『松丸本舗主義』 松岡正剛α 青幻社

 2012年9月30日をもって東京駅・丸の内にあった本屋「松丸本舗」は3年間のその活動の幕を閉じた。始まりがあれば必ず終わりが付きものとはいえ、それにしても早すぎる。そしてあまりにも唐突だった。
出張の帰りに丸の内の商業施設OAZO(オアゾ)内にある丸善へと向かい、店内を素通りしてそのままエスカレーターで4階奥の松丸本舗で新幹線チケットの予約時刻までを過ごす―というのが今までのパターン。それが出来なくなったので、仕事帰りがずいぶん淋しくなってしまった。

 本書は松丸本舗の閉店が7月16日に松岡氏によって公表されてから発売になった、3年間の活動の記録だ。(実際には1年ほどまえから本書の企画が出ていたようだが、もたもたしているうちに時間が過ぎて閉店が決定し、急ピッチで製作して9月30日の松丸本舗での販売開始にぎりぎり間に合った、といういわくつきの本。)
 中身は松岡氏が松丸本舗誕生までの内幕を語る文章を始め、店舗作りと品揃えの“編集”の秘密。それに「本の福袋」などこれまで行ってきた全イベントの記録や、果ては松丸ゆかりの人々(総勢43人!)による寄せ書きの文章などがびっしり。棚の写真も含め500ページを超える分厚い書影の中には、文字通り松丸本舗の「すべて」が詰まっているといっていい。(*)

   *…あとがきで松岡氏自身が書いているところによれば、著者名についている「α」
     には、松丸本舗のスタッフやメッセージを寄せてくれた人たちとの共同作業による
     本なのだという、著者の思いが込められているそう。言われてみればたしかに著者
     名の横には「α」の文字が。そして「+minna(みんな)」とルビが振ってある。

 自分にとって本書を読むのは、これまでの松丸本舗の思い出を追体験するようなもの。「ああ、そうだった。」「へえっ、あれってそんな意味が…。」というつぶやきとともに読み進む。まるで誰かの家を訪問して本棚を拝見しているような感覚や、本同士が互いを呼び合うような棚つくりといった、松丸独特の店内の様子が鮮やかに甦ってくる。
 この松丸本舗の3年間の活動は、画期的な取り組みとしてきっと「伝説」になっていくに違いない。かつて池袋リブロにあった今泉棚は残念ながら実見できなかったけれど、松丸での濃密な時間は誰にも自慢できる良い思い出となった。これからもしっかりと心に留めておきたいと思う。(万が一記憶が薄れてきても大丈夫。本書があるから。/笑)

 以上、今回は本の感想というよりも、松丸本舗の思い出話に終始してしまった。ちょっと感傷的になってしまったね。セイゴオ氏の言葉をいくつかお借りして、一言だけつけ加えて終わりとしたい。

 「さらば松丸本舗。そしていつの日か見事に捲土重来を期さんことを!」
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No title

こんにちは。
気に入っていた書店がなくなるのは、残念ですね。
私も、新宿三越にあったジュンク堂が好きでしたが、なくなってしまいました。同じ新宿にある老舗の紀伊國屋書店はなんとなく長居しづらくて。
ぶらぶらと街を歩きながら、お気に入りの書店が見つかるのは楽しいですね。
(最近は忙しくて?つい、アマゾンとかで購入してしまうのですが・・・)

rio様

こんばんは。

新宿のジュンク堂ですか!
私も閉店前にあった「書店員が本当に売りたかった本」のフェアに行きましたよ。
あそこは本好きの人が集う場所でしたね。

私は「リアル書店を応援する会」なので(笑)、
ネットでは買わずにリアル書店で買うようにしています。

でも最近は似たような品揃えの郊外型店舗ばかりが増えて、
ちょっと面白みに欠ける部分も。

なので、私の一番のお気に入りもrioさんと同じで、
名古屋駅前にあるジュンク堂なんです。
滅多に行けませんけどね(^^)。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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