『草枕』 夏目漱石 岩波文庫

 冒頭のセリフ「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」があまりにも有名だが、白状すると、実はこれまで本書を読んだこと無かった。
主人公は都会生活に疲れた画工(えかき)。彼が“草を枕にした”気ままな旅路をもとめ、ひなびた温泉旅館に逗留した顛末を描く。「ファウスト」や「ハムレット」よりも、むしろ王維や淵明の境地が心地よい―と独白する主人公は、作者の分身というよりは、急激な西洋化と伝統的な価値観との狭間で悩む当時の文化人のモデルに思えた。
 物語は特に起承転結というものもなく淡々と進むが、何とは無しに心地がいい。もしも学生時代に“ソウセキの文学”として肩肘張って読んでいたら、きっとこんな風には愉しめなかったかもしれない。そう思えば、年取ってから読むのもそんなに悪くないかも。(文学ファンの皆様、このように「自由奔放」な感想で申し訳ありません。/笑)

 ところでこの主人公、わずか30歳そこそこの年齢らしいのに、難しい言葉をすらすら使いこなし、漢詩をたしなむうえ英語の小説を原書で読み下す。果たしてこれほどの素養があるのが、当時の知識人の一般的な水準なのだろうか。だとすれば、今の日本人は間違いなくレベルが低下してるよね(苦笑)。主人公がどうやって日々の糊口をしのいでいるのかも分からないし、これがもしかして「高等遊民」というやつなのだろうか。

<追記>
 旅館の女将の那美さんというキャラが気に入った。今でいえば歌手の戸川純とかお笑いタレントの鳥居みゆきのような感じといえばいいだろうか。そりゃあ明治の社会では浮くよなあ(笑)。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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