2011年7月の読了本

『ダールグレンⅡ』 サミュエル・R・ディレイニー 国書刊行会
  *20世紀のアメリカSFが生んだ最大の問題作にして、全1000ページに亘る超大作の後篇。
『砂の本』 ホルヘ・ルイス・ボルヘス 集英社文庫
  *ラテンアメリカを代表する魔術的リアリズム作家の短篇集。
『ちょっと本気な千夜千冊 虎の巻』 松岡正剛 求龍堂
  *破天荒な読書案内である『松岡正剛 千夜千冊』の中身を紹介するブックガイド。
『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』 石井好子 河出文庫
  *巷に溢れるグルメエッセイの元祖のような作品。暮らしの手帖に連載されていた名著の
   初文庫化。そんじょそこらの低俗な食べ物エッセイとは一線を画する。東海林さだおも
   好きだがこういうのも好いなあ。
『ふらんす怪談』 アンリ・トロワイヤ 河出文庫
  *翻訳は澁澤龍彦。『女帝エカテリーナ』などの歴史評伝で有名な作者による、
   幻想味に溢れた小洒落たコント集。「幽霊の死」(幽霊を殺してしまう話)や、
   「恋のカメレオン」(自殺未遂の青年が引き受けた奇妙な仕事)などが気に入った。
『海神別荘』 泉鏡花 岩波文庫
  *戯曲集。鏡花自身が書いた戯曲は意外と数少なくて、全部で20篇くらいしかないそう。
   『崖の上のポニョ』を連想するような“海の民”の輿入れの様子を描いた表題作の他、
   「やまぶき」(人情もの)「多神教」(これも鏡花らしい幻想譚の傑作)の3篇を収録。
『ロコス亭』 フェリペ・アルファウ 創元ライブラリー
  *スペイン系アメリカ人で、本書を入れて2冊しか小説を発表していない幻の作家による
   短篇集。「ルナリート(ホクロちゃん)」、「ドン・ラウレアーノ・バエス」といった
   極めて個性的な人物たちが大勢活躍する。ある作品では主役だった人物が別の作品では
   脇役として登場し、名前やキャラクターは同じなのに役柄は作品ごとに違っているため、
   キャラがまるで芝居の役者みたいに思えてくる。
   話は幻想譚もあればミステリの原形のような作品もあってどれも抜群に面白かったが、
   とくに好きなのは「アイデンティティ」(全く目立たない男の苦悩)、「作中人物」
   (井上ひさしの『ブンとフン』を何故か思い出した)、「ネクロフィル」(こよなく
   死を愛好する家の女性)、「犬の物語」(ある男の壮絶な人生)あたりかな。
『生命はなぜ生まれたのか』 高井研 幻冬舎新書
  *深海微生物の研究者が最先端研究の成果を紹介しつつ、地球生命の起源について考察。
   理科好き人間には堪らない本。
『西瓜糖の日々』 リチャード・ブローティガン 河出文庫
  *村上春樹や高橋源一郎らに影響を与えたとも言われる作家による、なんとも不思議な
   世界を描く小編。ヴォネガットあたりにもちょっと似た雰囲気があるが、先日読んだ
   『ダールグレン』にも繋がるような。
『竹田教授の哲学講義21講』 竹田青嗣 みやび出版
  *プラトンからハイデガーまで16人の思想家について取り上げ、その思想のエッセンスを
   分かりやすくレクチャー。しかし流石は竹田青嗣それだけでは終わらない。西洋哲学の
   入門であると同時に、一本筋の通った現代社会への著者なりの思想表明にもなっている。
『千のプラトー(下)』
  *ポストモダン思想を代表する最大の話題作にして問題作。文庫版は3巻に分かれたので
   ハードカバーよりもよほど(物理的に)読みやすい。しかし内容がヘビーなので結局
   読了するのにかなりの時間がかかってしまった。
『夜の声』 W・H・ホジスン 創元推理文庫
  *『異次元を覗く家』や『幽霊狩人カーナッキ』などで有名な著者による、海洋をテーマ
   にした怪奇短篇集。長篇と違って短篇はテンポよく話を進めるため、古い作品なのに
   “勝負”が早くて現代人の感覚にぴったり合う。(笑) 特に気に入ったのはかつての
   東宝ホラー映画『マタンゴ』の原作になった表題作のほか、「熱帯の恐怖」「石の船」
   「カビの船」あたりかな。
   余談だが、子供の頃に「船の墓場サルガッソー海で船員が体験した恐怖!」という類の
   話を良く聞いた。そのおおもと(の少なくともひとつ)はホジスンだったというのが
   分かったのは、別の意味で今回の収穫。
『アフリカを食べる/アフリカで寝る』 松本一仁 朝日文庫
  *著者は『カラシニコフ』などのノンフィクションで知られるライターによるエッセイ。
   アフリカ文化には馴染みがないので初めて知るような面白い話題が満載。ただし著者の
   狙いはもっと深いところにあって、食や住という根源的な部分に焦点をあてることで、
   現代アフリカ社会が抱える問題がやがて生々しく浮かび上がってくるという仕掛け。
   たとえばルワンダやコソボなど、新聞やニュースでしか知らない出来事の向こうには
   生活する人々がいるということを実感。
『薔薇への供物』 中井英夫 河出文庫
  *アンチミステリの大作『虚無への供物』や、泉鏡花賞を受賞した『悪夢の骨牌』などで
   有名な著者の作品から、薔薇に因んだものだけを集めた幻想作品集。12篇の短篇に著者
   自身による自作解説を付す。そこはかとなく淫靡で頽廃的で不安に満ちた作品群は、
   いかにも澁澤龍彦が好みそうな感じ。
『家を作ることは快楽である』 藤森照信 王国社
  *“建築探偵”で有名な建築史家があちこちに書いた文章を集めたエッセイ&評論集。
   前半は自邸「タンポポハウス」や赤瀬川源平邸「ニラハウス」など、ユニークな建築を
   手がけた顛末についてかかれた肩の凝らないもの。一転して後半は、著者の専門である
   建築史に関する文章を集めた章をふたつ収める。ひとつは近代モダニズムにおける、
   “桂離宮&バウハウス”と“非桂&コルビジェ”や、あるいは“抽象性をもとめる”と
   ”実在感をまさぐる“といった、対極的な傾向を示す物件やブルーノ・タウトについて
   の考察。もうひとつは岩崎(三菱)と安田(芙蓉)の二つの財閥の自邸の日本建築史に
   おける位置づけを明らかにした小論。この人は建築探偵ものなどの軽めの物も好いが、
   『明治の東京計画』みたいな固めの本も結構面白い。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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