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『昨夜見た夢』について

先月、新しく『昨夜見た夢』というカテゴリを追加したが、何の説明も無しだったので、遅ればせながら説明を加えます。
これは文字通り昨夜みた夢を次の日にツイッターで呟いているもの。しらない間に結構たまっていたので、こちらにまとめておこうというわけです。夢のつぶやきは今もまだ続けているので、溜まってきたらまたアップする予定です。
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2020年8月の読了本

今月は夏休みを挟んだので思う存分読めた。出かけられないのも悪いことばかりじゃなくて、読書のためには良かったりする。

『土曜日は灰色の馬』恩田陸 ちくま文庫
強力な物語作家によるエッセイ。といっても同著者による『恐怖の報酬』のようなものを期待していたら、ちょっと違った。全体のおよそ5分の4は様々な小説の巻末解説や、映画レビューだったりするので、エッセイと書評、それにブックガイドが混じったような感じ。未読ないし未見の作品については今ひとつ解らない点もあるが、それも含めて、まあなるほどと読んだ。著者の本は〈常野物語〉のシリーズが好きなのだが、読書遍歴はやはり自分と似たようなもので、SFやミステリ、それに漫画をたくさん読まれてきたようだ。書評で取り上げられている本もその手のものが多い。
個人的にかなり好かったのは冒頭のエッセイ「硝子越しに囁く」と第二部「少女漫画と成長してきた」、そして最後の「アイドルの流儀 ビートルズについて」あたり。少女漫画は殆ど読んでないので挙げられている作品も解らないのだが、「りぼん」から月二回刊時代の「花とゆめ」そして「La La」「ぶ〜け」といった著者の雑誌遍歴を見るとピンとくる人も多そうだ。(内田善美について語るくだりはとても熱い)
ところどころに書き残しておきたいようないいフレーズが顔を出すのが、この人の文章の魅力であるね。
特に気に入ったのは次の一文。
「都市生活者の喜びは、匿名の存在として潜り込む場所を複数持てることだろう。職場と自宅の間に。もしくは、黄昏と夜の間に。」
まるでポーの「群衆の人」だ。あるいはそういった場所を持てない人が、本を読むのかも知れない。

『首里の馬』高山羽根子 新潮社
第163回芥川賞受賞作。沖縄の地でひとり暮らしをする未名子(みなこ)は、年取った順(より)さんという女性が集めた民族風習や風俗の記録を整理する手伝いをしながら、怪しげな事務所で世界中に「クイズ」の問題を出す仕事をしている。そんな彼女のもとを、台風の夜、今はもういないはずの「宮古馬(ナークー)」が訪れる……。
日常の中に挟み込まれる異質なものを通じて、何気なく過ごされていく日常の中から、いろいろなものが立ち上がってくるさまは見事なものだ。マイクロチップに収められてしまうほどの「情報」。それはこの世界に産まれ生きてきたものたちの「記録」であり、かけがえのない/消えてゆくしかない思い出でもある。個人の「想い」がそのままダイレクトに宇宙へとつながっていくのは、優れた翻訳作品にも似た読み心地だった。
円城塔や今村夏子らに続き、創元SF短編賞でデビューした著者が今回新たに芥川賞を獲ったということは、日本の文学の立ち位置がどんどん世界文学に変わりつつあることを示しているのかも知れない。

『あなたに似た人〔新訳版〕Ⅱ』ロアルド・ダール ハヤカワ文庫
以前、同じハヤカワ・ミステリ文庫から出ていたものに、単行本未収録の二作品を加えた新訳版のうちの下巻。実は二巻本だったのだが、旧訳版が一冊だったので気がつかず書い損ねていた。今回、読み出してからはじめて気がついたという粗忽者。残念ながら近所の本屋に「Ⅰ」は未入荷なので今回は後半のみとなってしまった。(ただし短篇集であるため、読む分には何も不都合は無い。)
うろ覚えだが旧版の解説では、「賭け事」をテーマにしているといった説明がされていたような記憶がある。そしてたしかに賭け事の話も多いのだが、今回(後半だけでも)読み返してみて、むしろダールは人間の悲喜こもごもや狂気、皮肉な運命といったものこそを描きたいのであって、ギャンブルはそれが色濃く出るものだから選ばれているだけのような気がしてきた。
自分はダール作品の中では『オズワルド叔父さん』がいちばん好きなのだが、本書でもブラックな味つけの「満たされた人生に最後の別れを」よりは連作四短篇「クロードの犬」の方がお気に入りである。なので特別収録の二作品のうちの一つがクロードものであるのも嬉しかった。サキでいえば『クローヴィス物語』みたいなものだろうか。そのうち前半も入手してぜんぶを新訳で読み返したい。

