My Choice/2014年印象に残った本

 今年は下半期に仕事が忙しくなったせいもあって、読書量がガクッと減ってしまった。来年は何とかしたいものである。一方で読書会を始めとする本を通じたお付き合いが非常に活発にできたのは良かった。これは今後もぜひ続けて行きたいものである。本を読む喜びを何倍にも増やすことが出来るのが好いね。さてそれでは今年の締めくくりとして、これまで読んだ本の中から「印象に残った本」を挙げてみよう。

<新刊部門> ―今年出版された本―
『ピース』 ジーン・ウルフ 国書刊行会
  *西崎憲氏と館野浩美氏の二人の訳者による快挙。よくこれだけの本を日本語に移せ
   たものだと感心してしまう。あいかわらずの“信頼できない語り手”が“油断ならない
   読書”の愉しさを誘う。今年出たSFでは個人的にはベストかな。読んだ小説の中でも
   1,2にを争う出来だと思う。
『ゴーレム』 マイリンク 白水uブックス
  *やっと読めた幻想文学の有名な傑作。白水uブックスはエライ!悪夢のようなプラハ
   の町が描写される。
『生命(ゼーレ)の哲学』 岩渕輝 春秋社
  *19世紀ヨーロッパの“知の巨人”グスタフ・フェヒナーの生涯と彼の思想の変遷を
   辿るノンフィクション。
『満足の文化』 J・K・ガルブレイス ちくま学芸文庫
  *80年代のアメリカ社会における中産階級に着目し、高所得者層を含む「今の生活
   に満足している人々」が選挙の趨勢を握るようになった状況を分析した本。今の
   日本でこそ広く読まれるべき本ではないか。
『世界堂書店』 米澤穂信/編 文春文庫
  *『折れた竜骨』や『氷菓』などの作品で有名なミステリ作家・米澤穂信氏が、世界中
   から選りすぐった短篇を選んだアンソロジー。これまでに出版された訳書からのセレ
   クトなので既読の作品も中にはあるが、短篇の好さを存分に味わうことが出来る。
『女の子よ銃を取れ』 雨宮まみ 平凡社
  *ファッションを中心に、世の中の女性が“外観”に関して感じている「生きづらさ」を
   楽にしてくれるエッセイ。
『リテラリーゴシック・イン・ジャパン』 高原英理/編 ちくま文庫
  *文章(文学)で表現されたゴシック趣味“リテラリーゴシック”の出現を高らかに告
   げる大部のアンソロジー。かなりこだわりのある“尖った”選定なので当然自分の好
   みと合わない作品も出てくるわけだが、それも含めて非常に刺激的な本だった。
   こういうものがもっと出てくると、出版界はもっと活性化するのではないか。(単に自
   分が読みたいだけとも言える。/笑)
『喰らう読書術』 荒俣宏 ワニブックスPLUS新書
  *わが敬愛する読書人である著者が、一番面白い読書の仕方と紙の本への愛着を
   熱く語った一冊。いわゆる“役に立たない読書”の指南書として、これはもう最強なの
   ではないか、という気もする。まるで名人の話を聞いているような心持ちになれる。
『「下り坂」繁盛記』 嵐山光三郎 ちくま文庫
  *こちらもまた腹が据わった著者による名人芸のような一冊。”不良中年”改め”暴走
   老人”となった著者による、無手勝流のその日暮らしのすゝめ。
『江戸しぐさの正体』 原田実 星海社新書
  *現在大きな問題となっている架空の"江戸"の道徳の嘘を暴き警鐘を鳴らす。現在
   の文部科学大臣は江戸しぐさに限らず数多くのオカルト史観やトンデモ理論を信奉
   しているようなので非常に心配。小中学生の子供を持つ親や学校関係者は必読で
   はなかろうか。
『熱帯雨林の彼方へ』 カレン・テイ・ヤマシタ (新潮社)
  *長らく入手困難になっていたマジック・リアリズム文学の傑作の復刊。ラファティや
    ガルシア=マルケスやヴォネガットを彷彿とさせるような物語が展開する。
『郵便局と蛇 A・E・コッパード短篇集』 ちくま文庫
  *比類なき短篇作家コッパードのオリジナル作品集で西崎憲・編訳。これも長らく入手
   困難だった本の文庫化で大変に嬉しかった。冒頭の「銀色のサーカス」から「郵便局
   と蛇」「うすのろサイモン」「若く美しい柳」と続く流れがまず堪らない。悲しさも残酷
   さも含めて極上の作品集といえるだろう。
『怪奇文学大山脈Ⅱ』 荒俣宏/編纂 東京創元社
  *全3巻で構成される西洋近代名作選のうちの第2巻。『短編小説日和』や『怪奇
   小説日和』、それに『世界堂書店』といったアンソロジーと同様、本を読むことの面白
   さを再認識させてくれるような作品が並ぶ。早いこと第1巻と第3巻も読んでみなけれ
   ば。
『近代化と世間』 阿部謹也 ちくま文庫
  *中世ドイツを中心としたヨーロッパ文化研究で知られる著者が、「個人」を基本とする
   西洋的な価値観と「世間」を中心とした日本的な価値観を比較した本。今の日本社会
   に根強く残る差別や諦観といった「負の価値観」が、「世間」を基にした個人意識に依
   るものだという分析が、衝撃的ながら説得力を持つ。
『神道』 トーマス・カスーリス ちくま学芸文庫
  *日本独自の”宗教“である神道を客観的な眼で分析した本。漠然とした体系を「実存
   的神道」と「本質主義的神道」とに分類し、それぞれの古代からの変遷を辿る。


