「名古屋SFシンポジウム」簡単レポート

 2014年9月27日に椙山女学園大学の国際コミュニケーション学部にて、記念すべき名古屋SFシンポジウムの第1回が開催された。昨年の7月には「国際SFシンポジウム」の名古屋大会(=日本SF作家クラブの創立50周年記念のイベント)が同じく椙山女学園大学で開かれたが、今回は完全に名古屋独自のイベントである。これらは地元での文化事業を盛んにしようという多くの方々のご尽力により開催できたわけだが、今や椙山大学のある星ヶ丘は名古屋のSFイベントの聖地となりつつある気がするね(笑)。
 今回の名古屋SFシンポジウムの発起人は椙山女学園大学教授の長澤唯史氏と、県立高校の教諭をしながらSFの書評の世界でも広く活躍する渡辺英樹氏。当日はお二人の司会によって「SFと翻訳」ならびに「アニメ漫画の中のSF」という演題で、都合2時間半にわたるパネルディスカッションが繰り広げられた。参加無料で事前予約もないため当日の参加者はふたを開けてみないと分からず緊張したが、事前告知の甲斐もあってか60~70名ほどの方にお越し頂くことが出来た。ミステリー読書会でお世話になっている皆さんにも大勢駆けつけていただけたし、中には飛び入りで当日の朝に東京から新幹線に飛び乗って来て頂いた方もいらっしゃったりして、とても嬉しいサプライズだった。(伊東さん、ユイーさん、その節はありがとうございました。また、牧さんご夫婦や宮崎さんも岩田さんも、皆さん遠路はるばるお越しいただきありがとうございました。)
 さてさっそく当日のプログラムについてだが、第一部のパネル「SFと翻訳」に参加したのは、英米作品の翻訳やオリジナルアンンソロジーの編集で知られる中村融氏とロシアSFの翻訳や格闘技の研究でも知られる大野典宏氏、そして不肖・翻訳SF読者の代表として当ブログ管理人の3名。内容としては、翻訳家のお二人には「翻訳をするようになったきっかけ」や「翻訳を行う上での苦労や愉しさについて」など、ざっくばらんに司会の長澤氏が訊いていく形。「翻訳を巡る現状」では「翻訳だけでは生活が出来なくなっている現状について」など、ときおり暗い話を交えながらも全体的には和気藹々とした雰囲気で進められた。印象に残っている話題としては、中村氏による「日本語に置き換えるときに人称を変えることについて」や「許せる誤訳と許せない誤訳」について、それに大野氏による「共産国ではファン活動が非合法であった件」などが面白かったが、メモが取れないので細かな点を忘れてしまったのが残念。(どなたか詳しいレポートを書かれていないだろうか。)
 一方の自分に対しては「翻訳小説を読み始めたきっかけ」や「翻訳を読む喜びと難しさ」などについて話が振られたが、(ある程度の想定問答は事前にすり合わせして作ってあるにせよ)基本的にはぶっつけ本番。本当ならあれも喋ろうこれも喋ろうと考えていたネタ(*)も使えず、どぎまぎしているうちに終わってしまった。果たして愉しんで頂けたかどうか、今だに心配ではある。

   *…例えばスタニスワフ・レムの『ソラリス』はメルヴィル『白鯨』を意識して書かれた
      とおぼしき部分があって、そう考えるとソラリスの海は完全なる他者という意味
      でモビー・ディックになぞらえているのではないか?とか、J・G・バラード『千
      年紀の民』はネグリ&ハートの『<帝国>』を参考にしているのではないか?
      など、乱読により色々な本の相乗効果が生まれて読書がより愉しくなるといった
      話。(あんまり小難しい話は言わなかった方が正解だったかも。/苦笑)

 休憩をはさんで第二部の「アニメ漫画の中のSF」では、iPS細胞の研究者でありSF評論活動もされている京大の山代嘉美氏をコーディネーターとして、評論家の山川賢一氏と名古屋大学SF研究会OBで書評なども手掛ける片桐翔造氏、そして名古屋SF研究会所属の現役学生である伊部智善氏によるセッションが行われた。
 内容は多くのアニメや漫画の中に登場する、SF小説にヒントを得たとおぼしき世界観やアイデアを紹介するというもの。トップバッターである山川氏は『魔法少女まどか☆マギカ』や『仮面ライダーBLACK』『新世紀エヴァンゲリオン』といったアニメ・特撮作品の構造が実は『2001年宇宙の旅』にかなり近いということを指摘した。つづく片桐氏は同じくアニメ『キルラキル』に出てくる「意志をもった服」という設定の元ネタがバリントン・J・ベイリー『カエアンの聖衣』からヒントを得たものであることを紹介し、伊部氏は『セントールの悩み』という漫画やラノベの中に、ファンタジーの住民である仮想生物たちが現実の世界に暮らすときの社会構造や生物学的な苦労という、R・L・フォワード『竜の卵』やB・オールディス『地球の長い午後』などの異世界SFにも似た面白さを熱く語った。そして最後には八代氏がiPS細胞の話題を使って、これら3つの(テーマも内容も全く異なる)プレゼンを見事にまとめあげたところで予定の時間が来て終了となった。
 こちらのパネルは会場の若い参加者からも笑い声がおこったりしていたので、きっと皆さん愉しまれたと思う。(自分の方は良くわかりません。/笑)

 以上、当日は当事者ということもあってメモを取っている精神的な余裕もヒマも無かったので、詳しいレポートが書けずに申し訳ないが、何となくの雰囲気は掴んで頂けたのではないかと思う。
 来年以降もぜひこのシンポジウムを続けて行きたいと関係者一同はりきっているので、今度はまた趣向を凝らしてさらに参加者の方が愉しめる企画になれば良いと思う。乞うご期待。

<追記>
 今回のシンポジウムのもうひとつ大きな特徴として、大学をお借りしたイベントには珍しく「ディーラーズルーム」が開催されたことが挙げられる。ディーラーズルームとは簡単に言えば即売会のこと。今回は名大SF研の会報(名大出身のミステリ作家・殊能将之氏の特集号など)や日本SF大会「なつこん」のためにプロの作家たちが書き下ろした短篇を集めたアンソロジー『夏色の想像力』といったファン出版の他、アトリエサードの方による新進気鋭のイラストレーターYOUCHAN氏の画集や怪奇幻想専門誌『ナイトランド』のバックナンバーの委託販売、そして中村融氏や大野典宏氏の手がけられた作品の展示即売が特別ブースを作って行われた。普段買えないものを山ほど買い込んだのでえらく散財してしまったが、このような場は地方のファンにとって貴重だと思うので、来年以降も続けられると良いと思う。

 ※今回はいつにも増してマニアックな話題で失礼しました。ミステリやSFといったジャンル小説や、海外文学の世界はなかなか商業的には難しい時代に来ていると思う。このように草の根的な活動を通じて少しでも翻訳小説の読者が増えてくれると嬉しいのだが......。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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