2012年3月の読了本

 今朝、息子が東京の大学に進学する為に家を旅立った。昨夜は会社を退職して大学で学問の道へと進む元部下と、久しぶりに再会して酒を飲んだ。いずれも少し寂しい気持ちはあるが、次に一回り大きくなった彼らと再会する時を愉しみにして、明日からの日々を新たに刻んでいこう。
 春は別れのシーズンだが、別れがあればまた出会いも。職場にもそろそろ新入社員の初々しい顔が並びはじめた。気がつけば自分は上から数えた方が早い年齢になってしまったが、まだまだどうして、好奇心やワクワク感には結構自身があるぞ(笑)。人や本との新たな出会いはこれからも続いていくんだから。
 と言うわけで3月に読んだ本は以下の通り。

『謎の物語』 紀田順一郎/編 ちくま文庫
  *はっきりとした結末を示さない物語(リドル・ストーリー)のアンソロジー。これまで
   に読んだ作品も多いが、何度読んでも相変わらず面白い。マーク・トゥエインの「恐ろ
   しき、悲惨きわまる中世のロマンス」や、ストックトン「女か虎か」。C・モフェット
   「謎のカード」に、B・ペロウン「穴のあいた記憶」。そして小泉八雲「茶わんのなか」
   や、ダンセイニ「野原」、ブッツァーティ「七階」といった傑作が目白押し。
『巨流アマゾンを遡れ』 高野秀行 集英社文庫
  *世界の辺境・秘境を旅する冒険ライターの、船旅によるアマゾン川の遡航記。著者にし
   てみれば観光旅行なみの平凡な旅らしいが、自分からみればとんでもなく無謀なことを
   沢山していて、結構ハラハラどきどき(笑)。
『治癒神イエスの誕生』 山形孝夫 ちくま学芸文庫
  *イエスや使徒たちによる病気治癒の逸話が、キリスト教の浸透にいかに影響があったか
   について、当時の民間信仰や異教との関連から分析した好著。
『吾輩は猫の友だちである』 尾辻克彦 中公文庫
  *「尾辻克彦」は、芸術家・赤瀬川原平氏が小説を書く時のペンネーム。良くある猫好き
   のエッセイと思って読んでいると、いつの間にか著者独特の摩訶不思議な世界観が見え
   隠れ。嘘か真か分からぬ話で徐々に煙に巻かれてゆく感触が心地いい。
『旧約聖書 ヨブ記』 岩波文庫
  *旧約聖書の中でも異彩を放つ、敬虔な信者の受難と救いの物語――なーんて思って読ん
   でみたところ、構成のあまりの破天荒さにぶっとんだ。やっぱり古典は面白い。
『十蘭レトリカ』 久生十蘭 河出文庫
  *「ジュラネスク」「万華鏡」「パノラマニア」に続く文庫版傑作選の第4弾。中でも
   「花賊魚(ホアツオイユイ)」と「亜墨利加討(あめりかうち)」の2中篇が圧倒的。
   (前者は日中戦争の中国を舞台に、日本料理店を経営する老婆が、拉致された息子の為
    に激流の長江を遡る話。後者は幕府崩壊という時代の波に翻弄される元侍の太鼓打ち
    の運命を描く。)
『後藤さんのこと』 円城塔 ハヤカワ文庫JA
  *先日、SF作家として初の芥川賞を受賞した著者による短篇集。さほど長くは無いが、
   中身はぎゅっと詰まっていて、ひと癖もふた癖もある作品ばかり。著者の作品は初めて
   読んだが、結構自分との相性はいいかも。そのうち別の作品も読んでみようかな。
『蔦屋重三郎』 鈴木俊幸 平凡社ライブラリー
  *江戸の出版文化の仕掛け人ともいえる版元、初代・蔦屋重三郎の評伝。
『アイヌ神謡集』 知里幸恵 岩波文庫
  *アイヌ民族に古くから伝わる神謡(ユーカラ)を、平易な日本語に初めて翻訳/紹介。
   言語学者の金田一京助氏による解説を付す。
『アフリカにょろり旅』 青山潤 講談社文庫
  *著者は東京大学海洋研究所助手(当時)。ウナギの世界的権威・塚本教授の下で研究に
