“教科書読書”の思い出

 小学校のころは、春に新しい教科書をもらうとまず国語の教科書に載っている物語を読むのが愉しみだった。中にはあまりに道徳的な内容でさほど面白みを感じないものもあったけれど(失礼)、トロッコに乗って山道をどこまでも行く話や、病気の母のために季節外れの夏みかんを買いに行く話、それに知り合いにもらったひとかけらのパン(実は木のかけら)を心の支えに命を救われた話などは、いまだによく憶えている。
 その頃の友達に教科書を読む話をすると皆びっくりしていたけど、普通の人はあまりそんなことはしなかったのだろうか? 教科書にはよく吟味された作品が載っているから、自分などは目を通さないともったいない気がしていたけれど…。
 エッセイもわりかし好きで、動物学者・日高敏隆氏の「チョウの道」についての話など、詳しい事は忘れてしまったけれどもけっこう面白かったような印象がある。今にして思えば当時の教科書で出会った様々な文章は、自分の読書の幅を広げるという意味で、とても役に立ってくれたような気がする。
 そんな中でも、特に読んで愉しかったのはやはりSFやファンタジー系の話だった。小学3年まで住んでいた新潟の教科書には星新一の「花とひみつ」(*)が載っていて、あまりに面白いので何度も繰り返し読んだ。その頃はもちろん星新一なる作家のことなど知るはずもなく、それが初対面。だいぶたってから近所のおじさんに貰った『きまぐれロボット』(角川文庫)で再会した時には、びっくりするとともにとても嬉しかったおぼえがある。(もちろんその後は片っ端から読みまくることに。結果、江戸川乱歩とモーリス・ルブランに続いて大好きになった3人目の作家となったのは懐かしい思い出。)

   *…女の子が書いた花を育てるもぐらの絵がもとになり、もぐらロボットが作られる話。

 中高生になってからも、教科書をもらうとまずまっさきに小説に目を通す習慣は続く。そうして初めて読んだもので印象深いのは、たとえば夏目漱石『夢十夜』。(三篇ほどの抄録だったけれどね。子供を背負って夜道を歩く話は怖かったなあ。) 
 そうそう、中高生になってからは国語だけでなく英語の教科書でもいくつか印象深いものがあった。前にも書いたような気がするが、名古屋の公立中学では東京書籍の『NEW HORIZON』という教科書を使っており、遠くの星の人と無線通信をする「最後の通信」という物語が載っていた。英語の勉強をしながら何だか得した気分になっていたものだ。幻想文学の大家であるウォルター・デ・ラ・メアの物語もたしか高校の教科書にあったのじゃなかったかな。どんな話かは忘れてしまったけれど、神話を題材にした物語だったような気がする。(英雄が倒したライオンの毛皮にミツバチが巣を作るとかいう描写があったような。)この出会いがなければ大学生になって『恐怖の愉しみ』での思わぬ再会に驚き、その後『吸血鬼カーミラ』や『怪奇小説傑作集』を手に取ることもなかったかもしれない。出会いというのは面白いものだねえ、人も本も。

<追記>
 大人になってからこのような「偶然の出会い」を作ろうとすれば、リアルな本屋(特に古本屋)にいくのが一番。かくして今日もまたふらふらと本の棚を逍遥するのであります。(笑)
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はじめまして

突然コメントしてごめんなさい。
ふと思い出して 小学校 国語 教科書 もぐら 花 科学者 で検索したところ あなたのブログ?に行きあたりました。

私も学生の頃は新しく貰った国語の教科書を見たものでした。
ずっと気になっていた物語のタイトルが分かった事。
好きな星さんの作品だった事。
ニューホライズン。

何だか親近感を覚えました。
1年の終わり 気持ち良く過ごせそうです。

ありがとうございました。

くみこ様

はじめまして。ブログをご訪問いただきまして有難うございます。

同じ教科書を使われていたんでしょうか。お仲間ですね(笑)。

気が向いたらで結構ですので、またいつかご訪問頂けますと幸いです。
こちらこそありがとうございました。
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舞狂小鬼

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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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