2011年9月の読了本

 今月は個人的に「読書強化月間(笑)」を開催したため少し多め。(でもその分、新しいのを買ってしまったので差し引きの在庫数は変わらず。お金がないのは毎度のこと。/笑)

『理性の限界』 高橋昌一郎 講談社現代新書
  *社会科学/自然科学/論理学など様々な「知の領域分野」における、原理的に解決不能な
   こと(すなわち「理性の限界」)を紹介した本。
『NOVA5』 大森望/編 河出文庫
  *文庫オリジナルのSFアンソロジー第5弾。割と気に入ったのは、宇宙SFと金融工学を
   ドッキングさせた宮内悠介の「スペース金融道」と、伊坂幸太郎のタイムトラベルもの
   「密使」あたり。図子彗の未来社会もの「愛は、こぼれるqの音色」も悪くない。
『漢字』 白川静 岩波新書
  *漢字研究や古代日本&中国の習俗研究で有名な著者による、一般向け書籍の記念すべき
   第1冊目。
『夏の夜の夢・あらし』 シェイクスピア 新潮文庫
  *沙翁による新旧2つの幻想的な喜劇をカップリング。初読だったが、最後の作となる戯曲
   の「あらし」は傑作だった。
『パノラマニア十蘭』 久生十蘭 河出文庫
  *河出お得意の文庫オリジナル短篇集。戦時下を舞台にしたものだとか江戸時代を舞台に
   したものだとか様々。相変わらず唐突に終わってしまう作品もあるが、やっと少し慣れて
   きた。(笑) 収録作の中では「巴里の雨」「田舎だより」「重吉漂流記聞」あたりが
   好み。
『「悲しき熱帯」の記憶』 川田順造 中公文庫
  *著者は文化人類学者レヴィ=ストロースによるブラジル紀行『悲しき熱帯』の訳者。
   本書は、自身も人類学者である彼が、レヴィ=ストロースと同じ地をおよそ50年後に
   訪問した紀行文。
『密室入門』 有栖川有栖/安井俊夫 メディアファクトリー新書
  *ミステリ作家と建築家が、ミステリに登場する魅力的なギミック「密室」について語り
   つくした対談集。 
『第二の性Ⅲ』 ボーヴォワール 新潮文庫
  *有名な女性論の3巻目。(「体験篇」はこれで最後となる。)
『平台がおまちかね』 大崎梢 創元推理文庫
  *書店を舞台にしたコージーミステリ『成風堂書店事件メモ』シリーズでおなじみの著者に
   よる新シリーズ。今度は出版社の新人営業マンが主人公。
『宗教入門』 中沢新一 マドラ出版
  *1991年7月から翌年の9月までテレビ東京で放映された深夜番組『夜中の学校』を全13巻
   の講義録として出版したものの9巻目。中沢新一は追っかけてるので一応読んでみたが、
   内容は中沢ファンにとってはお馴染みの話題。「人間にとって宗教が持つ意義」のような
   類の話や、キリスト教および仏教のエッセンスなどをごく簡単に紹介。ちなみに他の巻の
   内容は以下の通り―― ①糸井重里/②橋本治/③淀川長治/④野田秀樹/⑤杉浦日向子
   /⑥荒俣宏/⑦秋元康/⑧川崎徹/⑩景山民夫/⑪養老孟司/⑫デーモン小暮/⑬天野
   祐吉
『大人の学校 入学編/卒業編』 天野祐吉・他  静山社文庫
  *前述のマドラ出版版『夜中の学校』から講義録を抜粋した傑作選。前篇となる「入学編」
   では野田秀樹/荒俣宏、「卒業編」では橋本治/杉浦日向子/天野祐吉などが好かった。
   (文庫化にあたり⑦⑩⑫の3人が省かれている。そちらを読みたければマドラ出版版を探
   すしかない。)
『ザ・クライム』 山野浩一 冬樹社
  *日本SF界におけるニューウェーブ運動の第一人者による第4短篇集。気に入ったのは
   「エーテル」「霧の中の人々」に「革命狂詩曲」(“フリーランドシリーズ”の一作)の
   あたり。ところで表題作を読んでふと思ったのだが、著者の小説の主人公は誰も皆何らか
   の「罪の意識」を(何故か)持っているような気が。ただしそれが当時の社会に共通する
   意識なのか、それとも著者独自のスタイルによるものなのかは分からない。
『イスラームの世界観』 片倉もとこ 岩波現代文庫
  *国際文化研究センター所長にして国立民族博物館名誉教授の著者によるイスラムと日本の
   比較文化論エッセイ。
『未来への帰還』 トニ・ネグリ インパクト出版会
  *2000年に世界的なベストセラーになった『<帝国>』(ハートとの共著)で有名な社会
   学者の小論やインタビューをあつめたもの。(著者名は「トニ」となっているがアントニ