   没頭する日々を送っている。そんな著者が世界に生息する全18種類のウナギのうち、
   研究所が唯一採集できていない「ラビアータ」をもとめて、アフリカ奥地を旅する爆笑
   ノンフィクション。(ただし後半はかなり悲惨な状況にも。)
   「これは冒険記の傑作!高野秀行に匹敵する!」とおもったら、解説を高野氏が書いて
   いた。(笑)
『西洋中世の罪と罰』 阿部謹也 講談社学術文庫
  *日本と西洋の「罪」に対する概念の違いを、キリスト教成立以前のヨーロッパ社会まで
   遡って考察した力作。
『天ぷらにソースをかけますか?』 野瀬泰申 新潮文庫
  *元は日本経済新聞社のホームページ「NIKKEI NET」の連載「食べ物 新日本奇行」。
   読者にWebアンケートを実施して、日本中の様々な食文化の境界線(もしくは分布図)
   をまとめたもの。テーマは「天ぷらはソースか天つゆか?」「ナメコの味噌汁を飲む
   か?」「肉まんか豚まんか?」「冷やし中華にマヨネーズをつけるか?」など15種類。
   更には東海道を旅して“食の境界線”を実地に確認した紀行文がつく。解説を書いて
   いるのが椎名誠氏といえば、なんとなく全体のトーンは想像がつくかな。
『ナイトランド vol.1(創刊号)』
  *怪奇小説ファンには堪らない「幻視者のためのホラー&ダークファンタジー専門誌」が
   今この時代にまさかの創刊!値段は高いがさっそく年間購読を申し込んでしまった。
   創刊号の特集は「ラブクラフトを継ぐ者たち」といい、後代の作家たちによって書かれ
   たクトゥルー神話を取り上げている。編集子による巻頭言の意気込みも熱くて、これか
   らも期待できそう。雑誌形式を取ってはいるが、内容のまとまり方からすれば、書籍に
   限りなく近い雑誌といえる。(雑誌に限りなく近い文庫である河出文庫の『NOVA』
   と好対照かな。)
『お好みの本、入荷しました』 桜庭一樹 創元ライブラリ
  *活字魔の作家による読書日記の第3弾。読むジャンルは文学やエンタメ形の小説が中心
   だが、水のように空気のように読書を愉しむ姿勢が気持ちいい。このシリーズ、読んで
   いるとさらに本が読みたくなってくるのがちょっと難点だ。(苦笑)
『三文オペラ』 ブレヒト 岩波文庫
  *メッキー・メッサー(匕首“ドス”のメッキー)という盗賊団の親玉と、彼に愛娘の
   ポリーをたらしこまれた乞食集団のボスのピーチャムによる争いを、オペラ仕立てに
   した1928年発表の風刺劇。(当時大ヒットを記録したらしい。)ちなみに本作にヒント
   を得て開高健が書いた長篇が『日本三文オペラ』。そして更にその設定を借りて小松
   左京が書いたのが『日本アパッチ族』。これで全部読んだぞ。(笑)
『異界を旅する能』 安田登 ちくま文庫
  *能楽師である著者が、自らが演じるワキの視点からみた能の世界を、「異界」をキー
   ワードにしてひも解いていく。
『新潮日本文学アルバム 泉鏡花』 新潮社
  *近代の代表的文学者の生涯を豊富な写真と評伝で紹介する、全31巻のシリーズの1冊。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

最新記事
カテゴリ
プロフィール

舞狂小鬼

Author:舞狂小鬼
サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

最新トラックバック
FC2カウンター
最新コメント
リンク
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR