『ジャッキー、巨人を退治する!』 チャールズ・デ・リント 創元推理文庫

 うん、やっぱり面白い。ひさびさに読み返したら元気がでた。 
 デ・リントは『リトル・カントリー(上/下)』も、本書の続編『月の光とジャッキーと』も読んでいるがどの作品も本当に上手い、本当に上手いがどれも絶版。(笑) ― どうでもいい本がベストセラーになって、こういう良質なファンタジーがどれも手に入らないというのはとても悔しい。何とかならないものだろうか? 電子ブックで読めるようにするとか。ただしこの本は丹念に探せばまだ古本屋の均一台で安く手に入るので(それはそれで悔しいけど/笑)、今ならまだ読むことは可能。

 原題は『巨人殺しのジャック』(=「ジャックと豆の木」のこと)であり有名な民話そのままだが、日本語版では(主人公が19歳の女性ということもあって、)日本の読者にも受け入れやすい軽めの題名に変えてある。舞台は現代のオタワ市で、現実世界のビル群と一緒に「もうひとつの世界(=妖精郷)」が二重写しで存在している。そしてそちらの世界では巨人やゴブリン、ハーピーなどの邪悪な生き物たちが勢力を伸ばしつつあった…という設定は良くあるパターンだが、そこからが作者の上手いところ。主人公がたまたま「巨人殺しのジャック」と同じ名前(日本人名なら差し詰め「ヒロシ」の女性版が「ヒロコ」みたいなもの)で、姓もナナカマドの木(=巨人が苦手とするもの)を意味するものであったため、妖精郷を救う冒険に巻き込まれるというストーリーは、実は「構造が同じなら中身が置き換わっても同じ効果を有する」という(レヴィ=ストロースの研究による)神話構造の特徴を下敷きにしていたりする。(余談になるが、中学生のころに夢中だった漫画家の諸星大二郎に『マッドメン』というシリーズがあり、この中にも日本昔話の「三枚のお札」そっくりの状況を主人公が経験するシーンがあって、“呪術的逃走の構造”として説明されていた。)
 「現実とそれ以外の世界」というありがちなシチュエーションも、オカルトという言葉の原義である「隠された(叡智/世界)」という設定にここまで正攻法で取り組んでくれると、それはそれで嬉しくなってしまう。(このテーマは、ジョン・クロウリーがかつて『リトル・ビッグ(Ⅰ/Ⅱ)』という作品で、更に壮大に展開してくれていたものと同じもの。)久しぶりに同じ作者の『リトル・カントリー』も読み返したくなった。

<追記>
 ちなみにクロウリーの『リトル・ビッグ』は、自分が100点満点をつけた小説3冊のうちの1冊。(他の2冊はG・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』とスタニスワフ・レムの『ソラリス(国書刊行会版)』。)これからもっと100点の本が増えてくれるといいなあ。
 (実は0点をつけた本も3冊ある。このブログでは特定の本の悪口を言わないことに決めているので、具体的な書名は言わないけど。(笑))
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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