『ミラーニューロンの発見』 マルコ・イアコボーニ ハヤカワ新書juice

 ミラーニューロンに関する研究解説書だが、原著が2008年に書かれたというから出来たてホヤホヤ。
「アフォーダンス理論」や「ソマティック・マーカー仮説」の登場によって、脳による認知~判断や意識発生の仕組みが、まるで精妙なドミノ倒し(またはバトンリレー)のようなものであることが徐々に判ってきたわけが、この「ミラーニューロン」はおそらく一つ一つのドミノの駒にあたる。「DNAが生物学の分野に果たしたのと同様の役割を、ミラーニューロンは心理学(神経科学)の分野で果たすだろう」と言う言葉が紹介されているが、本書を読むと全く持ってその通りだと思えてくる。

 中身はといえば、なるべく具体的な例を交えることで一般読者にも判りやすくした、ミラーニューロンの最新研究の紹介。具体的な例を挙げると、自閉症の直接原因が「ミラーニューロンの発達障害」にあると思われること並びに治療の可能性についての話とか、人間の「自意識」は「周囲の人の模倣」に始まって「他者への共感」の能力を獲得するところから生まれるらしいという話など。
 本書の前半には認知のメカニズムなど自然科学系の話題をオーソドックスにまとめてあるが、後半はちょっと驚き。なんとミラーニューロンによる模倣が個人のレベルでなく社会にも“直接的に”影響を与えているらしく、その根拠となる事例(仮説)について紹介されている。かなり大胆な仮説ではあるが、前半の内容を踏まえて読むと説得力がある。実はかなり恐ろしい話題も多い。タバコやギャンブルが止められない理由は、視覚的な刺激で(つまり他者がやっているのを見かけるだけで)反応してしまうミラーニューロンによるものらしい。また子供がテレビなどで暴力シーンを見たあとは、ミラーニューロンによって暴力シーンへの親和性が発生して、脳に長期的な影響が出る恐れがあるとのこと。ミラーニューロンは生きていく上で必要不可欠なものではあるが、それゆえの弊害もあるようだ。
 なお、少し前に「ニューロマーケティング(*)」なる言葉がマーケティング業界で取り上げられたが、その話の元ネタはどうやら本書らしい。ミラーニューロンの研究の一環としてアメリカで行われた実験があり、かなりセンセーショナルな結果だったので、ネタに困っていたマスコミが早速とびついたものと思われる。(ただし本書での取り上げ方はいたって真面目なもの。)

   *…未来の主流になるかもしれないマーケティング手法として取り上げられた。
     その内容は、コマーシャルを見ている時のニューロンの発火を調べることで、
     そのPR方法が本当に効果があるかどうかを調べるというもの。

 唐突だが、きっと脳科学におけるこれからのお薦めオモシロ分野は、海馬(記憶)とブローカー野(ミラーニューロン)に違いない。しばらくは追っかけてみても良いかも?
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