2010年11月の読了本

『霊性の文学 霊的人間』 鎌田東二 角川文庫ソフィア
  *宮沢賢治からノヴァーリス、ゲーテ、ラフカディオ・ハーン、はては遠藤周作まで、
   古今東西の作家たちを俎上にあげ、文学における「霊性」の追求を論じた本。先に出た
   『霊性の文学 言霊の力』の姉妹編。なお「霊性」とは鈴木大拙の定義によれば
   「宗教性」という事と同義であるが、本書の第6章では「理性」の意味で使われており、
   少し混乱してくる。しかし鎌田の本を読むといつも、いかに自分は理性面のみが肥大
   して、感情(情緒)面が未発達かということが思い知らされるなあ。(自分では情緒も
   それなりに発達してると思ってたんだが。)
『人生の奇跡』 J・G・バラード 東京創元社
  *著者最後の著作にして唯一の自伝。(「自伝的小説」としてはベストセラーになった
   『太陽の帝国』とその続編『女たちのやさしさ』があるが、フィクションの要素を
   省いた本当の意味での自伝は本書のみ。)
   SF作家としてのバラードに関する描写の面白さは、ニューウェーブ運動のきっかけ
   などの裏話や『沈んだ世界』『残虐行為展覧会』『クラッシュ』『太陽の帝国』あたり
   の執筆背景、それにバラード作品に頻出する世紀末的な風景の元になった体験などに
   あるといえるだろう。残念なのは取り上げられている自作品が偏っているので、もっと
   著者による自作解説が読みたかったことかな。
   一方、ひとりの人間としてのバラードの人生を見た場合、彼の人生観は“最高”だと
   思う。開高健ですら実は「火宅の人」であったように、作家としては尊敬すべき人物で
   あっても、人間的にはあまり知りあいに成りたくないタイプの人も多い。その点、
   「人間嫌いでSF作家同士の付き合いも殆どしない」と言われていたバラードがこれ程
   「いい人」だったとは発見だった。作家として大好き/人間としては完璧。もはや言う
   こと無いね。
『コロッケの丸かじり』 東海林さだお 文春文庫
  *丸かじりシリーズが累計で200万部突破したらしい。記念に3か月連続刊行するとの事。
   これで2か月目だが来月にも勿論、つまり全部買います。(笑)
『シモーヌ・ヴェイユ入門』 ロバート・コールズ 平凡社ライブラリー
  *第2次世界大戦中にその短い生涯を閉じた女性思想家シモーヌ・ヴェイユ。彼女の活動と
   思想についての紹介。
『OZの迷宮』 柄刀一 光文社文庫
  *連作短篇集であるが、主題はなんと「探偵」。柄刀一は今のところどれもハズレが無く
   気に入っている。
『エステルハージ博士の事件簿』 アブラム・デイヴィッドスン 河出書房新社
  *博覧強記の著者による虚実入り混じったジャンル横断型の連作短篇集で、まさに「スト
   レンジ・フィクション」としか言いようがない。気に入った。
『ナマコの眼』 ちくま学芸文庫
  *アジア・オセアニア地域を中心としたナマコの交易史および文化史。世界の見え方が
   ちょびっと変わるかも?
『魚舟・獣舟』 上田早夕里 光文社文庫
  *第4回小松左京賞を受賞してデビューした著者による短篇集。(この人の本は初めて
   読んだ。)表題作と「くさびらの道」は特に好みだな。
『エッフェル塔』 ロラン・バルト ちくま学芸文庫
  *記号論の大家ロラン・バルトにより書かれた実践的分析の代表作。本文は100ページしか
   ないが、ほぼ同量の解説がつく。(笑)バルト思想の入門には一番いい本かも。
『テンペスト1~4』 池上永一 角川文庫
  *沖縄を舞台にしたファンタジーの傑作『バガージマヌパナス(わたしの島のはなし)』
   でデビューした自分のお気に入り作家。本書で遂にメジャー作家の仲間入りをした。
   著者に対してはこれ以上は何もいうことは無いのだが、角川書店については是非ひとこと
   言いたい。4分冊に細かくして価格を上げたのはまだいいとして、それを8月末~11月末
   まで3カ月かけて1冊ずつ刊行する暴挙は許せん。まとめて読みたいから全巻そろうまで
   待たされることになった。こんなものは一度に出せ!(笑)
    注) My_favorite6の「沖縄」の項に本書へのコメントを追加。
『書物の敵』 庄司浅水 講談社学術文庫
  *有名な愛書家である著者がウィリアム・ブレイズによる古典的著作をもとに、およそ
   「書物の敵」と思われるものについて列挙した本。火や水は勿論のこと、はては紙魚や
   無頓着な輩など、書籍を痛めつける要因が次々紹介される。(真面目に書かれているだけ
   になかなか笑える。)後半には書物にまつわるエッセイも併録。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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