『小鼠 ニューヨークを侵略』 レナード・ウイバーリー 創元推理文庫

 これは愉しい。著者はアメリカ在住のアイルランド作家。フランス近く、北アルプス連峰のほど近くに位置する人口6000人足らずのグランド・フェンウィック大公国。輸出品といえばピノー(白)ワインしかないこの小国が、第二次世界大戦後の冷戦期に(こともあろうか)核爆弾を有する超大国アメリカにつきつけた宣戦布告を巡る顛末を描いた痛快作だ。
 武器といえば16世紀以来の伝統である大弓と槍しか持たない彼らが、小国なりの矜持を忘れず、わずか20名の遠征隊でニューヨークのど真ん中に侵攻していく様子は、判官びいきの自分のような人間にはぴったりといえる。ジャンルとしては風刺小説やユーモア小説の仲間に分類されるのだろうが、架空の究極兵器「Q爆弾」が出てきたりと、SFやファンタジーの要素もある。元が創元推理文庫の「帆船マーク(怪奇や冒険)」に分類されていたくらいだから、いずれにせよジャンル横断型の作品であるのは間違いないだろう。
 本書が面白いという話は昔から聞いていたのだが、正直ここまで愉しいとは予想していなかった。今まで読まずにいて、もったいなかったな。全体を貫くトーンは小中学校の頃に夢中になった推理作家・加納一朗の、子供向けユーモア小説(*)を彷彿とさせる。後半からの展開も、ブラウンの短篇「地獄の蜜月旅行」やエールリッヒの長篇『巨眼』といった作品を思わせて、とっても自分好み。―といっても分かる人いるかなあ(笑)。このへんの作品を読んだことがあるのは、かなり年季の入ったSFファンだと思うので、今さらネタバレにはならないよね。

   *…『透明少年』や『夕焼けの少年』『イチコロ島SOS』に『怪盗ラレロ』など。

 『ピンク・パンサーシリーズ』などで有名なコメディ俳優のピーター・セラーズが主演して、映画化までされていたというのも、実をいうと本書の解説で初めて知った次第。いや、お恥ずかしい。続篇も2冊あるようなので、古本屋でぼちぼち探して読んでみようかな。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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