『ルワンダ中央銀行総裁日記』 服部正也 中公新書

 著者は、国際通貨基金の要請に応じて1965年から71年までの6年間に亘り、アフリカの小国ルワンダで中央銀行の総裁を務めた人物。破綻寸前だった国の経済の立て直しと、その後の発展の道筋となる構造改革に取り組んだ。
 本書はその当時の事を綴った回想記であるが、予備知識もなく徒手空拳で現地に乗り込み、何もないところからひとつひとつ仕組みを作り上げていく過程がとても面白く、経済ノンフィクションでありながらも『ロビンソンン・クルーソー』のような冒険小説の匂いすら漂う。また、著者が赴任していた60年代といえば日本も高度経済成長期で勢いがあり、一方ではまだまだバンカラな気風も残っていた時代。自らの保身しか考えない現地の高官や欧米の経済人たちに業を煮やし、ルワンダ国民のために一肌脱ごうと啖呵を切る著者の心意気は、ちょっと『坊ちゃん』も連想した。(あくまで金融行政のインサイダーによる視点なので、SF好きな人には眉村卓氏の『司政官シリーズ』といえばピンとくるかもしれないね。)
 本編はまるで良く出来た爽快な小説を読むよう。最後まで気分よく読むことが出来た。こんな日本人がいたんだねえ。

 なおルワンダは著者が帰国した後も順調な経済発展をつづけたのだが、残念なことに90年ごろからフツ族中心の政府軍とツチ族によるルワンダ愛国戦線の間で内戦が勃発。94年には「フツ族によるツチ族の大虐殺」が発生し、今ではそちらの方が有名になってしまった。
 著者は赴任を終えて帰国した後も、各地の途上国に関わる仕事を続けていたため、その後のルワンダ情勢にも詳しかったようだ。本書には増補版として著者による1994年の論考「ルワンダ動乱は正しく伝えられているか」が付されている。さらには大西義久氏による1970年~2009年までの経済状況をまとめた小論も加えられていて、今でも使える資料的な価値も充分。
 ただ自分のような一般読者にとってはそれよりも、今後のルワンダが再び安心して住める国になるかどうかの方に関心があるなあ。いや住みよい国に戻れることを祈るよ、ほんと。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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