『ロビンソン・クルーソー』 デフォー 河出文庫

 イギリスの作家デフォーが1719年に発表した小説。今さら改めて紹介する必要もないほど、あまりにも有名な本だよね。誰しも子供の頃に一度くらいは目にした事があるのではないだろうか。ただしスウィフトの『ガリバー旅行記』やペローの『長靴をはいた猫』などと同じく、子供向けの簡略版ではない原著を読んだことがある人は、意外と少なかったりする。自分も「船乗りが嵐で無人島に漂着し、いろいろな工夫で生き延びたうえフライデーという原住民まで助けて家来にして、一緒に故国に帰る」という粗筋くらいは知っていたが、それ以上となるとちょっと心もとないところが(笑)。
 昔の古典や名著といわれる本を、大人になって改めてきちんと読むというのも、それはそれで愉しいもの。これまでも『白鯨』や『神曲』、『論語』に『新約聖書』などを読んできたが、なかなか面白い発見があったりして結構好いものだった。(いつか『ドン・キホーテ』や『紅楼夢』にも挑戦してみたいが、『源氏物語』や『失われた時を求めて』はさすがにどうしようかと思案中^^)
 さて、それでは本書はどうだったか。ストーリーとしては、無鉄砲な若い船乗りがアメリカ大陸はオリノコ河流域で嵐にあい、ただひとり無人島に漂着して28年間を過ごすというもの。言ってしまえばただそれだけなのだが、実は原題がやたら長いとか第3部まで出版されていたとか、今回初めて知ることも多い。本編とは違うこところでもかなり楽しむことが出来た。(*)何でも臆することなく現物には当たってみるものだね。(笑)

   *…正確な原題は『ヨーク出身の船乗り、ロビンソン・クルーソーの人生と不思議で
     驚くべき冒険:アメリカ大陸の沖合、巨大なオリノコ川の河口に近い無人の島に
     たった一人で、20と8年生活した記録/船が難破して岸に打ち上げられたが、
     彼のほか全員が命を落とした。/および、海賊から彼がついに救われるに至った
     不思議ないきさつの記述』というものでむやみやたらに長い。テレビでやってる
     サスペンス劇場のドラマ以上。(笑)
     また、一般によく知られているのは第1部に過ぎず、本書が好評だったため、
     大金持ちになった主人公が世界中を旅するという第2部や、ロビンソンの内省録の
     体裁をとった第3部がその後出版された。
 
 物語の眼目は、無人島に漂着したクルーソーが盤石な生活基盤を作り上げるまでのサバイバルと、焼き物を作ったり大麦を育ててパンを焼くといった工夫によって、徐々に生活レベルを上げていく(まるでRPGのような)面白さにある。
 しかしそれらは全体のボリュームからするとわずか半分程度に過ぎない。残りの半分は何かというと、親不孝な放蕩息子であった主人公が過酷な試練を経て信仰に目覚め、敬虔なクリスチャンとなっていく様子。そして彼による信仰の告白が事細かく語られている。(作者デフォーの主眼はむしろそちらにあったような気配すら。)
しかしその部分は今の我々の目からすると冗漫に過ぎ、話の腰を折られるようで正直あまり頂けない。純粋に物語として愉しむのであれば、子ども用のリライトでも充分のような気がする。(**)

  **…出版当時には作者デフォーの名を伏せて、ロビンソン・クルーソー自身が書いた
     ように見せかけた「実録もの」だったようだ。その為なのかは知らないが、とり
     わけ格調高い文章で書かれているわけでもなく、「文学」として読むには本当は
     ちょっと物足りない。

 では本書を簡略版ではなく原著で読むときの面白さはどこにあるか。自分が思うにそれは17世紀後半から18世紀にかけてのヨーロッパ社会の情勢や、奴隷貿易を是とする当時の人々の価値観に宗教観など、物語を成立させている「背景の部分」に思いを馳せるところにあるのではないかと。中世ヨーロッパに伝わる民間伝承の『ティル・オイレン・シュピーゲルの愉快ないたずら』(岩波文庫)の愉しみ方とまさに同じといえる。
 そしてその意味でも、本書の巻末に付された詳細な解説はとても嬉しい。山師のようなデフォーの生涯だとか、本書の出版を巡るトラブルだとかを読んでいると、本編に散見される細かな不整合やマラリアがタバコのヤニで治るといった科学的に変な記述についても、作者が自分を愉しませるためにわざとちりばめたギミック(仕掛け)に見えてくるから不思議なものだ。(笑)

<追記>
 まだ読んでいない古典は星の数ほどあるので、その意味では老後の暇つぶしのネタに困ることはなさそう。ただし古い岩波文庫の場合、字が細かすぎて読めない恐れが多分にあるので要注意。(^^;)
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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