『迷信博覧会』 種村季弘 ちくま文庫

 種村氏の本は正直いって結構読みにくい印象があって、今まであまり手を出してこなかった。しかしいざ本腰を入れて読み始めてみると、心配していたほどでもない。さくさく読めていい感じだった。これまで読まずにいてちょっともったいなかったかも。(でもこれから読みたい本が増えたと考えるのが、いかにもお気らく読者らしいでしょ。/笑)
 本書は博覧強記の独文学者である著者が、古今東西の「迷信」について蘊蓄を傾けた、肩の凝らないエッセイ集。名付けて「迷信おもしろカタログ」といったところか。ところで「迷信」とはそもそも何ぞや?ということだが、本書によれば大雑把には「今、信じられているのとは違う信念や信仰」のことのよう。個人的にはこの“信念や信仰”というのがポイントだと思う。科学的に根拠がない事柄という訳だから、時代や社会の違いによってガラリと基準が変わってしまうことになる。だからこそ今の目から見て“変”だとか“非科学的”となるわけだが、我々だって血液型占いだの今日の運勢だの言っているのだから、似たようなものだ。
 取り上げられている迷信は、江戸時代の「本所の七不思議」とか食べ物の「食い合わせ」、それに「丙午の女」「初夢」「四月馬鹿」「厄年」など様々。
 この手の本は、何といっても中に挟み込まれている小ネタが面白い。ひとつ例を挙げてみると、「Friday(金曜日)」の語源はゲルマン神話にでてくる愛の女神フリヤー(FrijaまたはFrigg)なのだそうだ。全然知らなかった。また「昔の人だって迷信を頭から信じていた訳ではない」という話もなるほど納得。現代人だって家を建てる時には鬼門の方角を気にしたり、神社で厄払いのお参りしたりはするが、それをあたまから信じている訳ではないものね。本書で引用されている話によれば、「迷信」とは小さかったころの生活習慣に対するノスタルジーの一種なのだとか。これなんか、なかなかの卓見だと思う。

 種村さんの本は折に触れ買いためておいたストックが他にも何冊かあるから、まだしばらくは愉しめそうだ。
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こんばんは。

こんばんは。
今回は種村季弘ということで、またまたとても興味深い記事でした。

また「昔の人だって迷信を頭から信じていた訳ではない」という話もなるほど納得。

これは本当に納得ですね。昔の記録なんかをみると、え、コレホントにしてたの、というのが意外にあったりしますが、いくら古代とかでも案外形だけのものは多かったのでは、という感じがします。

種村季弘、ホッケの訳を多少読んだくらいなので、河出の文庫本を、今度手にとってみようと思います。

種村季弘さん

慧さん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

昔、何だったかの本を読んだときに結構ヘビーだったので、ちょっと敬遠していました。先日読んだ、氏が書かれた澁澤龍彦氏に関するエッセイから、ちょっと抵抗がなくなったみたいです。

種村氏が訳したホッケの『迷宮としての世界』については、前に感想を書いた事があります。またご興味があれば(^^)。
(「建築・デザイン・芸術」のカテゴリに入れてあります。)
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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