2012年9月の読了本

『椿説泰西浪曼派文学談義』 由良君美 平凡社ライブラリー
  *著者はイギリスのロマン派文学を専攻とし、澁澤龍彦氏や種村季弘氏にも並び称される
   ほどの碩学。枠に囚われない自由な発想と幻想文学への嗜好で、19世紀ロマン文学を
   紹介した愉しい一冊。
『ダンディズム』 生田耕作 中公文庫
  *何となく「かっこいい」とか「イギリス紳士」とかの言葉が浮かんでくるが、知って
   いそうで意外と知らない「ダンディズム」。17~18世紀のイギリスに実在した
   “稀代のしゃれ者”ジョージ・ブランメルの生涯を軸に、ダンディズムとはいったい
   何か?という疑問に答えた本。
『ロビンソン・クルーソー』 デフォー 河出文庫
  *本書は1719年に出版された完全なフィクション。(あまり知らない人も居るかも知れ
   ないので念のため。)「無人島たったひとり」という設定は、ベルヌの『十五少年漂流
   記』とともに昔の我が心を大いに魅了したもの。子供の頃にリライト版で夢中になった
   本を大人になって原著で読むと、いろいろ失望する点もないではないが、そこはそれ、
   変わりに色んな愉しみ方をすればいい。苦労して家や食料を整えていく場面は、昔と
   変わらず面白く読めたので好かった。
『フェッセンデンの宇宙』 エドモンド・ハミルトン 河出文庫
  *著者はスペースオペラ小説『キャプテン・フューチャー』で有名だが、本書はスペース
   オペラ以外の作品を集めた日本オリジナル短編集。いかにも古き良き時代を彷彿とさせ
   る感じが好い。ヴィンテージ物とでもいえば良いかな。単行本で以前出された「奇想
   コレクション」の文庫化に際し、新しく3篇をボーナストラックとして加えている。
   火星から帰ってきた男についてのビターな話「向こうはどんなところだい?」、生命を
   持つ風と少女の交感「風の子供」、時空の外の歩廊と世界の危機に立ち向かう気概を描
   いて感動的な「世界の外のはたごや」、現実世界ともうひとつの世界を行き来する男
   「夢見る者の世界」などが好み。
   表題作は改訂版に加えて旧版も新たに収録されているが、読み比べたところでは自分は
   改訂版の方が好きかな。
『飛行士と東京の雨の森』 西崎憲 筑摩書房
  *詩と日常と幻想のはざまを揺れ動く、ほぼ全編描き下ろしによる短篇集。
   前作の『ゆみに町ガイドブック』もそうだったが、どんどんジャンルの垣根を壊して
   何とも表現しようのない、それでいて堪らなく心地いい西崎ワールドが出現している。
   小説好きだけでなく音楽好きな人にも是非。
『荘子 <内篇>』 福永光司 講談社学術文庫
  *老荘思想としてひとからげで語られることが多い『荘子』だが、喩え話を駆使したり
   して結構面白い。後世の人の解釈が多くまぎれている「外篇」「雑篇」はともかくと
   して、荘子の思想がかなりストレートに出ていると言われる「内篇」ぐらいは読んで
   おきたいと、今回初挑戦。訳者による詳細な解説も読みごたえあり。
『私の戦後追想』 澁澤龍彦 河出文庫
  *形而上を愛し「体験」を嫌った澁澤だが、その著者の「体験」に関する文章ばかりを
   集めた文庫オリジナル編集のエッセイ。
『「女らしさ」の社会学』 高橋裕子 学文社
  *アメリカの社会学者ゴフマンが提唱した概念を、ジェンダー論に応用した考察。政治的
   なパフォーマンスが目立つある種のフェミニズムとは一線を引いた、学術的で冷静な
   視点がなかなか。
『「今泉棚」とリブロの時代』 今泉正光 論創社
  *80年代に一世を風靡した「堤王国」と、その文化的な活動の一端を支えた書店リブロ。
   (今のリブロは経営譲渡された全くの別物)本書は今や伝説となった池袋リブロの中心
   人物へのインタビュー。書店や出版業界の専門用語が注釈なしにどんどん出てくるの
   で、業界人でない普通の読者にはちょっと読みづらいかも。(なぜか自分は殆ど理解
   できたのだが。/苦笑)浅田彰や中沢新一に端を発した当時の“ネオアカブーム”の
   裏側が、ブームを仕掛けた当事者によって語られる。
   実を言えば、本書は松丸本舗が閉店する前に出張で寄れる最後のチャンスに買った。
   せっかくなので何か一冊…と選び迷って、目に留まったのがこの本。自分では、松丸で
   最後に買うのにふさわしい本だったのではと思っている。きっと松丸本舗もあと何年か
   したら、この当時の池袋リブロと同じく”伝説”になるのだろう。今回はその現場に
   自ら立ち会うことが出来て良かった。
『日本中世に何が起きたか』 網野善彦 洋泉社MC新書
  *まるで網野史学の全体を俯瞰したような本。テーマは「市」や「悪党」といったものか
   ら、「被差別民」「宗教」まで多種多彩。著者が2004年に亡くなって2年後に新書で
   復刊された本らしく、解説の保立道久氏の文章が心を打つ。好著。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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