『天体嗜好症』 稲垣足穂 河出文庫

 稲垣足穂(いやここでは親しみをこめてタルホと呼ばせてもらおう)という作家のモチーフは、デビュー作の「一千一秒物語」から一貫して、小説でも随筆でもずっと変わっていない。悪く言えば「全く進歩が無い」といえるのかも知れないが(笑)、しかしタルホの場合にはそれが逆に魅力になっているから不思議だ。
 フィクションやエッセイやその中間的な小文など、様々なタイプの文章を収めた本書の中にも、ファンにはお馴染みの言葉が溢れかえっている。曰く――
 (映画の)スクリーン/キュビズム/セルロイド/ムーンライト/カレイドスコープ/キネオラマ/複葉ヒコーキ/ブリキ細工の筒/ファンタスマゴリア/青いエントツ/手品/コメット/ガス燈/切紙細工/鉱物、そして“ポールから緑色の火花をこぼしてとおるボギー電車”...。

 人の手による痕跡をできるだけ排した人工的な感じや、“一点ものの希少性”でない“大量生産の安っぽさ”を愛しているのが、我らの敬愛するコメット・タルホ氏に他ならないのだ。(なお念のために言っておくと、これは自分の勝手な印象ではなくて、本書に収録されている「タッチとダッシュ」というエッセイで彼自身が述べていること。)
 無機質というか幾何学的というか、まるでアンディ・ウォーホールのポップアートのような“手触り”を感じさせてくれるタルホの作品世界は、ときおり無性に読み返したくなる存在。自分にとっては、ある種の故郷のようなものなのかも知れない。(ただし少年愛だけはちょっと遠慮しておきたいけどね。/笑)
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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