高い文庫、お値打ちな文庫

 本を購入する時には、どうしても単行本より文庫本が中心となる。文庫の良いところは手軽に持ち歩けることと、本棚に仕舞うとき単行本に比べて場所をとらない事。文庫化されている本なら、(収録内容が減らされてない限り)まず間違いなく文庫の方を選ぶことにしている。
 他によく文庫の特長として言われるのは値段が安いことだが、昨今ではそれほど安くもないのが実情。そこで、新刊文庫の値段について個人的な印象を。

 文庫には大きく分けて「学術系」「文芸系」それに「雑学系」の3つのタイプがある。学術系文庫の代表格は講談社学術文庫やちくま学芸文庫などで、街の大きな本屋にいかないとあまり売ってない。文芸系文庫は普通に良くみる新潮とか角川など。そして雑学系文庫は知的生き方文庫とか王様文庫など。もちろん厳密な分類ではなく、例えば中公文庫では文芸関係が中心だけど学術的なものが混じっていたりもする。あくまで大雑把な括り方。

 総ページ数や出版部数など、個々の本の事情によって価格は当然違ってくるが、それでも新刊情報などで書名や著者を見て買おうと思った時、どの文庫から出るかによって懐具合と相談しながらある程度は“覚悟”ができる。一般的には「雑学系」 < 「文芸系」 < 「学術系」の順で価格が高くなっていき、それぞれ大まかな目安としては「雑学系」は400~600円程度、「文芸系」は国内作家=600~700円/海外作家=700~1,000円程度、「学術系」=900~1,500円程度という感じ。
 以上が概要で、ここからは具体的な文庫を取り上げて特徴などについて順に触れていこう。

 何といっても価格が一番高いと感じるのは講談社文芸文庫。平気で1,500円以上する。昔の文芸作品(今は絶版のもの)を発掘してきたのが中心ラインナップだから仕方ないんだけど、流石によほど自分の趣味にあうものでないと手が出せない。倉橋由美子『スミヤキストQの冒険』や中沢新一『虹の理論』は良い本だけど流石に1600円は出せないよなア・・・。よほど古いかマニアックなものでない限り、古本屋で探すほうが安く済むこともある。
しかし例えば埴谷雄高『死霊(しれい)』はここでしか読めない。本によっては古本屋で単行本を買うよりきれいなものが安く手に入るし、そもそも本自体が見つからないので潔く買うことができるものも多い。
 気をつけなければいけないのは、講談社文芸文庫自体も再版されない事が多くそのまま品切れ→絶版になっているケースが多いこと。(これは学術系の文庫全般に対しても言える。)
 1年くらいしてから捜してももう手に入らないことが多いので、気になったものがあれば買っておく方が無難。

 次に高価格な文庫としては学術系文庫の集団が続く。どの文庫もほぼ似たような価格ではあるが国内の著者のもので比較すると、岩波現代文庫(1,000~1,500円) > ちくま学芸文庫(900~1,400円) > 講談社学術文庫(800~1,200円)という感じだろうか。翻訳モノはさらに値が上がりそれぞれ200~300円高くなる。
 文庫としてはとても高いが、元が学術書なだけに単行本で買うと3~5,000円くらいするので、そう考えればお得感があってつい買ってしまう。読むのに時間がかかるのでそれだけ長時間楽しめる訳だし。

 その次の価格帯には、いわゆる普通の本屋でよく売られているメジャーな文庫が続いている。若干高めなのは中公文庫だが、ここには他社なら学術系の文庫で出てもおかしくないものが一緒にされているので、それほど割高感はない。もっとも、リクエスト復刊されるタイトルについては異常に高くて手が出ないが。
 その他の出版社では小説やエッセイが主体で、新潮/文春/講談社/集英社/集英社/徳間/双葉_等々、どこも似たりよったりで単価を700円位に抑えているので、割と手が出しやすい。もちろん全く興味がない作家のものは安かろうが買わないわけだが。それでも最近では少し長めの小説を上下巻に分けるケースが増え、1冊あたりの値段は低いが結局割高になる事が多くなっている。分厚い本は売れなくなっているのだろうか?(小説自体はスティーブン・キングが登場したあたりから、やたら書き込みが凄くて長いのが増えている気がする。勿論ただダラダラと長いだけの小説は厭なので、あんまり買わない事も多い。)

 そんな中でも少し「お値打ち感」があるのは、角川文庫とポプラ文庫だろうか。
角川はページ数だけで比較すると、「もしも違う出版社の文庫で出たら?」と仮定した値段よりは50円くらい安い気がする。他の文庫で絶版になったタイトルも突然ラインナップに増やしたりするし、わりと注目していい文庫だと思う。ただし売れない本はどんどん切っていくので油断がならず、その意味でも注目していなければいけないが。(笑)
ポプラ文庫については値段も割と安めだし、編集方針も他の文庫に埋没しないように結構工夫してあって好感が持てる。例えば「殿様の日」などの星新一の時代小説はほぼ新潮文庫版で読めてしまうが、それを再編集して松本大洋(*)に挿画を描かせるというセンスが素晴らしい。江戸川乱歩の少年探偵シリーズやルパンシリーズの文庫化なども好いし、編集の工夫でまだまだ魅力は出せるということを証明してくれた。今までこの文庫の編集を褒めた記事を見かけなかったので、敢えて主張しておきたい。― ただし実際に買うのは自分の趣味にあう本だけなのだけれど。(笑)

 *…『鉄コン筋クリート』『ピンポン』で有名。時代劇マンガ『竹光侍』を描いている。

 ちなみに岩波文庫だが、有名な海外作品については、価格は安いが翻訳された時期が古いものが多いので、同じタイトルが光文社古典新訳文庫などから出たらそちらを優先している。このように他の文庫に選択肢がある本は良いが、ほとんどの場合は岩波で読みたくなる本は絶対に他では出ない類のものが多いので、値段をあれこれ言える贅沢は許されていない。(笑)
 再刊されるたびに定価が上がっていくが、買い取り制度のおかげで新刊書店を丹念に探すと前の版が意外とそのまま売れ残っていて、安い値段のまま買えるのは嬉しい限り。でももっと安く買うには古本屋で探すのが一番で、古本でもさほど新刊と状態が違わないのも多いので、その方がむしろ多いかも。

 最後に海外作家の翻訳をウリにしている双璧のハヤカワ文庫と創元文庫について。学術系と国内文芸系の中間くらいの価格が付けられている。最近では1,000円前後が当たり前になっているので、外した時のダメージは大きい。購入につい慎重になってしまい、新しい作家に手を出しづらいのが難点。海外についてはむしろ新潮や角川あたりから単発的にでる、映画タイアップの企画ものなんかに意外な掘り出し物があったりする。値段も国内作家に毛が生えた程度に抑えてあるし。

 というわけで、今までの内容を踏まえて自分なりの印象をざっとまとめると...
1.高いがお値打ち)  ちくま学芸文庫、講談社学術文庫
2.安くてお値打ち)  角川文庫、ポプラ文庫、新潮や角川の海外アンソロジー企画
3.値段度外視)    岩波文庫
といったところだろうか。

 ところで雑学系の文庫について触れなかったが、理由は古本屋の均一台以外では殆ど買わないので正直よく分からないから。(大体、泊まり出張の時のお供に買って、帰ってからブックオフに直行する事が多い。)したがってコメントは無し。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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