2011年10月の読了本

『怪奇クラブ』 アーサー・マッケン 創元推理文庫
  *19~20世紀初頭にかけて活躍した怪奇作家の作品集。短編の連作集である表題作の他、
   聖杯伝説をモチーフにした短篇「大いなる来復」を収録。表題作は個別の怪談を共通の
   枠でひとつながりにしたもので、ブラッドベリの『刺青の男』や『塵よりよみがえり』
   のような感じ。ただしあんまり上手につながってはいなくて、「入れ子構造」が複雑
   過ぎて、却って分かり難いところも。むしろ原題の直訳の『三人のぺてん師』の方が
   よかったかも知れない。
『自閉っ子、こういう風にできてます!』ニキ・リンコ/藤家寛子 花風社
  *アスペルガー症候群の翻訳家と作家が自らの身体感覚を赤裸々に語った対談集。
『フジモリ式建築入門』 藤森照信 ちくまプリマー新書
  *建築探偵・藤森氏による「建築」についての解説書。人類の黎明期から19世紀までの
   建築を俯瞰。(注:「建築様式」じゃなく「建築そのもの」についての入門書。)
『ソモフの妖怪物語』 O・M・ソモフ 群像社
  *ロシア名作ライブラリーの一冊。スラブ系の国に伝わる魔女や怪物の出てくる民話集。
『時間の種』 ジョン・ウインダム 創元SF文庫
  *著者は『トリフィドの日』で知られるイギリスSF界の重鎮。古き良き時代の短篇集。
『イスラームの日常世界』 片倉もとこ 岩波新書
  *ムスリム(イスラム教徒)たちの日常生活を紹介。日本人にあまり馴染みのない世界が
   とても興味深い。
『世界は分けてもわからない』 福岡伸一 講談社現代新書
  *新進気鋭の分子生物学者による評論風エッセイ。「科学的思考」への疑義がなかなか
   刺激的。
『装飾庭園殺人事件』 ジェフ・ニコルスン 扶桑社ミステリー
  *ちょっと癖ある作家による奇妙な物語。読む前に想像していたものより、もっと悪趣味
   でえげつない話だった。(これは本書に関しては褒め言葉。)物語が二転三転して先が
   見えてこないこの感じは、以前どこかで読んだことが―― そう思ってよく考えたら
   コリン・デクスターの『モース警部シリーズ』に印象が似ているのだった。ミステリと
   しては、そもそもの主題である造園家の死因そのものよりも、それを探る造園家の妻の
   行動の方がよほどミステリアス。ラストにはびっくりする仕掛けもあるので一応は広義
   のミステリの範疇に入るのだろうが、それよりもただ一言「ヘンテコな話」と言う方が
   しっくりする気がする。
『星と伝説』 野尻泡影 中公文庫BIBLIO
  *星座や星にまつわる東西の伝説をつづった天文随筆。著者は昔から星に関する民族学的
   な著作やエッセイで知られる。もしかしたら「星の話はロマンチック」というイメージ
   が今あるのは、この人の力に負うものが大きいのかも? 星座といえばギリシア神話が
   最もすぐ思い浮かぶが、浮気性のゼウスや嫉妬深いヘラを始めとして人間臭い神々に
   よる嫉妬や愛の駆け引きが特徴。となれば、それに因んだ星座の話が面白くないわけが
   ない。(笑)北斗七星やオリオンの三つ星などの和名に関する話題も多くあるので、
   うんちくが好きな方にも最適といえる。
『第二の性Ⅳ/Ⅴ』 ボーヴォワール 新潮文庫
  *“女性”に関する古典的な著作(全5巻)の残り4・5巻目。本来は第1部に相当する部位
   であり、女性に関する歴史や女性観の類型などについて考察。
『リアル・スティール』 リチャード・マシスン ハヤカワ文庫NV
  *未だに現役を続ける大御所SF作家による短篇集。(表題作の映画化に伴い編纂された
   日本オリジナル版)
『宇宙のダークエネルギー』 土居守/松原隆彦 光文社新書
  *宇宙には我々を構成する「物質」以外にも「ダークマター」及び「ダークエネルギー」
   とよばれるモノが存在する。(というか、現在観測されている天文現象は、それらを
   仮定しないと説明がつかない。)
   本書は今最もホットで最もミステリアスな話題である「ダークエネルギー」について、
   最新の研究状況を分かりやすく解説したもの。まだ端緒についたばかりで有望な仮説
   すら出ていない状況なので、決着するまでの道のりは長そうだが、果たして自分が死ぬ
   ころにはこれらの謎は解かれているだろうか?
『吸血鬼と精神分析』 笠井潔 光文社
  *大好きなミステリ『矢吹駆シリーズ』の続篇。2002年の前作『オイディプス症候群』
   からおよそ9年半ぶりの新作で、久しぶりに矢吹駆やナディアと再会して感激。因みに
   このシリーズ、主人公による様々な思想との“対決”が毎回とても愉しみなのだが、
   今回のメインテーマはフロイト&ラカンの「精神分析」。期待を裏切らない出来で、
   長いこと待った甲斐があった。
『ビブリア古書堂の事件手帖2』 三上延 メディアワークス文庫
  *北鎌倉の古書店を舞台にした「日常の謎」系の連作ミステリ。毎回色んな本にまつわる
   “謎”が登場して本好きに嬉しい一冊。
『鷺と雪』 北村薫 文春文庫
  *『街の灯』『玻璃の天』につづく、昭和初期に題材をとった全3巻のミステリ連作
   “ベッキーさん”シリーズの最終巻。(作者は本作で第141回直木賞を受賞。)自分が
   考えるに、本作は謎とき以外にも愉しみ方が4つあるといえるのではないか。思いつく
   まま順に挙げてみると、①主人公でお嬢様の「わたし」こと花村英子とお抱え運転手
   「ベッキーさん」(別宮)の会話の妙/②昭和初期の社会風俗や華族たちの生活の様子
   /③本好きな主人公に因む、当時の色々な本に関する話題/④日本が太平洋戦争へと
   突き進んでいった歴史やベッキーさんが背負った過去の重みといった、3部作を通じて
   徐々に見えてくる「大河ドラマ」のような壮大な“風景”。
   これらにミステリトリックを加えた5つの愉しさが混じり合い、且つどれもがピタッと
   見事に決まってまるで絵物語を見ているよう。北村薫氏の作品を読むたびにいつも思う
   ことだが、この人ホント巧いなあ。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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