『万国博覧会の二十世紀』 海野弘 平凡社新書

 19世紀から20世紀にかけて世界各地で開催された万国博覧会について、その背景や主催者、会場の様子といった概要をざっと俯瞰した本。自分はなんせ小学生のころに大阪万博に接した世代なので、「万博」という言葉にはめっぽう弱い。面白そうな本があるとつい手を出してしまうのだ。(笑)
 もっとも、大阪万博が開かれた時はちょうど新潟に住んでいたので、実際に訪れることはついに叶わず。したがってテレビや本でその雰囲気を想像するしかなかったのだが…。(その後、名古屋に引っ越して現在に至るわけだが、今なら間違いなく行っていただろうなあ。)

 最初のころの万博といえば何となくロンドンかパリというイメージ。本書で確認したところではやはり正しかったようだ。しかも19世紀から20世紀初頭の万博は今と違って「商業見本市と技術の誇示」が主目的。簡単にいえば「技術のオリンピック」みたいなものと考えれば良いかも。なお自国民に対する植民地の紹介も兼ねていたようだ。当然ながら国主導で開催されていた一大イベントだったわけ。パリ万博からは、商業と技術に加えてその国の芸術や文化を紹介する比率も増えたらしいが、いずれにしても国威発揚が主目的だった事に違いはない。
 やがて時代を経てアメリカが経済的な力をつけてくると、開催都市はロンドン・パリの2箇所だけでなくシカゴやサンフランシスコなど新大陸に広がりを見せるようになる。そうなるとさすがはアメリカ、万博はそれまでの国家主導イベントから民間主導のエンタテイメントなイベントへと変貌を遂げていくことに。(それにしても初期のアメリカ万博にディズニーが絡んでいたとは知らなかった。イッツ・ア・スモール・ワールドなどのアトラクションも、元々は万博で披露されたのが最初なのだそう。)
 本書では、こんな調子で2005年に愛知で開催された愛・地球博から2010年の上海万博まで、(国際博覧会条約で公式に認められたものからそうでないものまで)色々と駆け足で紹介されている。個人的にはもうちょっと個々の会場の見取り図やパビリオンなどの図版を増やして欲しかったが、それでも概ね愉しく読み終えることが出来た。

 最後に本書を読んで思ったことを少し。
 遊びに行く立場からすると、万博というのは世界各地の風俗や文化が一堂に会する、いわば「お祭り」のようなイベントといえる。しかし後になって昔の万博を振り返ってみた場合、その時代ごとの世相や文化を「層」として切り取り凍結保存したサンプルとも言えるのではないだろうか。例えば1900年のパリ万博ではパビリオンや展示装飾にアール・ヌーヴォーの影響が色濃くでているし、同じく1925年のパリ万博ではアール・デコの影響が明らか。また1939年は第2次世界大戦間際の緊迫した情勢だったため、参加国リストにもその状況が如実に反映されている。大戦後の復興が遅れ1958年にやっと開かれたブリュッセル博では、参加国や催し物に各国の力関係の変化や東西冷戦の構図がそのまま反映されている―― といった按配。
 こうしてみると、万博には経済効果や「国の威信をかけた」といった即時的な目的とは別に、時代のタイムカプセルといった役割もあるのではないかという気がする。(むしろ自分にとってはそちらの価値の方が重いのかも。してみると自分が昔の万博に魅かれるのは、単に“郷愁”という理由ばかりではないのだ。/笑)
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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