2012年7月の読了本

『虫づくし』 別役実 ハヤカワ文庫
  *劇作家によるちょっとかわった超・博物誌の一冊。他にも『鳥づくし』とか『けもの
   づくし』とか色々あるが、どれも現実にはいない生き物や実際とは違う生態が描かれて
   いる。このシリーズは好きでよく読んでいたのだが、久しぶりに読み返したらやっぱり
   面白かった。
『HSPと分子シャペロン』 水島徹 講談社ブルーバックス
  *「熱ショックタンパク質(HSP)」なる、体内の“お助けマン”のようなタンパク質
   に焦点をあてて、その驚くべき役割やHSPの応用が拓く医療・美容の未来について
   語った本。
『ナイトランド創刊2号』
  *本邦初のホラー&ダーク・ファンタジー専門誌の創刊第2号。特集が「ネクロノミコン
   異聞」と「モンスター・ゾーン」だと聞けば、何となく雰囲気は分かるかな(笑)。
   ちょいと値段が張るのが玉に瑕だが、このような果敢な取り組みはぜひとも応援を続け
   ていきたい。
『よいこの君主論』 架神恭介/辰巳一世 ちくま文庫
  *マキャヴェリが封建君主に対して説いた統治の指南書が、かの有名な『君主論』。
   本書はその舞台を小学校にうつし、生徒たちがリーダーの座を争い覇権を競うパロディ
   作。いつだったか、高校野球の女子マネージャーがドラッカーを読んで、マネジメント
   の勉強をする話がベストセラーになった。本書も同様にビジネス書として使えなくは
   ないが、どちらかといえば『君主論』のパロディとして愉しんだ方が良い気がする。
『みみずく偏書記』 由良君美 ちくま文庫
  *著者は1990年に亡くなった英文学者。本読みの達人であり、澁澤龍彦や種村季弘らと
   ならび称された碩学だったそうだが、寡聞にして全くしらなかった。いい年のオヤジに
   なってからでも、まだこのように凄い人とのファーストコンタクトがあるなんて嬉しい
   なあ。まだまだ人生捨てたもんじゃないね。
『百頭女』 マックス・エルンスト 河出文庫
  *シュールリアリズム系の画家が手掛けた、コラージュ技法による物語(?)集。本書は
   3冊あるうちの1冊目で、愛知県美術館のマックス・エルンスト展を見た帰りに、早速
   購入して読み始めた。このようにイベント連動型の読書も結構愉しい。またそのうちに
   企画してみたいものだ。
『遊戯の終わり』 コルタサル 岩波文庫
  *南米の「魔術的リアリズム」の作家たちの1人、コルタサルによる短篇集。印象として
   は「奇妙な味」のちょっと手前。もうちょっとのところで「不思議」には成りきれない
   感じ。「変な小説」というのが一番ぴったりくるかな。収録作はリアルなものから幻想
   (というかシュール)なものまでバラエティに富んでいる。
   リアリスティックなタイプでは、繊細な少年少女の心とほろ苦い体験を描いた表題作や
   「殺虫剤」、それにボクサーの末路の「牡牛」などが好かった。奇想系のタイプの作品
   では、服をうまく着られない男が妙におかしい「誰も悪くはない」や、オーケストラに
   起こった異常な出来事「バッカスの巫女たち」あたりだろうか。
『日本人はなぜ「さようなら」と別れるのか』 竹内整一 ちくま新書
  *「さようなら」や「さらば」といった日本語独特の「別れの挨拶」に隠された、日本人
   の死生観をとことん追求した本。
『ムーミン谷の夏まつり』 ヤンソン 講談社文庫
  *火山による大洪水に突如襲われたムーミン谷と、漂流する大劇場で開かれたムーミン
   パパ原作の演劇を描く。
『ペテルブルグ物語』 ゴーゴリ 群像社
  *ロシアの文学者ゴーゴリの代表的な短篇「鼻」と「外套」に加え、同じくペテルブルグ
   を舞台にした「ネフスキイ大通り」を収録。編者はフェルマリズムの文芸学者である
   エイヘンバウム(初めて聞いた名前。/笑)
   「鼻」や「外套」は他にも多くの文庫で読むことができるが、この本のウリは何と言っ
   ても作品の舞台となったネフスキイ大通りの詳細図をはじめ、ペテルブルグの市街地図
   が載っていること。(それに、味のある挿絵も。)
   鼻が消え失せたり、死んだ男の亡霊が外套を奪い取るといった、幻想味のある「鼻」や
   「外套」の2作品に対して、「ネフスキイ大通り」は結構リアルな話。しかしどれも
   全体を包む雰囲気には共通するものが。
   いみじくも訳者が解説で「幻想的リアリズム」という矛盾した表現で呼んでいるが、
   それも尤もな話。完全な幻想とも言い切れない生々しさもあって、「幻想的」と言い
   切ってしまうよりも、「現実からちょっと足を踏み外してしまった」とでもいう表現
   の方がしっくりくるかな。自分の印象としては(同じロシア出身の画家)シャガール
   の作風に重なるところが多い。ことさらに幻想を強調するのでなく、恋人たちが気が
   付くといつの間にかフワフワと空に浮かび上がってしまったような感じ。
   全編に漂う、両者のそこはかとないユーモアもよく似ている気がするな。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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