『秘密結社』 綾部恒雄 講談社学術文庫

 本書は「秘密結社」について行った人類学的な研究をまとめたもの。「秘密結社」と聞くとすぐに「世界征服をたくらむ悪の集団」というイメージが浮かんでくる。『仮面ライダー』の悪い影響だなこれは。(笑)
 実際には世界中で数多くみられる社会集団であって、別に怪しくも反社会的でもない。最も有名なのはフリーメーソンだが、要するにイニシエーション(儀礼)などを必須とするクラブ集団の一種のこと。正確に言うと「集団の外部に対して意図的に秘匿する情報」をつくって、それを「集団内だけで共有化」することで特権性を煽り、「メンバーの人間性の向上やある種の政治的目的の為に供する」という特徴を持つ。まあぶっちゃけたところが、秘密をもった仲良しクラブみたいなものに過ぎない。(一部個人の私益のためや反社会的な活動を目的とすれば、いわゆる「悪の秘密結社」ということになるわけだが、実際にはそんなのはいない。)

 語義からすると「社を結する」―すなわち他と隔離された「結界」を設けるということになろうか。そしてもちろん結界の中にあるのは外部の者に隠された「秘密」というわけだ。
 目的別では2種類に分かれる。ひとつは「入社的(祭祀的)な結社」でもうひとつは「政治的な結社」。入社的な結社ほうが成立は古く、未開社会の部族などでも普通に見ることが出来る。(いやむしろ民族社会の方が多いか?)沖縄のアカマタ・クロマタとか現代に残っているものも多い。
 一方の「政治的な結社」はある程度は社会制度が整備された社会で見られるもので、現状の政治体制に不満を持った人々が自らの行動を秘密にしてある目的を遂行するために結成する。ロシア革命におけるボリシェビキなどもそうだろうか。現代でいえばウィキリークスもその活動内容を見ている限りは秘密結社の理念に等しい気がする。
ちなみに著者による定義を引用すると、「血縁や地縁の原理によらない任意加入の、位階制に応じた秘儀を伴なう目的集団」ということになる。

 ここで話題はガラリと変わる。物語の中には我々が住む現実の世界と異なる独自の設定(≒世界観ともいう)を持つものがある。それがストーリーの信仰とともに徐々に読者に明かされていく仕掛けになっている。単に物語を進める上での背景に過ぎない物も中にはあるが、それが物語の重要なカギを握っている場合もある。(*)

   *…話の性質上、SFやファンタジー系の小説に多いようだ。前者の「背景」の例と
     しては、(異論は有ると思うが、)自分としてはトールキンの『指輪物語』や
     ル=グィンの『ゲド戦記』を挙げておきたい。また後者の「カギ」の例としては
     ウルフの『新しい太陽の書』やワトソンの『黒き流れ』などが当て嵌まると思う。
     (以上、一部の人にしかわからない話題で申し訳ない。)

 読者は話を読み進むにつれて、隠されていた「世界の秘密」が主人公たちの目の前に開示されていく場に立ち会うことになるが、その過程で味わえる独特の感覚は他のどんなタイプの小説にもない甘美な魅力を持っている。あまりに卑近な例を引き合いに出して恐縮だが、おそらく秘密結社における秘儀というのも、これと同じタイプの快感なんじゃないかな?と思っている。今この瞬間、世界の秘密に触れているという感覚が結社の構成員たちの強い結束を促すとともに、彼らの精神的な成長にも寄与しているのだろう。だからこそ新しい加入希望者に与えられる試練が難しく設定されているわけだし、結社のルールを守らないものへは半端じゃなく厳しい制裁が科せられるのだ。
 なぜなら結社の構成員として認められることは、その瞬間から社会の一員として責任を持つと言う事でもあるのだから。

<追記>
 あまっちょろい連中が各地の成人式で暴れたというニュースをよく聞くが、いっそのこと成人式にも秘儀を設けて、言うこときかない連中は“半殺し”にするくらいの方が、人間的な成長が出来てよかったりして。(笑)
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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