公共図書館について考える

 最近は公共図書館に行くこともめっきり無くなってしまったけれど、中学生の頃までは毎週のように出掛けてはごっそりと本を借りていた。(このあたりの話は以前「本を食べる」という題名で記事に書いたことがある。)
 昨今、図書館の是非についてあれこれ取りざたされているようだが、本質的なところがなおざりにされているような議論もあってちょっと残念。自分は“今の自分”があるのは図書館のおかげと思っているし、そんな意味でこれからも絶対に縮小や廃止されて欲しくない公共サービスのひとつ。(大袈裟な事を言えば、読書人口はその国の民度をはかる物差しではないかという気さえしている。)そんなこんなで、一利用者の立場ではあるが、自分なりに図書館の存在意義について考えてみたい。なお、べつだん図書館論の類についてきちんと勉強した訳でもなく、専門の方から見れば的外れな話になるかもしれないが、その点はご勘弁頂きたい。

 ネットなどで議論されている「図書館の功罪」というものを整理してみると、だいたい次のような感じになるのではなかろうか。(調べた訳ではないので抜けや誤解があるかもしれない。その点はあしからず。なお「図書館は地元のコミュニケーションの場である」という別の視点による議論もあるが、ここでは本を読む場としての図書館についてだけ焦点を当てることとする。)

<“功”派>
 □子供らが本に接する機会を増やす。
 □生活費をそれほど本代に回せない人がたくさん本を読める。
 □読書能力の向上は考える力の向上につながりやがては国力を高めることに。
  そのための最も有効な手段は図書館の充実。
<“罪”派>
 ■ただでさえ読書人口が減っているのに、図書館が充実するほど本を買ってまで読もうと
  いう人が減り、本来売れる筈だった本が売れなくなってしまう。
 ■近場の人しか利用できないハコモノを作るのは税金の無駄。

 “功”の意見を突き詰めると「税金で賄っている公共サービスなんだから、ベストセラー本を沢山購入してより多くの人に貸し出せるようにすべし」という主張が出てくることも。また“罪”については、極論すると「ベストセラーはともかくとして、元々小部数しか出版されない作家にとっては死活問題である。公共サービスがそんな事をして良いのか!」という意見もある。

 うーん、それぞれの内容にはたしかに頷ける点も多い。ただこれらを踏まえた上で自分の意見を述べる前に、自分がなぜ今では図書館を利用していないのか?について、まず説明しておきたい。――とはいってもそれ程大層な理由ではない。簡単に言ってしまえば、自分の読書スタイルが変化して、図書館利用の条件に合わなくなってきたのが一番の理由。常時3~5冊程度の本を併読する読書スタイルになったため、「一度にまとめて借りて読み始め、読み終わったら揃って一定期間で返却」というシステムでは上手く回せなくなってしまったのだ。でも実は他にも理由があって、そちらも方が問題としては根深いかも…。
 それは図書館に行っても「まあ読んでもいいけど」という程度の本ばかりが目立ち、「ああ、この本がすごく読みたい」という気持ちになれないこと。内田樹ふうにいえば(笑)、今や図書館の棚は“街場の新刊書店”とよく似た品揃えでしかないのだ。それでは魅力という点で自分の家の本棚に勝てるわけがない。なんせ自宅の方は自分が読みたくて仕方がない本ばかりを集めた「濃縮ジュース」みたいなものなんだから。
 そのためいつの頃からか、面倒な思いをしてわざわざ図書館に行かなくても、新刊書店や古本屋で自分の好きな本を探して好きなタイミングで読む方が良くなってしまったというわけ。

 それではなぜ図書館が自分にとって「そんな品揃え」でしかなくなったのか?それは本というメディアがもつ特別な事情によるものと考える。個々の本がもつ価値というのは、それを受け取る側によって貴重なものにもゴミ同然にもなり得る。従ってある人を満足させる本が、同様に他の人も満足させられるわけでは無いということ。それこそが一般の公共サービスと違って公共図書館が抱えるジレンマの原因ではないだろうか。以下、このあたりの内容について少し掘り下げてみたい。

 図書館の蔵書の中心ジャンルであり、かつ利用者の大半が目的にしているのはやはり文芸書だろう。その棚が新刊ベストセラーをメインにした品揃えであるということは、図書館利用率を引き上げる原動力になる。しかし一方では先ほども述べたように、それが中小の新刊書店の経営を圧迫する原因になっているという声もあるようだ。難しい問題だと思う。
 自分としては、“公共の利用”を原則とする以上は、住民の要望がある限りにおいて大人向けベストセラーの購入を控えるわけにはいかないと思う。しかしだからといって、一部の意見にあるように複数冊いれる必要はないと思っている。幾らリクエストがあってもまさかフランス書院の本を図書館が購入することはないだろう(笑)。いくら「リクエストがあれば」といっても、ある程度は公序良俗を考えた「お上」の基準というものがあるはず。「読ませたくない本」とあからさまにいうのは、“表現の自由”とか色々ややこしい話になるので難しいだろうが、逆に「読ませたい本」や「残したい本」という視点で購入図書の優先度を決めるのは、在り得ない話ではあるまい。だとすればそこに「売れているから」という基準をもってくるのは、選択条件が安直に過ぎると言われても致し方ないのでは。(もっとも新刊本の発行点数は年間5~7万点ほどもあるそうなので、ある程度はやむを得ないとは思うが。)

