『江戸怪談集(中)』 高田衛/編 岩波文庫

 数多い江戸怪談話の中から物語を精選して収録。全3巻なのだが残念ながら上巻は品切れだったので、残りの2冊を買ってきた。(なお上巻は次回のリクエスト復刊に期待。)中間である本書には「曽呂利物語」「片仮名本・因果物語」「伽婢子」の3種の本から、全部で88の作品が収録されている。古文ではあるが、(江戸時代の)一般読者向けのやさしい文章なので決して読みにくくは無く、リズムに乗ればスラスラと楽に読み進むことが出来る。
 『江戸怪異草子』の時にも書いたことだが、この時代の小説は今では決して読めないような独特の雰囲気が堪らなく好い。この雰囲気は一体どこからくるのだろう?と前から考えていたのだが、本書の解説を読んで納得できた。細かく分けるとどうやら3種類の話が混じっているという事らしい。
 ひとつは昔ながらのいわゆる「民話」や「昔話」のようなもの。そしてもうひとつは『日本霊異記』のような仏教説話によくある「因果モノ」というやつ。最後のひとつは『聊斎志異』や『閲微草堂筆記』のような、中国の「志怪小説」の流れをくむもの。自分がとりわけ好きなのは、ひとつ目の「民話」的な話と三つ目の「志怪小説」のような話。「親の因果が子に報い」みたいないわゆる「因果モノ」は話がワンパターンになりがちなので、沢山読んでいると少し飽きてしまう。そういうタイプのではなくて、オチも理由説明もなくただ変な出来事が起こるだけ、という話の方が好みだ。
 もしも「因果(=原因と結果)」という世の中の“理(ことわり)”が通用しないのであれば、そこに描かれるのは“条理”が通用しない“不条理“の世界ということになる。
 この味を正しく近代に伝えている作家と言えば、まず真っ先に思い浮かぶのはやはり泉鏡花ではないだろうか。自分が泉鏡花を好きなのは、きっとそんな“不条理”な怪談を書いてくれるからなんだと思う。

<追記>
 ところで有名な禅宗の僧侶・鈴木正三が、この手の怪談話が好きで数多く収集していたとは知らなかった。坊さんでも怪力乱神は好きだったと見える。(笑)
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