『「子供の目」からの発想』 河合隼雄 講談社+α文庫

 著者については今さら詳しい説明の必要もないと思う。ユング心理学の全貌を日本に初めて紹介した人で、臨床心理療法士/心理学者/教育者という3つの顔をもつ。著書は100冊を軽く超えている。本書はそんな河合が児童文学のもつ素晴らしい可能性について、心理学の観点からまとめた本。なお本書における「児童文学」とは「子どものために書かれた本」ではなく、「子どもの視点から書かれた本」のことであって、大人や子供には関係なく“読めば誰でもためになる本”という意味で使われている。
 では「子どもの視点」で見えてくるモノとは何のことだろうか? 乱暴な言い方をすれば、直截に書くとこぼれ落ちてしまう「デリケート」で「儚い」けど「大事」なモノのこと。松下正剛が「フラジャイル」という言葉で表現しているものに近いかも。それを「うさぎの穴(≒おとぎ話的な世界)」という別世界を用いて描こうとするのが「児童文学」なのだ。したがって必ずしも口当たりの良い本ばかりではなく、死や破滅と隣り合わせの非常に危険なテーマを扱っていることも多い。(自分の好きな本を例にとれば、天沢退二郎『光車よ、まわれ!』なんかがそうかな。)
 本書で取り上げられている作品は数多いが、自分が読んだことがあったのはル=グィン『ゲド戦記』やエンデ『はてしない物語』などの有名なファンタジーぐらい。しかし河合による紹介を読んでいると、挙げられた本をどれもみな読んでみたくなってくる。児童文学は嵌まると奥が深いらしいのでこれ以上手を広げるのも何だし、うっかりエライ本を読んでしまったがどうしたものか。いいブックガイドにあたると愉しいが後が困る。(笑)
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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