『黄金伝説1』 ヤコブズ・デ・ウォラギネ  平凡社ライブラリー

 テレビのバラエティ番組の題名では無く(笑)、キリスト教文化圏でもっともよく知られた説話集。ギリシアやローマのように神々や英雄の物語をもたないキリスト教が、代わりに聖人や殉教者たちを使って作り上げた一種の神話集と言ってもよい。13世紀ごろ、ジェノヴァの大司教ヤコブズ・デ・ウォラギネによって編纂された。中世には聖書と並びもっともよく読まれた書物だそうで、ヨーロッパにおける文学や芸術の源泉となっている。長い時に亘って読み継がれてきたもので、「何物にも代えがたい書物」という意味で、誰が言うともなくこの名がつけられたらしい。
 スタイルは聖人に因んだ祝日(記念日)について、由来を説明する形になっている。(テレビのワイドショーなんかにある「今日は何の日?」みたいなものを思えばあながち間違いではないかと。)年間を通じて順番に取り上げられていて、本書にはそのうち51の祝日が取り上げられている。こうしてみると、どうやらキリスト教圏では殆ど毎日のように、何らかの記念日になっているようだ。(笑)
 中身はといえば、敬虔な信徒たちが布教や信仰のために迫害を受け、神の奇跡で魂の救いを得たといった類の話が満載。日本ならさしずめ仏教の布教のためにかかれた、『日本霊異記』などの説話集がそれにあたるだろうか。
 信仰の為には拷問はおろか処刑すら恐れずことなく、自ら進んでその身を捧げようとする彼らの姿。読み進むうちに、天草四郎ら日本のキリシタンたちの姿にも重なってくる。本書に描かれているような、迫害されるほどに信仰が“結晶化”して恍惚となっていく様子は、当時の異教徒たちからみたらさぞや薄気味の悪いものだったのではないか。なんせ暴力による脅しが全く効かないんだから始末に負えない。昔の話だから致し方ないとはいえ、あまりにも狂信的なのもなあ。イスラム原理主義者による自爆テロとか、あるいはチベット僧侶による焼身なんかをイメージしてしまって、少し引いてしまうところも。

 本書は本邦初の全訳本のようで(?)、平凡社ライブラリーで全4巻。ハードカバーの専門書に比べれば値段も手ごろでいいのだが問題はそのボリューム。なんと本書(第1巻)だけで580ページもある。個々のエピソードはそれなりに興味深いのだが、如何せん量が多過ぎ。きっと西欧の人たちは子供のころから礼拝の時など、折に触れてすこしずつ親しんできたのだろうが、今回のようにいちどに読むと結構ヘビー。異文化を理解するというのはやはり大変だというのが良く分かった。(笑)
 
<追記>
 実は本書を読んだきっかけは、R・A・ラファティの『第四の館』という作品が出版されるという情報。著者が敬虔なカトリック信者であったせいかどうかは知らないが、どうやら聖人伝説が下敷きになっているらしい。(おそらく澁澤龍彦の『高丘親王航海記』を読むには仏教の知識がある方が良いのと同じように、)本書を副読本として読んでおいた方がより愉しめる、という噂を聞いてトライしてみたというわけ。とりあえず”聖人伝説”なるものの雰囲気は分かったので当初の目的は果たせたのだが、あと3巻ある続きはどうしようかな? また機会を見つけて「ボチボチ」ということにしようか…。(ちょっと逃げ腰。/笑)
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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