2017年1月の読了本

相変わらずの低空飛行だが何とか6冊読めた。(漫画版『夢十夜』も加えると7冊。)読了数は少ないが、好きな物だけ読んでいるので満足度はわりと高い。(ただし相変わらずのペースで本を買っているので、読めない本は溜まっていく一方だが。/苦笑)

『月光とアムネジア』牧野修 ハヤカワ文庫
架空の言葉と文化を持つ架空の国が舞台。かつて〈レーテ〉と呼ばれる異常空間での事故で重篤な認知障害に陥った元刑事が、伝説の殺人者「月光夜」を追って再び〈レーテ〉へと侵入する......。凄惨なシーンが強烈なバイオレンス幻想小説。暴力的な描写が苦手な方にはちとつらいかもしれないが、この著者の言葉の感覚はとても好きだ。

『月の裏側』クロード・レヴィ=ストロース 中央公論新社
訳者は人類学者の川田順造氏。副題に「日本文化への視角」とあるように、著者の文章から日本に関するものだけを集めたオリジナル編集。日本に関する講演録や序文といった小文を集めたもので、取り上げられるテーマは『日本書紀』や『源氏物語』、『因幡の白兎』の説話や琉球のノロ、そして仙厓和尚の水墨画など。内容は説話分析から旅行記や対談など幅広い。日本人に馴染みのあるものばかりなので入門書として良いかも。外国人であるが故の日本文化に対する勘違いや誤解も多く見られるが、それぞれ川田順造氏による訳注で丁寧にコメントされているのも親切だ。

『増補 モスクが語るイスラム史』羽田正 ちくま学芸文庫
東はイランから西はスペインまでを対象に、7〜18世紀の大モスクの様式を通じてイスラム世界の変遷を紹介した本。イスラムの歴史を建築で繙くのはこれまで知らなかった視点で大変に面白く読めた。新たに追加された補章も大変良い。22年前に中公新書から出て品切れとなったままの本を、こうして復刊してくれるのはとても有難い。(すぐに学芸文庫自体が品切れになってしまうのが難点だが。/笑)著者は本書について「もう古い本なので今更」と言いつつ新たに補章を追加してくれていて、その後出た関連本を紹介してくれているのも好感が持てる。しかしなかなかどうして、補章を除いても今読んで充分に面白い内容だと思う。

『怪書探訪』古書山たかし 東洋経済新報社
ミステリを中心に稀覯本や珍本を収集する著者による、自らが収集した古書にまつわるエピソードと、横田順彌氏の『日本SFこてん古典』を彷彿とさせるような語り口がとても愉しい珍本の紹介からなる古書エッセイ。著者の本職は上場企業の役員だそうで、結構なお金を古書蒐集につぎ込んでいる所謂「書痴」もしくは「書鬼」というタイプの人。元になった文章も実は東洋経済オンラインに連載したものなのだそう。なぜこんなお堅い出版社から出たのかと思っていたが腑に落ちた。
ポプラ社の少年探偵シリーズや南洋一郎版のルパンシリーズに、中島河太郎著『推理小説の読み方』など、著者が子供の頃に読んでいた本が結構自分とだぶっているので、もしかして著者は自分と同年代なのかもしれない。それと、豪雨の際にマンション上階のベランダから溢れた大量の汚水が著者の蔵書の上へしたたり落ちるくだりは、読んでいてとても心臓に悪かった。本好きにとってはちょっとしたホラー小説のようなものだ。

『夢十夜』夏目漱石/近藤ようこ 岩波書店
夏目漱石の小説『夢十夜』を近藤ようこ氏が漫画化したもの。文章で表現された世界を近藤氏のイマジネーションで絵にしていく。考え抜かれた構図も流石。自分のイメージと違うところもあるし、自分のイメージをはるかに超えるものもあって、ずっと眺めていても飽きない。なるほどこういう風に絵になるのかと、文章では正直あまり面白くなかった話もこうして見るとまた楽しく読める。
小説版『夢十夜』で好きなのは、百合の花の第一夜に子供を背負う第三夜、蛇使いの爺さんの第四夜に海をゆく大きな船の第七夜、そして豚に舐められる第十夜といったところだが、漫画版『夢十夜』では夜の侍の第ニ夜と床屋の第八夜もかなり好かった。これらの作品は映像化した方が断然好くなると思う。(それが近藤氏の画力によるものではあるのはもちろんだが。)

『夫のちんぽが入らない』こだま 扶桑社
今話題の本。衝撃的な題名もさることながら、中身もなかなかに重い。複雑な家庭関係に育った一人の女性がやがて小学校の教師となり、心と身体を病んで苦しみつつも夫との「平穏な」生活を掴むまでの壮絶な記で、以前読んだ卯月妙子氏の漫画『人間仮免中』を思い出した。これはすごい。

『ドラゴン・ヴォランの部屋』J・S・レ・ファニュ 創元推理文庫
表題作はまるで『三銃士』を思わせるような軽快で仕掛けに満ちた中篇で、無鉄砲で直情的(悪く言えばおバカ)な主人公がひとりの女性に振り回される。著者に当初期待していた怪奇譚ではなかったけれど、スリルがあってこれはこれで愉しかった。その他には初期と後期からそれぞれ二篇ずつ怪奇譚を収録しており、幽霊や妖精が跋扈する話も存分に愉しめる。自分はファウスト的な悪魔物や妖精郷の話が好きなので、収録作の中では「ロバート・アーダ卿の運命」と「ローラ・シルヴァー・ベル」が好みだが、「ティローン州のある名家の物語」に出てくる盲目の狂女もかなり怖いのでお奨め。
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サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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