 ベストセラーは沢山売れるからベストセラーという。(当り前か。/笑)
 本好きの人が年間ベストセラーの本を殆ど読まないという話をときおり聞くが、普段本を読まない人まで買うからベストセラーになるのであって、また普段本を読まない人が買うのは単に「巷で話題になっているから」という理由に過ぎないことが多い。(飲食店に行列ができるのと同じこと。人が並んでいるからきっと美味しいのだろうと、どんどん列が延びていく。)
 かように図書館でベストセラーを借りようという人は、買ってまで読む気が無いという人が大半だろう。図書館はそのような人のために限られた予算を投入して便宜を図らずとも、借りられる順番が来るまで半年でも待ってもらうか、もしくは自腹で新刊書店かまたはブックオフなどの中古書店で買ってもらえばよいのではないかと思う。

 なお、もしかしたら文芸書のヘビーな読者の方で、「いちいち本屋で買っているとお金がもたないから」という人もいるかも知れない。(この文章を読まれている方には意外と多い?)しかしこれはあくまでも一般論であり、そういう方はごく少数だと思うので考慮の対象外。(笑)
 同様にヘビーな文芸読みの方で、「読み終わった本の処分に困るから」という理由で図書館を利用しているケースも考えられる。(こちらは意外と結構多いかも?)自分の場合も、読み終わった本はなるべく古本屋に売って処分するようにしているのだが、愛着がある本(*)はどうしても処分するふんぎりがつかず、図書館を利用しないとどうしても本が溜まる一方になってしまう。しかしまあそのくらいは自分でなんとかしなきゃねえ。

  *…お気に入りの著者である/内容が思いの外よかった/その本の叢書(シリーズ)を
    集めている/装幀がとてもきれい/その本を読んだ時にまつわるエピソードがある
    等々。

 話が発散してきたので、ここらで強引に結論をだして終わりにしたい。(笑)

<自分が公立図書館に望むこと>
 ○子供が本に接する機会を増やすということでは公立図書館は最適な手段なので、絵本や
  児童書は優先して多く揃えるべき。(絵本を買い与えてまで…と考えている親が借りて
  いくことで、子供が本好きに育ってくれれば嬉しい。)
  その意味で、定期的に“子供の本の読み聞かせ会”を開いてもらえると更にに有り難い。
 ○大人向けの文芸書も一応普通に揃えるべき。ただしベストセラーを必要以上に手厚くする
  必要はなくて、発行部数が少ない本と同率で購入すればいい。(行政サービスとして必要
  最低限あればOK)
  むしろ良い本なのに値段が高い(=読みたくても読めない人が多い)本を限られた予算内
  でどれだけ揃えられるかが、図書館司書の選択眼の見せどころ。発行部数が数千部くらい
  のハードカバーこそ、ぜひとも積極的に予算を組んで揃えてもらいたい。それが良心的な
  本を出し続けている中堅どころの出版社や著者への応援になると思う。

 とまあ、とりあえずこんなところ。他の皆さんはどのようなご意見をお持ちなのだろうか?
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はじめまして

興味深い記事だったので、コメントさせてもらいます。

私自身幼い頃から図書館のお世話になりっぱなしで、今の読書量があるのはひとえに図書館のおかげだと思っている人間です。
でも作家や出版社が本を売ることも大事で、ベストセラーが書店に並ぶ前から、図書館に予約が殺到している状態はいかがなものかと思います。

図書館が複数の本を仕入れる必要はないと同時に、新刊をすぐに図書館に並べる必要もないのでは?と。
それこそレンタル用の映画に制限があるように、本も出版されてから最低三ヶ月をおかないと図書館には並べられないとかでもいいのかな、と思いますね。

ご訪問ありがとうございます

あきらさん、はじめまして。コメントありがとうございました。

ええっ、そうなんですか。書店に並び始める前から図書館に予約殺到とは知りませんでした。
自分の場合は、そこまでして読みたい本ならとっとと買ってしまうと思うので、ちょっと想像できませんです(汗)。

