アンソロジーについて

 今回は最近になって復活甚だしい“アンソロジー”についての雑文をば。

 SFやミステリといったジャンル小説は、何故だか短篇という形式との相性が良い。そのため昔からアンソロジー(*)が数多く編まれてきた。もともと欧米において短篇小説は雑誌への掲載を初出とするケースが多かったが、ジャンル小説の専門誌が衰退していくにつれて短篇発表の場が無くなり、オリジナルアンソロジーへと移行していったとどこかで読んだ。(尤もうろ覚えなので、正確な話かどうかは知らない。)

   *…複数の作家の作品を集めた作品集のこと。テーマ別や年間傑作選など色々な
      タイプがあり、収録作の選定や並べ方によって編者のセンスが問われる。
      アンソロジーを多く編集する人は“アンソロジスト”と呼ばれることも。なお同じ
      ように編者によって編まれるものであっても、特定個人の作品だけを集めた
      個人短篇集とは違う。以上、ご存じのこととは思うが念のため。

 日本では戦前から戦後にかけて、海外のミステリや幻想・怪奇小説、SFなどが多く紹介されてきた。もちろん雑誌を通じての紹介が多かったが、中には有名な作品を独自に編んだり、あるいは向こうで出版された年間傑作選の類いがそのまま翻訳されたりもした。自分の好きなジャンルで有名なものを幾つか挙げるとすれば、例えば下記のようなものがある。

 ■平井呈一編『怪奇小説傑作集(1)~(5)』(創元推理文庫)
 ■平井呈一編『恐怖の愉しみ(上/下)』(創元推理文庫)
 ■紀田順一郎・東雅夫編『日本怪奇小説傑作集(1)~(3)』(創元推理文庫)
 ■メリル編『年間SF傑作選(1)~(7)』(創元
 ■アシモフ編『世界SF大賞傑作選(1)~(8)』(講談社文庫) ※(3)は未出版
 ■筒井康隆編『日本SFベスト集成』(徳間文庫) ※「60年代」~「‘75年」まで全6冊
 ■江戸川乱歩編『世界短篇傑作集(1)~(5)』(創元推理文庫)
 ■早川書房編集部『名探偵登場(1)~(6)』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 キリが無いのでこれくらいでやめておくが、若いころはこういったアンソロジーが一種の入門書の役目を果たしていたように思う。雑誌のバックナンバーを捜して読みたい短篇の掲載誌を入手する、などという“技”を知らなかったので、これらの中から気に入った作品があると、次はその作者の短編集や長篇へと進むというのが、ひとつの流れだったのではないだろうか。特に翻訳小説はそのパターンが多かったように思える。(あくまで自分個人の印象ではあるが。)
 ところがある時期を境にして、こういったアンソロジーが入手困難になってしまった。消費税増税などがきっかけだったろうか。新しいアンソロジーも出なくなり、分厚い長篇やシリーズものばかりが出版されるという、短篇小説ファンにとっては冬の時代がしばらく続いた。(井上雅彦氏による書き下ろしホラーアンソロジー『異形コレクション』などは例外。)
 しかしここ数年前から、その傾向が少しずつ変わってきたように思える。2009年末に河出文庫『NOVA(1)』が出版されたあたりからだったろうか。2010年のハヤカワ文庫『SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー』3冊(『ワイオミング生まれの宇宙飛行士』『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』『スティーヴ・フィーヴァー』)を経て、最近では過去のアンソロジーの復刊も含め、各社で花盛りの様相を呈している感じさえある。ここ一年ほどの間に復刊もしくは新しく出たもののうち、特に気に入ったものを先ほどと同様にいくつか挙げてみよう。(このブログをよくご訪問いただいている方には馴染みの題名だと思う。)

 ■西崎憲編『短篇小説日和』『怪奇小説日和』(ちくま文庫)
 ■高原英理編『リテラリーゴシック・イン・ジャパン』(ちくま文庫)
 ■米澤穂信編『世界堂書店』(文春文庫)
 ■紀田順一郎編『書物愛〔海外篇〕〔国内篇〕』(創元ライブラリ)
 ■生田耕作編『愛書狂』(平凡社ライブラリー)
 ■澁澤龍彦編『澁澤龍彦訳 幻想怪奇短篇集』(河出文庫)
 ■筒井康隆編『異形の白昼』(ちくま文庫)
 ■井上雅彦編『予期せぬ結末(1)~(3)』(扶桑社ミステリー)

 とまあ、こちらもまたキリがない。
 最近の傾向として面白いのは、絶版になって古書価も高騰していた作品が文庫化されたり、あるいは完全に文庫オリジナルの物が増えている点だろうか。またそれが割と売れているようで、増刷がかかっているものも多いようなのだ。出版業界や書店にとって厳しい時代が続いているが、こうして良いアンソロジーが出続けることで、少しでも若い読者の獲得や短篇小説発表の場の確保が、これからも続いていくことを願ってやまない。しかも出来れば文庫で。(なぜなら最近の長篇はやたら長いのが多くて、手に持ったり読んだりするのにやたら疲れるのが多いから。/笑)

<追記>
 今回はアンソロジーの復活礼讃ということで、特に結論はありません。単に好きなアンソロジーの名前を並べてみたかっただけです。(笑)まだまだ名前を挙げたいアンソロジーはたくさん有りますが、読んでいる方は退屈かもしれませんので、これくらいにしておきます。皆さんのお好きなアンンソロジーがあれば教えて頂けると嬉しいです。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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