『文学全集を立ち上げる』 丸谷才一/鹿島茂/三浦雅士 文春文庫

 アンソロジーや全集を編むのは、本を読むことが趣味の人間にとって一番に楽しい行為だと思う。ああでもないこうでもないと3人が議論を交わしながら作品を選んでいく過程は最高に面白かった。ただしその結果出来あがったリストには大いに異論があるが。それは「ちくま日本文学」で自分が好きな作家の巻を読んだ時に感じるのと同じ種類のもどかしさ。丸谷才一や三浦雅士とは、根本的に趣味が違うのだろう。(ちなみに鹿島茂とは結構合うところもある。)
 「今よんで面白くないものは大作家の著名作品でも外す」という方針は大変結構。それを突き詰めると不満は作家・作品の選択に対する考え方の違いという点に収束していく。しかし“アンソロジー”ならそれで良いが、“全集”では「そのコンセプトにあった代表作を選ぶ」という、“全集”であるが故の縛りがでてくるため、入れたくないのに選ばなければいけないというジレンマがある。突き詰めると教条主義に陥ることになるので、どこでバランスをとるかが腕の見せ所だろう。
 「サブカルチャーも入れる」という考えも良いとは思うが、所詮中途半端に終わるのであれば、入れない方が良かったのではないか?例えばSFではレム、バラード、ディックを選んでおり、それぞれ『ソラリスの陽のもとに』『結晶世界』『ヴァリス』を選択しているが如何なものか。選択が(間違ってはいないにせよ)表面的過ぎて掘り下げも出来ていないし面白くない。せめてポーランド語の原典から訳した国書刊行会の『ソラリス』を選ぶくらいのこだわりを、他の文学作品と同じレベルで持って欲しかった。(ロシア語版では削除された部分も載っているし。)その知識がないのならサブカルチャー作品を選ぶこと自体を止めておくべきだとおもう。ミステリ系の代表作として選ばれているル・カレの『寒い国から帰ってきたスパイ』についてもしかり。やっぱりサブカルはサブカルで分けて、日下三蔵や新戸雅章らに任せてしまった方がいいんでないの?
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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