『江戸怪異草子』 浅井了意/富士正晴 河出文庫

 本書は江戸時代に浅井了意が中国の白話から不思議な話や怪談を翻案した短篇集『伽婢子(おとぎぼうこ)』と『狗張子(いぬはりこ)』を、作家の富士正晴が現代語に訳したもの。

 この手の本を読むといつも思うのだが、オチも詳しい説明もない摩訶不思議な物語ばかり。今ではちょっと読めない独特の雰囲気が堪らなく好きだ。『伽婢子』では「狐の妖怪」「牡丹灯籠」「幽霊夫に逢いて語る」も面白いが、とくに好いのは「蜘蛛の鏡」「魚膾の怪」「山中の鬼魅」など。理由もなくただ恐ろしい出来事が起こるだけというのがすごい。『狗張子』では「伊原新三郎 蛇酒を飲む」あたりが好かった。
 解説では『江戸の想像力』の著者・田中優子が『伽婢子』の成り立ちや、その後の近世文学に与えた影響について語っていて、これも大変に面白かった。高い金を出して東洋文庫を買う前に、大雑把に内容を知るには手ごろな文庫だといえる。
 残念だったのは全訳でなく抄訳という事と、訳者・富士正晴によるカッコ書きが作中に頻繁に挿入される事。読者に馴染みがない(と富士が適宜判断した)言葉に注釈をつけているのと、本人の個人的な感想が書いてあるのがあり、いずれも話の流れを乱しているのでその部分は読みとばすのが正解。特に後者(個人的な感想)については、分かった風なひとりよがりのコメントが多く、読んでいて不愉快な箇所も散見される。(*)
 自分はなるべく本のいいところを見つけて褒めることにしているが、訳者のこの姿勢だけはちょっと戴けないなあ。あまりに残念だったので敢えてここに触れておく次第。これから本書を読もうという方は気を付けて頂きたい。

   *…少なくとも自分が引き受けた仕事に対して、物語そのものを「バカバカしい」と吐き
     捨てるようなコメントは書くべきで無いと思うよ。こちらは愉しんで読んでいるのに
     突然冷や水を掛けられたようで気分が悪い。原著に対する愛着がないのか、それとも
     思い入れなどないイヤイヤながらのやらされ仕事だったのかね。

<追記>
 是非とも次は原著で読んでみたいと思い、検索してみたら岩波文庫で『江戸怪談集』というのが出ていることを知った。さすがは岩波。(笑) 古文なのでちょっと読みにくいかもしれないが、他の怪談作品も収録されているようだし、そのうちじっくり腰を据えて読んでやろう。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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