語学能力のいずれも充分とは言えない自分のような人間にとっては、自作アンソロジーを考えるのは結構ハードルが高かったりするのだ。
 だからとりあえず試すとすれば、国内作家のアンソロジーということになる。しかしこれがまた悩ましいのだ。好きな作家の短篇を集めてこようにも、思い入れのある作家の場合は、どの作品も好き過ぎて選ぶことなんて出来やしない。また星新一氏のように多作家の人ならともかく、短篇はあまり書いていない作家だってたくさんいる。(いわゆる長篇型というやつ。)自分の好きな作家が選べるほどたくさんの短篇を書いていないからといって、色んな作家の作品から数作ずつ選んで集めたごった煮のようなのもちょっと中途半端で面白味が減るし......。
 というわけでその時ひらめいたのが、ホルヘ・ルイス・ボルヘス(*)編の『バベルの図書館』という叢書。(ふう、前置きが長かったが、やっと今回の題名につながった。)

   *…海外小説や幻想小説のファンでなければご存じないかも知れないが、
      アルゼンチン出身のそういう作家さんがいるのです。

 元々この「バベルの図書館」というのは、彼が書いた同名の短篇小説にでてくる架空の施設のこと。これまでに書かれたあらゆる本とこれから書かれるあらゆる本を収蔵しているとされる、まさに本好きの夢のような図書館だ。ボルヘスはその後この短篇と同じ名前をつけた叢書を編纂することになるのだが、これは古今東西の幻想小説を作家別に集めたアンソロジーで、収録作家はカフカやE・A・ポーといった大御所からアラルコンやヒントンといった聞いたことの無い作家まで幅広く、全て揃えるとなんと40巻にもなる。
先ほどひらめいたのは、自分もこれを真似てアンソロジーではなく既にある作家の短篇集をひとつの巻とした叢書であれば、割と簡単に編めるのではないかということだ。それからはお気に入りの短篇集に出会うたび、個人的な「幻想と怪奇のマスターピース」のリストに加えていくことにした。
 というわけで、今からご紹介するのはオリジナル叢書のためにこれまでに集めた収録作品のリスト。これからもまだ増えていくと思うが、とりあえずは現時点までの中間報告ということでご承知おきいただけると幸いである。

<幻想と怪奇のマスターピース短篇集(国内篇)>
 1)『完本 酔郷譚』  倉橋由美子 河出文庫
 2)『青蛙堂鬼談』   岡本綺堂  中公文庫
 3)『高丘親王航海記』 澁澤龍彦  河出文庫
 4)『ラピスラズリ』  山尾悠子  ちくま文庫
 5)『家守奇譚』    梨木香歩  新潮文庫
 6)『一千一秒物語』  稲垣足穂  ちくま文庫
 7)『あめだま』    田辺青蛙  青土社

 こうして並べてみると、自分の嗜好が割と静かなタイプの幻想小説であることが解って面白い。なお一応はひとり一作品という原則で選んであるが、好きな順に並べてあるわけではなく、あとから思いついたものを増やしているだけなのでリスト自体は順不同。各順位のいちばん後ろに書いてある文庫や出版社名も、現時点で入手しやすそうなのを記載しただけで他意はない。古い本だとこれまでに別の形で出版されていることもあるため、必ずしもこの文庫でなくても読めれば別にどんな版だって構わないと個人的には思う。
 とはいうものの少し悩むのは、『一千一秒物語』の扱い。今回はちくま文庫版を選んでみたが、収録作が新潮文庫版では全く違うのでそちらも面白いし、さらに河出文庫の『ヰタ・マキニカリス〈1〉』に特別収録されているので、「一千一秒物語」+『ヰタ・マキニカリス』をセットで愉しむという手もある。
 この<幻想と怪奇のマスターピース>というリストについては、これからも少しずつ増やしていって最終的には10冊ぐらいまで増やしたいと思っている。少しずつ増えていくのが愉しいのだ。また今後は、好きな海外作家の短篇集もしくは長篇で編んだ叢書も挑戦してみたい。どんなテーマで選ぶかはまだ考えていないが、この「オリジナル叢書」というアイデアは遊びのネタとしてこれからも色々と使えそうだ。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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