山をつくる

 職場や家庭など自分の周囲には、今も昔も本の趣味を同じくする人がいない。そこで以前は黙々と、ひとりで本を読んでいた。新聞や新刊告知サイトで情報を得て本を買い、読み終えたら軽くメモをして次の本に移る。一年を通してその繰り返し。(言うなれば孤独な活字マニアといったところだね。/苦笑)
 しかしここ数年はインターネットネットを通じて大勢の本好きの方と知り合いになり、色んな情報交換が出来るようになった。読んだ本の感想やお薦め本、面白い本などの情報をやりとりして、読書の愉しみ方が何倍にも深まった感じがする。
 そんな中でよく話題として出てくるのは、「本の入手に関する悩み」というやつ。村上春樹のようなベストセラー本ならともかくとして、好みにうるさい”本好きたち”の読みたい本は発行部数が数千部と極端に少ないことも多い。手に入れるのも結構大変なのだ。たとえば地元の本屋には配本が無く、街の大きな書店にいかないと手に入らないなんて事はざらにある。もちろん大きな書店にだって必ずしもあるとは限らない。欲しい本を探して発売日に幾つもの書店を駆け回り、その挙句に入荷が次の日と聞いて落胆したりは、しょっちゅうのこと。かといってインターネットで予約注文しても安心はできない。発送日が未定のままで変わらず、結局リアル書店で探す羽目になったり...。お話を伺っていると、皆さん結構苦労されているご様子。(もちろん自分も似たようなものだが。)
 新刊書でさえこうなのだから、ましてや新刊ではない昔の本は言わずもがな。公共図書館を利用される方や古本屋を回る方など各自で色々工夫されているが、一度買い逃した本に再び出会えたらそれだけで基本的には僥倖(ぎょうこう)といっていいのかも知れない。
 「趣味は読書」というと、ぶらりと行った本屋で目に留まった本を買ってただ読むだけ――という楽な趣味と思われがちだが、こうみえて結構大変なのだ。ま、手に入れるまでの過程も、読書の愉しみのひとつではあるのだけれどね。

 次に多い話題と言えば、おそらく「本の置き場についての悩み」ではなかろうか。本を買うばかりで処分しなければ、当然のことながらどんどん溜まる。しかし読み終わって「たぶん二度と読まない」と思う本であっても、愛着が湧けば処分するのが忍びない。ついつい手元に置いておきたくなるのが人情というもの。雑誌などの資料類に至っては、なぜか処分するとその少し後に必要になるという変な法則があったりして(笑)、なかなか処分に踏み切れないのが実情だ。
 それでも百歩譲って読んでしまった本については、(心を鬼に出来さえすれば)古本屋に売ってしまうことができる。それよりもっと問題なのは、買ったはいいがまだ読んでいない本 (所謂「積ん読本」というやつ)がどんどん溜まってしまうことだ。(*)

   *…先ほども書いたように、本というヤツは一度買い逃したものを後から手に入れるの
     は至難の業。(ある程度年季のはいった本好きの人は、誰しも経験したことがある
     と思う。)そんな経験を積み重ねていくうちに、読みたい本を見つけたら「直ぐに
     は読めなくても取りあえず買っておく」という習性が、知らず知らずのうちに身に
     付いてしまうわけだ。

 こうして、買ったは良いがすぐには読めないという後ろめたさと、いつ読みたくなるか分からないからすぐ手の届くところに置いておきたいという気持ちがない交ぜになったまま、徐々に家の中の本が増えていく事となる。自分の経験からすると、おおよそ次の過程を経て本が増えていくのではないかと思う。

【本棚時代】
 1)本棚が上から下まですべて埋まる。
 2)1段分の本棚に、前後2列にして本を詰める。
 3)2列では足りず、1段分の棚に3列にして詰める。
 4)本の天(上部)の隙間にも横向きにして本を載せる。

 ここまで来ると【本棚時代】は終了し、次なるステージである【床・押し入れ時代】へと突入する。

【床・押し入れ時代】
 5)本が本棚には入りきらなくなり、押し入れや床を侵食しはじめる。
 6)最初はおずおずだった本の山が徐々に高くなっていく。
 7)積みあがった本が塔のようになり不安定になると、山の複数化が始まる。
 8)多くの山が山脈のように連なり、それが日常の風景になる。
   (自分はこれを秘かに「造山活動」と呼んでいる。)

 時折、プレートがずれて地崩れが起こるのも実際と同じなら、それによって下の地層が露出して今となっては入手困難で貴重な“化石(本)”が発見されるというのも同じ。(私の知っている本好きの方はこれを称して「発掘」と呼んでいる。)ここまでくると、買ったかどうか覚えてないのは当たり前で、ひどい場合は買った覚えのない同じ本が2冊3冊でてきたりすることすらある。
 でも逆に良い事だって無いわけではない。例えばツイッターのおしゃべりで昔の本が話題に上がり、仮に読みたくなったとしても大丈夫。そんな時でも慌てて本屋に走る必要は全然なくて、とりあえず自分の家で本の山を探すのだ。すると(なぜか)出てくることがあるから。…うーん、でもやっぱり家の中に活断層があるのは、何だか厭だなあ。(笑)
 
<追記>
 本文中では触れなかったが、実を言うと自分の場合「積ん読本」が増えていくにはもうひとつ別の理由がある。仕事が忙しくて本が読めない状態がしばらく続くと、ストレスが溜まりイライラしてくる。そんな状態がしばらく続くと、それを解消するためについ買ってしまうのだ。つまり「ストレス解消の1冊」というわけ。
 かといって順調に本が読めるときは買わないかといえば、やはりそうでもない。1冊読み終わると嬉しくなって、次に読む本をつい本屋で物色。どちらにしても増えてしまうのだ。かくして自分も日々「造山活動」に勤しんでいるというわけであります。(^^;)
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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