   オ・ネグリのこと。)副題が「ポスト資本主義への道」となっていることからも分かる
   ように、著者の主張はフーコーやドゥルーズらの研究成果を借りつつ、湾岸戦争以降に
   世界中で顕著になった<帝国>という新たな権力母体への対抗を探ろうというもの。
   90年代中期の内容なので思想的にまだ未整理のところはあるが、基本的なスタンスは
   『<帝国>』など以降の著作と変わっていない。(なお帯には「ネグリ入門」と書いて
   あったが、中身は断章に近いので、彼の思想をある程度は知らないと何の話かさっぱり
   理解できないと思う。)
『軽症うつ病』 笠原嘉 / 『うつ病をなおす』 野村総次郎 ともに講談社現代新書
  *仕事の都合で回復期の方の職場復帰をお手伝いする事になり、とりあえずメンタルヘルス
   関係の基礎知識をお勉強。しかしどんな理由であってもそれなりに読書を愉しむことが
   できるというのは、活字マニアの特殊技能かも知れない。(笑)
   SNRIという抗うつ薬の名前が出てきたら“INRI”(十字架のイエスの上に掲げられた文)
   を連想したりと、本文の内容とは全く関係ないところをあちこち脱線しつつも、2冊とも
   無事に読了。(読むべきところはちゃんと読んだのでご心配なく。/笑) どちらの本も
   平易に書かれていて好印象。前者は回復期にある人への対処の仕方に多くのページが
   割かれてあるし、後者は(出版された年が比較的新しいこともあって)、前者より更に
   最新の知見が要領よくまとめてある。再発を防止するための性格改造などにも触れてある
   ところも良い。うつ病は一説には10人に一人がかかるとも言われ、今や一生の罹患率が
   リューマチや糖尿病よりも高いと言われているとのこと。こうして改めて知ると、
   決して他人事ではないよなあ。
『黄金伝説1』 ヤコブス・デ・ウォラギネ 平凡社ライブラリー
  *日本でいえば仏教の功徳を説いた『日本霊異記』みたいなものか。キリスト教の聖人及び
   殉教者の言行をまとめた「聖人伝説」のなかで、もっとも有名な文献であり、ヨーロッパ
   の文化の源泉とのこと。信仰がもたらす奇跡をドラマチックに描いたり、ヨーロッパ各地
   に伝わる伝承を取り込んだりとか、様々な説話や伝説の宝庫と言える。
『ジャンピング・ジェニイ』 アントニイ・バークリイ 創元推理文庫
  *『毒入りチョコレート事件』で有名な作家による本格ミステリ。『第二の銃声』が抜群に
   面白かったので読んでみた。結果、『第二…』の時に感じたほどの驚きはなかったが、
   相変わらず巧い。使ったお金と時間のモトは充分にとれた。(笑)
『赤めだか』 立川談春 扶桑社
  *立川談志一門の真打・談春による、修行時代を中心に描いたエッセイ。08年度の講談社
   エッセイ賞を受賞した。聞くところによると談春は今一番面白い落語家のひとりらしい。
   一度も聞いたことが無いが、そのうち機会があれば聞いてみよう。
『日本の深層』 梅原猛 集英社文庫
  *日本文化のもっとも深層にあたる縄文文化。著者お得意の大胆な仮説でもって、東北の地
   に縄文文化の面影を探る旅を描いた紀行文。
『探偵術マニュアル』 ジュデダイア・ベリー 創元推理文庫
  *不条理っぽくもありファンタジックな要素もあるという、不思議な感触のハードボイルド
   風ミステリ。帯には「ポール・オースター+ブラッドベリ+カフカ」となっているが、
   何となく元ネタは想像できる。訳者あとがきには著者が好きな作家として、カルヴィーノ
   やボルヘスの名も挙げられているがさもありなん。ただし後半になって事件の構成が徐々
   に分かってくると、破綻の無いまっとうな小説として着地する。それを良しとするか、
   又は詰らないと断ずるかによって、評価が分かれるかもしれない。ちなみに自分の場合、
   「あれっそうくるの?ちょっと残念だけど、これはこれで悪くないかな」という感じ。
   筒井康隆の長篇『パプリカ』にもちょっと似た雰囲気が無きにしも非ずかな。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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