アンソロジーについて(その2)

 先日は、アンソロジー(複数作家の作品から選定して一冊にまとめた短篇集)の復活が著しく、最近になって『短篇小説日和』『怪奇小説日和』『世界堂書店』といったオリジナルアンソロジーの出版が増えてきたので嬉しいという話を書いた。今度は視点を変えて、アンソロジーを自分で編んでみることについての話をしたい。(今回はいつもに輪をかけてマニアックな話題なので、趣味じゃない方には大変申し訳ないです。/苦笑)

  「アンソロジーを編む」といっても、もちろん本当に出版するわけではない。自分がアンソロジーを編纂するとしたらどんな作品を選ぶだろうかという仮定で、収録作リストを作ってみるというだけのことだ。
 アンソロジーを編むという行為にはとても惹かれるけれど、一方で本人の知識やセンスが問われるようなところがあって、自分でするのはなかなか難しい。どんなテーマで編むにしても、これまで読んだ本の細部など忘れてしまっているから、候補を挙げるだけでも一苦労だ。ましてやそこから収録作を絞り込むには、改めて多くを読み返す必要もあるだろう。そこまで労力をかけるのも大変。なのでアンソロジーではなく、偏愛する作家についてのオリジナル短篇集を編んだり、いっそのこと長篇を主体にして(ボルヘスの「バベルの図書館」や「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」のように)叢書を編んでみる方が良いかもしれない。
 というわけで方針を変えて「小鬼版 奇想幻想小説集成」なんていうのを考えてみる。SFやファンタジーのプロパー作品もふんだんに入れて、ワクワクしたりびっくりするような叢書ができると嬉しいのだが。

 まずに思いつくところでは、SFジャンルからP・K・ディック『ユービック』にJ・G・バラード『夢幻会社』、A&Bストルガツキー『ストーカー』にスタニスワフ・レムの『ソラリス』あたりか。サミュエル・R・ディレイニー『エンパイア・スター』も入れたい。中篇の『エンパイヤ・スター』だけでは一冊に足りないので、『時は準宝石の螺旋のように』の中から短篇を選んで収録する。もしくは長篇『ノヴァ』とのカップリングでもいいかな。ちょっと厚くなるけど。バリントン・J・ベイリーはぜひとも『カエアンの聖衣』と『時間帝国の崩壊』の両方を入れたい。一冊が無理なら特別に2冊になっても仕方ないかな。R・A・ラファティはどれを選ぼうか迷うところだが、長篇なら『地球礁』か『蛇の卵』あたりがいいだろうか。本当は既存の短篇集から選りすぐった傑作選を作りたいところ。短篇集ならコードウェイナー・スミスやホフマンでも一冊編めそうな気がする。あ、コッパードとダンセイニもぜひ入れたい。いっそのことレオ・レオーニによる『平行植物』と、中国の古典『山海経』も入れちゃいましょうか。(笑)

 ちょっと脱線(笑)。気を取り直して幻想&ファンタジー分野からもう少し。まずジョン・クロウリー『リトル・ビッグ』やボリス・ヴィアン『うたかたの日々』、そしてルネ・ドーマル『類推の山』は入れたい。もちろんブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』も必須だ。マーヴィン・ピークのゴーメンガーストシリーズも入れたいのだが、全部入れるととんでもない厚さになってしまう。泣く泣く削ってその中から第2巻の『ゴーメンガースト』を選ぶことにする。(*)

   *…書評家・牧眞司氏のお薦めによればレーモン・クノー(『はまむぎ』『文体練習』
      など)も素晴らしい作品揃いとのことなのだが、如何せん未読なので今回の
      対象からは外した。本の世界はまだまだ奥が深い!

 日本からは、筒井康隆で『驚愕の曠野』を軸に「ヨッパ谷への降下」や「遠い座敷」などの幻想系短篇を。小松左京『日本アパッチ族』も良いなあ。そして泉鏡花の「薬草取り」「眉かくしの霊」といった名作揃いの傑作集をつくる。山尾悠子『ラピスラズリ』に倉橋由美子『酔郷譚』、澁澤龍彦『高岳親王航海記』を合わせて一冊にするのも贅沢でよいかも。半村良はSF伝奇系から『産霊山秘録』と幻想系から『能登怪異譚』の2冊のどちらが良いだろうか……。
 うーん、ここまででざっと25巻ほどになってしまった。まだまだ入れたいものもあるが、そろそろ締めないと全部で100巻くらいになってしまいそうだ。まずは第一期としてこんなところでどうだろうか。


<追記>
 つい昨日、ツイッターで「怪談短篇オールタイムベスト(国内篇)」というアンケートをやっていた。面白いのでさっそく選んでみたのが以下の作品。これをそのまま国内の怪奇小説アンソロジーの目次と考えても、結構いけるかも知れない、なんて考えてみたり。
 アンケートとしては全部で10作品までしか選べなかったが、アンソロジーなら全作収録することだって出来る。もしもこれらの作品をどこかで見かけたら、「小鬼版 怪奇短篇集」だと思って読んで頂けると編者(笑)としては大変にありがたい。

 泉鏡花「海異記」「眉かくしの霊」
 幸田露伴「幻談」
 筒井康隆「亡母渇仰」
 小松左京「くだんのはは」
 半村良「箪笥」
 上田秋成「吉備津の釜」
 岡本綺堂「鎧櫃の血」
 小泉八雲「茶碗の中」
 小川未明「金の輪」
 夏目漱石「夢十夜 第三夜」
 内田百間「サラサーテの盤」
 (順不同)
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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