『レストレス・ドリーム』 笙野頼子 河出文庫

 笙野頼子氏は前から気になっていた作家。『二百回忌』をかなり昔に読んだきりで、その時は作風が自分の趣味に少し合わなかったか、残念ながら今ひとつ乗り切れなかった。しかしその後も横目でちらちら気にしていたところ、とりあげる題材がことごとく自分好み。そこで今回思い切って再チャレンジしてみたというわけ。

 本作で取り上げられている題材は「悪夢」、それもゾンビに襲われるタイプのものだ。舞台は「大寺院」なる謎の体制組織に統制される街「スプラッタシティ」。一辺がおよそ40kmの正方形で京都をイメージさせるそれは、虚無の中にぽっかりと浮かんだ悪夢の街。夢見る者たちは観光客としてそこを訪れ、殆どの者は何事も無くやがて去っていく。しかし中には特別な「ゲスト」として招かれる者もあり、そんな彼らを待ち受けるのは襲いかかる死者たち...。
 書名の“restless”とは直訳すれば「落ち着かない」「休めない」「絶えず動き続ける」といった意味だが、たしかにそんな感じがぴったりくるような悪夢の連作集で、個人的にはかなり気に入った。これまで読んだ筒井康隆『驚愕の曠野』や安倍公房『カンガルー・ノート』と同じ「悪夢小説」の系譜に位置づけたい。(ちなみにここでいう「悪夢小説」とは、悪夢を何かの隠喩として使うのでなくて、素材のままごろりと目の前に放り出すような感じの小説のこと。本書を読んで自分が勝手に名づけた。/笑)
 「主人公を取り巻く異様な世界」について描く物語は数多いが、その世界の成り立ちを明かすことに主題を置くのであればSFとなるし、襲撃にひたすら恐れおののく様子を描くのであればスプラッタホラー。そして世界の不思議そのものを示すのが目的ならば、幻想小説になるような気がする。本書の場合にはどの要素も色濃くあるのだけれど、それが主人公にとってどのような意味を持つかを描くという点では、やはり「文学」というものなのだろう。(ただし本ブログのカテゴリでは「幻想・SF・ミステリ」にした。)
 最後まで読み進むとやがて悪夢の正体が見えてくるのだが、それは女性たちが社会で生きていく上で感じている閉塞感だったり焦燥感だったり。そして教えて頂いたところによれば、どうやらそれが著者が一貫して追求しているテーマでもあるらしい。重くてつらいテーマだしグロテスクな描写はたくさん有るしで、決して読みやすいタイプの本ではないのだけれど、機会があればまた他の作品を読んでみたいと思わせるものだった。

<追記>
 上の文章を書いた後で、さっそく同じ河出文庫から出ている『母の発達』も買ってきて読了。こちらはグロテスクではあるけれど怖いものではなくて、むしろ「哄笑」に近い感触をもつ連作短篇集。結果、自分にとってますます気になる作家になった。こうして読みたい作家がどんどん増えていくのだよな。(笑)
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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