薪能2013

 昨年初めて行ったらすごく良かったので、今年も「名古屋名駅 薪能」に行ってきた。開催は7月28日(日)で、何と今年で通算12回目とのこと。JR東海を中心とした名だたる地元企業が協賛している立派なイベントなのだ。名古屋駅前のタワーズビル(JR名古屋タカシマヤの入っているところ)の屋外に特設ステージを作り、事前整理券600名分と当日先着600名分の計1200名に無料で能楽を愉しんでもらおうという、とても太っ腹な企画。能楽堂できちんとした公演を見ようと思えば軽く5~6000円は飛んでいくから、自分のような薄給の庶民にはとてもありがたい。
 昨年は気が付いたら事前整理券の応募締切日を過ぎてしまっていたので、当日早めに会場に行って当日券をもらった。(ただし当日券は席が後ろの方なので小さくしか見えない。)今年は前の方の席で観たかったので締切前に応募したのだが、残念ながら抽選はハズレ。結局昨年と同様に開場の1時間ほど前に行って当日券をもらうことにした。(後で聞いたところによると、事前整理券の競争率はおよそ10倍だったらしい。そりゃあ当たるわけ無いよな。/笑)

 時間までは例によって駅前のジュンク堂や三省堂をうろうろ。街でしか売っていない本を物色したりして時間をつぶし、会場に戻ったのは開演30分前の17時30分。全国学生能楽コンクールの表彰をみたり、河村市長のとぼけたコメントに失笑したりしているうちに、開演時間の18時となった。
 ちなみに当日の演目は以下のとおり。

 1.能  「鶴亀(つるかめ)」
 2.狂言 「盆山(ぼんさん)」
 3.能  「殺生石(せっしょうせき)」

 最初の演目「鶴亀」は、中国皇帝が新年に開く節会の儀式で、池に棲む鶴と亀が安寧を寿ぎ舞を献上したところ、喜んだ皇帝が国土の繁栄を祈って自らも舞を踊ったというもの。動物役の能楽師は頭にその動物の形をした印をつけ、面を被って登場する。衣裳までが鶴は白地、亀は亀甲模様が基調になっていて面白い。面や衣裳の様子からすると、鶴は若い娘で亀は老人に扮しているようだ。なにぶん能には素人なので、面を付けた演者が出てくるとついそちらがメインかと思ってしまうのだが、鶴亀の舞は比較的あっさりしたもの。むしろ面を付けずに素顔(*)で演じていた皇帝のほうがメインだった。
 
   *…素顔で演じることを「直面(ひためん)」というらしい。

 段々と昏くなる空をバックに、続いては2番目の演目の狂言「盆山」。当日配られたチラシによれば、題名の「盆山」とは盆栽に似た箱庭のようなもので、当時大流行した娯楽らしい。物語はさえない男が主人公。この男、盆山が好きで仕方ないのだが自分では気に入ったものを持っていない。そこで立派な盆山を持ちながら自分には見せてくれないケチな知り合いの家に忍び込み、こっそり持ち去ろうとするがあっさり見つかってしまう。そして懲らしめのために知人が「あれは盗人ではなく犬だ」「いや猿だ」とからかうと、その言葉の通りに鳴きまねを演じるはめに…。ちょっと『柿山伏』にも似た話だ。リクエストはどんどんエスカレートして最後は鯛の鳴きまねをさせられるなど、かなりナンセンスな話で気に入った。
 「伝統芸能」というと敷居が高い雰囲気があるが、実際には全然そんなことは無い。このように身近に観られる催し物がもっとあると、イメージも変わるのではないかねえ。

 さてすっかり日の暮れたころに始まるのは、本日もっとも楽しみにしていた最後の演目「殺生石」。
旅の高僧が那須野を訪れると、不思議な石「殺生石」を目にする。やがて現れた里の女(実は殺生石の石魂)に謂れ(**)を聞き、気の毒に思って供養をすると、晩になって白頭の狐(玉藻ノ前の亡霊)が現れる。狐は供養の礼を述べ、今後は悪事をしないと誓って消えていく。副題にあった「白頭」とは何のことか分からなかったのだが、どうやら玉藻ノ前の姿を意味していたようだ。なお玉藻ノ前は動物(九尾の狐)ではあるが怨霊でもあるので、「鶴亀」とは違って狐の印はつけてない。ぼさぼさの白い頭と怖ろしげな面をつけた姿で登場し、典型的な夢幻能の構成となっている。

  **…日本中世の妖怪史を代表する妖怪「九尾の狐」の伝説。インドや中国で世を乱した
     妖狐は次に日本に渡り、「玉藻ノ前」という絶世の美女となって帝に取り入った。
     しかしやがて正体がばれて逃亡し、那須野で退治され石と化す。その後も恨みは残
     り、近寄る生き物の命を奪うその石はやがて「殺生石」と呼ばれるようになった。

 話自体はこれまでお馴染みのものなので、説明なしに観ていてもストーリーが良く解る。妖怪好きな自分にとっては、「幽玄の世界」が反対に「一大スペクタクル」にも思えてきて愉しいのなんの。今回は抜かりなくオペラグラスを持参したので能楽師の人たちの細かなしぐさも良くみえて、心行くまで堪能することができた。
 ただひとつ残念だったのは、最後の最後になって急に雨がパラパラと降りだした事。ラストに狐が高僧に対して礼の舞を踊るのだが、それがえらくあっさり終わった感じだったのは、おそらく気のせいではないだろう。チラシにも雨が降ったら途中で終わる旨の事が書いてあったから、きっと途中で切り上げたのではなかろうか。
 こういったアクシデントがあるのが野外芸能の辛いところ。けれど、風が吹いたりステージの外の音が聞こえてきたりと野趣あふれる観劇ができるのは、薪能ならではの魅力といえるよね。
 チャンスがあればまた来年も行こうっと。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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