BOOK MARK NAGOYA 2012

 10月20,21日の土日に開催された「BOOK MARK NAGOYA 2012」に行ってきた。名古屋の広い地域で同時開催され、総勢50店舗・団体が参加する合同ブック・イベントだ。今年は名古屋まつりと会期が重なった事もあってか、非常に盛況だった。20日は名古屋駅をスタートする名古屋まつり恒例のパレードを横目にしながら、中心部の繁華街・栄までぶらぶら歩き。テレビ塔の下の久屋大通公園で開かれた「一箱古本市」を満喫ししてきた。
 アマチュア店主の個性がもろに出た、本やCDやアクセサリーに雑貨といった商品が所せましと並ぶ様子は圧巻。本やCDは特に買いたいものがあるわけではない。(既に持っているか守備範囲ではないかのどちらかが殆ど。たまに「好いな」と思うものは値段が折り合わなかったり。)でも、ひやかしでこまごましたブースを覗いて歩くだけでも充分に愉しい。特設ステージではギターの弾き語りによるミニコンサートや、小中学生によるJAZZバンドの演奏なんてのもあって、のんびりした休日を過ごすのに最適だった。行ったのは今年が初めてだったのだが、病み付きになりそうな気配(笑)。
 つづく21日は栄から少し東に位置する千種へ。JR千種駅からほど近いところにある名物書店・ちくさ正文館の2階ホールで開かれた「ふるさと怪談 トークライブin名古屋」という催し物に参加してきた。実はこのイベント、ホームページでは事前予約制になっていたので、ぎりぎりまで予定がはっきり出来ず参加を諦めていたもの。ところが当日朝になってホームページを見ると、急遽「当日券も販売する」という話に変わっているではないか。これは行かざるを得まい、とすかさず心を決めた(いや、単に行きたかっただけなんだけど/笑)。
 「ふるさと怪談トークライブ」というこのイベントは、昨年の東日本大震災で仙台の地元出版社「荒蝦夷(あらえみし)」が被災した際、存亡の危機を救おうと幻想文学研究家・東雅夫氏が発起人となって始めたものなのだそう。その呼びかけに立ち上がった全国の有志たちが、手弁当で地元の怪談を語る場を企画して、各地で「ふるさと怪談」という統一名称で行っているイベントなのだ。当日の参加費2000円は全額「三陸文化復興プロジェクト」に寄付されるとのことで、その意味でも行って良かった。

 プログラムは全部で4部構成になっている。総合司会は地元の私立中学・東海中学校で教員を務める傍ら、怪談に関する活動を行っている島田尚幸氏。(氏は全体の進行役を務める以外にも、第3部では怪談の朗読をしたり第4部のトークショーで司会を受け持ったりと、まさに八面六臂の大活躍だった。)
 まず第1部は東雅夫氏による基調講演。ひょんなことから始まった「ふるさと怪談」のイベントだが、実際に初めてみると予想以上の反響があったとのこと。怪談を始めとした地元密着型の伝承を掘り起こすということは、その土地土地のチカラを呼び覚まし活力を与えることに他ならない由。なかなか感銘を受ける講演だった。
 続く第2部は、金城学園大学で教鞭をとる現代美術作家・山田彊一氏の講演。演題は「尾張徳川殿の『落ちのび街道』はイコール名古屋の『妖怪街道』」とやたら長いが(笑)、要は名古屋のあちこちにある恐怖スポットの紹介。氏のエキセントリックで強烈な個性が光る。
 第3部は本日のメインイベントで、名古屋の地域性をモチーフにした伝承や創作怪談の朗読に合わせ、4人の“絵師たち”が物語に因んだ絵をその場で描いていくというライブパフォーマンス。”猫ヶ洞池”(注:そういう地名の場所があるんです)付近を舞台に、能の演目である『黒塚(安達原)』と民話『三枚のお札(ふだ)』や古事記『イザナギとイザナミ』を混ぜ合わせたような話があって、名古屋弁で怪談を語るという趣向が面白かった。他にも伊勢湾台風にまつわるちょっと悲しい怪異だとか、地元名古屋に密着した話が朗読された。
 プログラムの最後は関係者によるトークショー。東雅夫氏を初め、先ほどの「荒蝦夷(あらえみし)」代表・土方正志氏、会場を提供したちくさ正文館の店主である古田氏、渥美半島中央部にある田原市の中央図書館館長をつとめる豊田高広氏に、司会の島田尚幸氏も含めた総勢5名によるフリートークが花開いた。
 内容はこの「ふるさと怪談」が開催されるきっかけになった震災の復興状況の話から始まり(*)、イベントの発足の経緯や今の出版界を巡る状況(例えばコンビニまがいの品揃えではなく、ちくさ正文館のようなユニークな本屋があちこちにあれば本はもっと活気づくといった話)、それに東氏がかつて主宰していた『幻想文学』誌にまつわる話など、あちらこちらを縦横無尽に駆け回る。予定時刻をかなり超過しながらも盛況のうちに幕を閉じた。
 トークショーの中では、東氏が言われた「怪談は死と鎮魂に正面から向き合った稀有な文芸である。これまではそのことをことさらに主張するのはなんとなく気恥ずかしくて憚られたが、昨年の震災から意識が変わった。」という話が特に自分の印象に残った。

   *…テレビで放映されるような街の表面的な部分はともかくとして、日常に密着した所
     はまだ全くの手付かずで荒廃した状態のままらしい。被害の大きかった地域では、
     まだ復興の兆しすら見られないとこともざらのようだ。宗教哲学者・山折哲雄氏や
     民俗学者・赤坂憲雄氏らが現地を訪れた様子がビデオで流されたが、あちこちに
     残る震災の爪痕が痛々しい。

 もともと幻想怪奇小説は大好きだし東氏の泉鏡花アンソロジーを読んだりもしているのだが、「怪談」のイベントに参加したのは今回が初めて。どんな感じかと少し心配していたのだが、想像していた以上に面白かった。結局のところ、怪奇小説と怪談の最も大きな違いは、そこに「語り」という要素が加わる点にあるようだ。話者の語り口によって同じ物語が怖くも面白くもいかようにも変化する。「語り」はすなわち「騙り」であるということを再認識した次第。
 初日の「一箱古本市」といい2日目の「ふるさと怪談トークライブ」といい、まさに読書の秋を満喫した2日間。おかげで読書はあまり進まなかったが、それを補ってあまりある愉しさだった。来年もあるといいなあ。
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まとめ【BOOK MARK NAGOYA 201】

 10月20,21日の土日に開催された「BOOK MARK NAGOYA 2012」に行ってきた。名古屋の広い地域で同時

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