震災と随筆

 4月14日の夜を皮切りに熊本地方を次々襲った地震は甚大な被害をもたらしている。大きな余震がまだ続いていて状況は予断を許さず、避難所にいらっしゃる方々の心労もいかばかりかと思う。お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々が一日でも早く元の生活に戻れることを心から願ってやまない。

 ところで今回の地震でも、東日本大震災のときのようにツイッターを始めとするSNSが情報のライフラインとして活躍したようだ。一部には悪質なデマやこの機に乗じたヘイトなどもあったが、いち早く指摘して非難・無効化する動きもあり、被災地以外の人たちもただいたずらに騒ぐのでなく自分達に出来ることをしようと声を掛け合うなど、以前の震災の教訓がうまく活かされているように感じた。
 さて話は変わるがこういった都市型の震災として頭に浮かぶものとして、古くは大正12年に東京を襲った関東大震災がある。そして東日本大震災のあと、関東大震災に関する本がいくつか出ていたのを今回の件で思い出した。まずひとつめは物理学者にして夏目漱石の弟子だった寺田寅彦による随筆が二冊。『天災と日本人』(角川ソフィア文庫)と『地震雑感/津浪と人間』(中公文庫)というものだ。それぞれ随筆選とか随筆選集といった副題が付けられており、災害をテーマにした文章ばかりを集めたものになっている。寺田寅彦は随筆の名手で沢山の文章が残されているので、このようにひとつのテーマにしぼった本も編めるということなのだろう。自分は寡聞にしてこの二冊しか知らないのだが、他にも同じ著者で自然災害について書かれた文章を収録した本があるかもしれない。(おそらく全集には皆入っているのかな?)
 そしてもうひとつは、自分が大好きな泉鏡花の『おばけずき』(平凡社ライブラリー)という本。これは創作ではなく、いわゆる「こわいもの」について書かれた随筆を集めたもので、怪談に関する文章はもちろんだが関東大震災の体験について書いた3篇の随筆も収録されている。両者の文章ともそうなのだが、危機的状況に陥った時にこそ、その人がもつ真価が発揮されるというか、あるいは人間性が見えてくるような気がする。震災ではないがたしか江戸川乱歩も、東京大空襲のときに身を挺して町内のひとたちのために尽くしたのじゃなかっただろうか。うろ覚えだけど。(他に幸田露伴にも地震に関する随筆はあったような気がするが、残念ながら見つからなかった。)

 当座の緊急事態対応が終わってライフラインが復旧すると、これから徐々にではあるが元の生活が取り戻されていくことになるのだろう。しかし物質的な充足がなされたあとも、今後長期に亘って精神面でのケアが必要になっていくに違いない。そんな「鎮魂」と「沈思」の時間のためには、こういった先人たちの言葉も何かの役に立つのではないだろうか。また被災地以外の方にとっても心の在り方を考えてみるとき参考になるのではないかと思う。

 一刻も早く被害にあわれた方々の生活と被災地の復旧がなされ、そしてまた復興がなされていきますように。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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