開高健_My favorite 3

<マイベスト>
★『輝ける闇』新潮文庫
  *ベトナム戦争に従軍記者として赴任した経験から生まれた、著者のターニングポイント。
★『夏の闇』新潮文庫
  *開高のもっとも重要なシリーズである“闇”の2作目にして代表作、読み応え充分。
★『ロマネコンティ・1935年』文春文庫
  *六つの短篇が収録された短篇集だがどれも傑作なのが凄い。何度読み返したことか。
★『珠玉』文春文庫
  *著者が癌の病床で書きあげた、まさに「珠玉の短篇集」。
★『オーパ!』集英社文庫
  *南米釣り紀行にして卓抜な文明批評。帰国前夜のブラジリアのくだりを初めて読んだ時は
   ゾクゾクきた。
★『フィッシュ・オン』新潮文庫
  *釣り紀行の最初の作品。北米を舞台にサーモンを釣る。
★『風に訊け!』集英社文庫
  *週刊プレイボーイに連載された、読者からの投稿に対する「ライフスタイルアドバイ
   ス」。おバカな質問、青臭い意見などに対する開高の回答を読むと、彼の凄さが
   改めて実感できる。
★エッセイや対談集をいくつか
  *1980年くらいから後の刊行ならどれでもOK。初期のものは生真面目すぎて続けて
   読むと疲れてくる程だが、後のものほど肩の力が抜け円熟味が増してきて好い。

 言葉にした瞬間にすりぬけてしまうもの。例えば手中の宝石を見つめ続けることで過去の記憶に対面し、その中に見出しかけながら結局は捕まえそこなうもの。あるいは何日も釣果がなく身も心も疲れ切った時にかかった魚を、数十分の格闘の末に釣り上げて確保した瞬間、円が閉じ杯は一瞬にして満たされること...。かつて語りえぬものは沈黙しなければならないといった人もいたが、それでもきっと語る方法はある。彼が一生をかけて追い求めてきたのはきっとそれなんだろうと思う。
 語らないことで雄弁に語る能の舞台や、描かないことで余白に何者かを語らせる山水画の技法。これら足し算ではなく引き算によって、逆説的に移ろいやすい(=フラジャイルな)ものを捉えるのが日本独自の方法である、と言ったのは松岡正剛であり、それが日本文学が世界に誇る独自性なのだとすれば、開高はおそらくそのひとつの到達点である。
 読む人によっては評価が分かれるようだが、自分は初期の荒削りなものより“ベトナム以後”の自然に向かってからの方が好きだな。とことん練り込まれて密度が濃いその文章からは、極限まで無駄を省いてあるにも関わらずなぜか(開高健が好きなワインに喩えるならば)「馥郁たる香り」が漂ってくる感すらある。

【人と作品】
 夫人である詩人の牧羊子と入れ替わりに洋酒の壽屋(現在のサントリー)に入社して、宣伝部で辣腕をふるい、在職中に『裸の王様』で芥川賞を受賞して本格的な作家活動に入る。その後ベトナム戦争に従軍記者として赴任し、反政府ゲリラの襲撃によって200名あまりいた部隊のうちわずか19名が生き残るという壮絶な体験をして帰国。この体験はその後の開高の作品に深い影響を与えた。後年は釣りを中心としたルポルタージュを多く発表した。1989年死去。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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