あきらさんの「貸出禁止の期間を設ける」というアイデア、とても良いと思います。賛成です。
急いで並べなくてもいいから、その代り、絶版になってしまった本も末長く置いてもらいたいものですね。(特に子供向けの本などは状態が良い本が少なく、古本屋にもあまり出回らないと思うので。)

今更ですが

おお。私が図書館について日々感じていることです!
しっかり考察して、まとめて下さってますね。ブンブン首を縦に振りながら読みました。

で。私はというと、舞狂小鬼さん言うところの「考慮の対象外」
読みたいような文芸書は、高過ぎます(笑)かつ、そう。処分に困るのです。かつては質のいい古本屋が近くにあったので、買っては売り、売る間に買い、とサイクルしてたんですけども・・・。

ただ、図書館に読みたいような本がない、というのはもしかすると錯覚かも。そこそこの規模の市だと、意外と想像以上に頑張って広く本を揃えています。

私は今では本棚で選ぶことはなく、ほぼネット予約。そうすると市内の5つの図書館のどこかにあれば、最寄りの図書館へ届けてくれます。意外とあるんですね、そうすると、どこかには。でも。確実に1冊です。

だから。読みたい人の予約内で、本はぐるぐると回っている・・・つまり棚に返される余裕がない。ええ。2冊くらいはあってもいいですよね。し、世の中の人すべてがネットユーザーじゃないですしね。

私個人としては、読みたい本が多過ぎて経済的に苦しいので、「読みたい!」⇒まずは図書館検索⇒あったら予約⇒読んで凄く気に入る⇒古本屋で探して購入⇒見つからなければ本屋への、パターンです(笑)

まぁ。ベストセラーを図書館で借りて読みたいような人は。買って本を読む人では、そもそもないですよね、失礼ながら。そういう人がタダだから、ベストセラーだから、本を読む、というのは別に悪くはないと思います。読まないよりは。

ベストセラーだけが異様に売れ過ぎることの方が私は恐ろしく感じるので。図書館が買うことで売れ行きが減るくらいで良いです(笑) 文芸書も図書館が買ってくれなかったら誰も買ってくれないかもしれない(違うか) マイナーな本を揃えることにもっと力を入れてくれたらいいんですけど。か、何とか文芸書(とくに翻訳物)をもう少し安く出来ないかしら・・・。

いや、ベストセラーを馬鹿にしてるんじゃないんです。私もブームが去りかけの時にベストセラーを予約します。それも逆の意味で買ってまで読まない本なので。無料で読めるおかげで読書幅が広がっているとも言えます。

そりゃ、ベストセラー10冊(20冊?)とか、マンガ買うくらいなら、この名作を買ってくれ!(なぜこの本が図書館にないのだ!)と思うことも多々ありますけど。

ていうか。市、もしくは県に一つくらい、何かテーマを持って揃えた図書館とか作ってくれたらいいのにな。「海外ミステリー図書館」とか「海外翻訳名作図書館」とか、「幻想文学図書館」とか(すいません、私の趣味です) もの凄く充実した図書館作ってくれたらワザワザでも行くし。入館料100円くらいなら(笑)、払ってもいい。

あと。財源がね。これは、私、昔からアイデア(っていってもパクリですけど)あるんです。ビデオ屋と一緒で、延滞料金を取るといいと思う。確か、これアメリカでやってるはず。この収益で図書館が運営出来るほどだと耳にしたことがあります。

実際、延滞多過ぎて、ヒドイんです。罰金取られるとなったら、きちんと返す人が増えるだろうし。それでも返さない人はいると思うから、絶対収入になるし。そのお金で本を買えるじゃないですか~!

すいません、ヒトのとこお邪魔して、勝手にヒートアップしてしまいました。長々と・・・申し訳ありません。そのくらい、図書館に対しての愛憎が溢れているんです(笑)

出版業界のお話には、ここで踏み込むと収拾つかなくなるので自粛します。

すいません(汗)

彩月氷香さん、こんにちは。

力のこもった(笑)コメントをありがとうございます(^^
あちゃー、「対象外」なんて書いてしまってすいません(汗)。

そうか、ネット予約という手があるんですね。名古屋市の図書館でもやっているかな?
近所にある図書館の開架を見る限りでは、あんまり食指が動かないんですが、読みたい本を指名すれば良いんですね。ひとつ賢くなりました。 m(_ _)m ペコリ

マイナーな本の専門図書館、いいですね。中小出版社の救済策にもなるし。やっぱり施設の名前は「バベルの図書館」ですかねー。
個性ある図書館だったら、有料トイレみたいに多少のお金をとってもいいから利用してみたいとおもいます。

延滞料を取るというのもいいですね。他の市民のためのサービスを妨害してるわけですから、課徴金みたいにして取ってしまっても許される気がしますね。(昔から「本は人に貸すもんじゃない」というのはやっぱり本当のようで。/笑)
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Author:舞狂小鬼
サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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