<既刊部門> ―古本・絶版とりまぜて今年自分が読んだ本―
『皆勤の徒』 酉島伝法 東京創元社
  *出版は2013年8月だが読み終わったのが2014年1月だったので昨年のリストには入
   れられなかった。イマジネーションの極北といえそうな連作SF集。独特の造語を駆使
   した異様な文章によって、人類の未来史が語られる。
『白熱光』 グレッグ・イーガン 新☆ハヤカワ・SF・シリーズ
  *これもぎりぎり2013年12月に出たので昨年読めなかった本。現代物理学の最新理論
   を生で描くのでなく、物語としてうまく取り込んでいるところが好い。個人的には“ハー
   ドSF作家イーガン”の現時点での最高作ではないかとおもう。
『エレンディラ』 G・ガルシア=マルケス ちくま文庫
  *4月17日に訃報が流れたノーベル賞受賞作家の短篇集。久しぶりに読み返したがや
   はり傑作。
『ストリート・キッズ』 ドン・ウィンズロウ 創元推理文庫
  *こちらも読書会準備のための久しぶりの再読。へらず口を叩きながらも懸命に生き
   るニールの姿が心を打つ、新感覚ハードボイルドの傑作。何度読んでも面白いもの
   は面白い。
『所有せざる人々』 アーシュラ・K・ル・グィン ハヤカワ文庫
  *恥ずかしながらこの年になって初めて読んだ。しかし若い頃に読んでも本書の好さ
   は理解できていなかったかも知れない気もする。硬質で刺激的な思弁に満ちた長篇
   SFであり、『闇の左手』とならぶ著者のSF作品の代表作。
『ストーカー』 アルカジイ&ボリス・ストルガツキー ハヤカワ文庫
  *敬愛するストルガツキー兄弟の代表作だが、ながらく入手困難になっていた本。
   復刊フェアで再び手に入るようになったのが嬉しいが、次はぜひとも『蟻塚の中のか
   ぶと虫』の復刊を希望したい。

 こうしてみると、今年の読書のキーワードは「アンソロジー」「読書会」「マジック・リアリズム」といったところだろうか。(「怪奇と幻想」の傾向はずっと続いている。)読みたい本は次々と出るので、あとは何とかして読書時間を捻出しなければいけないなあ。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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