My Choice/2013年印象に残った本

 相変わらず公私ともどもどたばたは続いているが、なんとか先が見えてきたかな。健康でいられただけでも感謝しなくちゃね。今年は3月の殊能将之氏の件を始めとして、身近な人や自分の人格形成に影響を与えた人の訃報に接する機会が例年になく多かったような気がする。自分もそんな年齢になったという事なのだろうか。
さて、気を取り直して、今年の締めくくりとしてこれまで読んだ本の中から、恒例の「印象に残った本」を挙げてみよう。

<新刊部門> ―今年出版された本―
『アサイラム・ピース』 アンナ・カヴァン 国書刊行会
  *熱狂的なファンを持つ著者の第一作品集。今年はなんといってもカヴァン再評価の年。
   本書とともに『ジュリアとバズーカ』が読めたのは本当に良かった。
『もうひとつの街』 ミハル・アイヴァス 河出書房新社
  *珍しいチェコの幻想文学。現実のプラハの街の裏側に広がる「もうひとつのプラハ」
   をめぐる探索の物語。
『短篇小説日和』 西崎憲/編訳 ちくま文庫
  *今年は自分にとって短篇小説再発見の年でもあった。本書はそのきっかけとなった本。
   副題は「英国異色傑作選」といい、粒よりの作品17作に加え訳者・西崎氏による三つ
   の小説論を付す。
『ジュリアとバズーカ』 アンナ・カヴァン 文遊社
  *『アサイラム・ピース』と同じ作者、アンナ・カヴァンの短篇集で、こちらも一応
   新刊ではあるが、正確に言うとサンリオSF文庫で出ていたものの復刊。ヘロインと
   離人症と不安神経症に苛まれる一人の女性の幻想を描く。
『夢幻諸島から』 クリストファー・プリースト 早川書房
  *幻想系SFの傑作。著者が長年に亘って書き継いできたシリーズ「夢幻諸島(ドリ
   ーム・アーキペラゴ)」シリーズの集大成。
『若き日の哀しみ』 ダニロ・キシュ 創元ライブラリー
  *時は第二次世界大戦。ユーゴスラビアに生まれユダヤ人を父にもつ著者の、少年
   時代を描く自伝的小説。
『怪奇小説日和』 西崎憲/編訳 ちくま文庫
  *『短篇小説日和』とともに今年の短篇小説集の収穫。こちらは「暗褐色の異色短篇
   集」という雰囲気が似合う。
『定本 何かが空を飛んでいる』 稲生平太郎 国書刊行会
  *オカルト的な題材を文化人類学や民俗学の視点で読み解いた本。「稲生平太郎」
   「法水金太郎」「横山茂雄」という著者の3つの名義による文章が一堂に会する。
『パンの文化史』 舟田詠子 講談社学術文庫
  *文字通りパンに関する世界中の文化について調べ、そのなりたちや社会における役割
   について考察した労作。前から食物に関する文化史や世界史には興味があって、
   『麺の文化史』とか『ジャガイモの世界史』などその手の本は色々読んできたけれど、
   その中でも本書は出色。
『第三の警官』 フラン・オブライエン 白水Uブックス
  *大晦日のぎりぎりになってとても面白い本を読むことが出来た。ジョイスやベケット
   と同時代の、アイルランド生まれの作家による奇想小説。

<既刊部門> ―古本・絶版とりまぜて今年自分が読んだ本―
『聖杯と剣』 リーアン・アイスラー 法政大学出版局
  *「ジェンダー論の基本図書」の一冊。協調型社会から支配型社会への転換と、それに
   伴う性差別の進行を考察する。
『〈性〉と日本語』 中村桃子 NHKブックス
  *日本語の「女ことば」と「男ことば」に隠された「性差」と、日本社会に色濃く染み
   ついている社会意識を言語学の立場から解き明かす。
『東北学/忘れられた東北』 赤坂憲雄 講談社学術文庫
  *柳田民俗学が作り上げてきた「東北」の概念を覆し、本当の東北の姿を示そうとする
   「赤坂東北学」の試みの開始を告げた本。忘却の彼方に追いやられてしまった東北の
   地と、そこに住んでいた人々のイメージを掘り起こす。
『ルワンダ中央銀行総裁日記』 服部正也 中公新書
  *1965年から6年間ルワンダ中央銀行の総裁を務めた著者による爽快な回想記。
『レストレス・ドリーム』 笙野頼子 河出文庫
  *悪夢をテーマに据えた“居心地の悪い”連作短篇集。この著者の作品はどうも肌に
   合わないと思っていたのだが、ジェンダー論の観点から読むとこんなに面白いもの
   とは知らなかった。
『天来の美酒/消えちゃった』 コッパード 光文社古典新訳文庫
  *「唯一無二」の短篇作家A・E・コッパードの作品集。
『カラハリの失われた世界』 L・ヴァン・デル・ポスト ちくま学芸文庫
  *一時は絶滅したと思われていたアフリカの“大地の民”ブッシュマンを見つけ出す
   までの苦闘を描くノンフィクション。

 こうしてみると、今年の読書のキーワードは「短篇」「ジェンダー」「幻想と怪奇」だったことに気が付いた。来年はもう少しノンフィクションや学術系の充実を図れると嬉しいな。(そして合間にはもちろん怪奇や幻想やSFを読む。そちらは今年に続いて豊作が期待できそうだし。/笑)
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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