『シンポ教授の生活とミステリー』新保博久 光文社文庫
ミステリ評論家の著者が、過去30年あまりの間に書いた文章から精選してまとめた雑文集。エッセイやガイドブック的なもの、近況報告や追悼文など内容は多岐に亘る。密室や誘拐の講義などたいへんに面白い。ミステリ系のこの手のバラエティ・ブックとしては、喜国雅彦の〈本棚探偵シリーズ〉と同じくらい気に入った。著者の博覧強記ぶりに感心しながらも、それが嫌味ではなく素直に愉しめるのは、著者自身がミステリをこよなく愛して(こじれて?)いるからだろう。結構ボリュームのある本ながら、「こういう人、大学のサークルにいたよなあ」と最後まで楽しく読むことができた。
自らの読書遍歴を綴った「教授への長い道」では、偕成社〈世界推理・科学名作全集〉やポプラ社〈怪盗ルパン全集〉、あかね書房〈少年少女世界推理文学全集〉に福島正実編『SF入門』、フレドリック・ブラウン など、懐かしい名前が次々と出てきて、自分のようなロートルファンには涙もの。この章だけでも本書を手にした甲斐があった。
また予想外に良かったのが70ページ近くにわたる各種追悼文の章。詳しく知らない作家についても、その業績や作風など簡潔に触れてあって入門的な読み方もできる。人柄などはもちろんのこと、ちょっとしたエピソードも本人の横顔が知れてとても好かった。笹沢左保や土屋隆夫は読んだこと無いのだが、一度読んでみたいと思えたし、泡坂妻夫や都筑道夫、山田風太郎もまた読み返したいと感じた。
結局のところ、どんなものでもその道を好きな人が、思いのたけを存分に述べた文章が面白いということなのだろう。SF・幻想関連でいえば横田順彌、牧眞司、北原尚彦といった方々の著作が頭に浮かぶが、最近はあまり新刊で見当たらないのが残念。この本が売れて、光文社文庫に入ればいいのに。(そういえば西崎憲、中村融といった翻訳家の方々のエッセイも一度読んでみたいものだ。)

『宇宙・肉体・悪魔』J・D・バナール みすず書房
1972年に刊行された旧版に、新たに瀬名秀明氏による解説を付した新版。原著の刊行は世界がナチスによる虐殺もスターリンによる粛清も経験していなかった1929年。人類の「進歩」に関して、まだ27歳の著者が想像力の限りを尽くして描いたビジョンである。「理性的精神の三つの敵の未来を探る」という副題がついていて、今後、宇宙進出をしていく人類がどのように変わっていくか、そして「より良い進歩」を果たしてゆくためにはどのようなことが克服されなければならないかについて、科学者の立場から考察されている。 ただし直接言及されているだけでもバーナード・ショー(戯曲『人と超人』のことか?)、オルダス・ハクスリー(『すばらしい新世界』は1932年なので『恋愛対位法』?)、D・H・ロレンス(『翼ある蛇』?)、そしてバートランド・ラッセル(『科学の未来と文明破壊の脅威』?)などの論客の名があるし、他にもヘーゲルやマルクス主義の影響が感じられるなど、科学知識偏重ではなく「総合知」としての洞察がなされていると思える。
最初の「未来」の章は未来予測に関する方法論であり、未来に対して願望ではなく客観的な予測をする時の拠り所として、歴史/物理法則/自らの願望についての知識(自覚)をあげている。(但しこの場合の「歴史」とは、ヘーゲルの世界精神への過程に近いようだ。)ちなみに本書でいう「三つの敵」とは、ゆりかごである地球から離れた人類を襲う「自然環境」、環境が変わることで影響を受けざるを得ない生物としての「人間の肉体」、そして願望や恐怖といった「人間の精神」のこと。これらについて順に考察を行い、最後には「科学と芸術と宗教の新しい統合」により「進化」がなされていくことと、そこから拓けていくであろう全く新しい世界への不安と期待で締めくくられる。
解説で書かれているように、『最後にして最初の人間』や『スターメイカー』はもちろんのこと、『オッド・ジョン』や『シリウス』といった一連の著作すべてでステープルドンへの連想が働くし、A・C・クラークも『幼年期の終わり』『都市と星』だけでなく『2001年宇宙の旅』などで見られる神秘主義的側面が本書の影響であることは一読すれば納得できる。さらにはジョン・ヴァーリィの〈八世界〉シリーズやブルース・スターリングの『スキズマトリックス』をはじめとする〈機械主義者/工作者〉シリーズ、グレッグ・イーガン『ディアスポラ』など、その後のSF小説をリードしてきた有名作にもよく似たビジョンが次々と示され、科学的な思弁小説としてのSFを好む向きにはおすすめの本だと思う。ブランキ『天体による永遠』などと同様、まさに奇想の書と呼ぶに相応しい一冊だった。

『言葉の守り人』ホルヘ・ミゲル・ココム・ペッチ 国書刊行会
〈新しいマヤの文学〉全3冊の第2巻。元は『マヤの賢人グレゴリオおじいさん』という名で2012年に出版された児童文学とのこと。
ある日「ぼく」は村の古老から、彼が語る「お話を覚えて文字にする」という大切な役目を仰せつかる。それが風の修行や夢の修行を経て「秘密の名前」を自分のものとし、自らを守ってくれる力を持つという鳥の歌や風の秘密を知って「言葉の守り人」になるステップの始まりだった……。
おじいさんの教えの数々はメディテーションでありイニシエーションであり、そして「ぼく」が過去から伝わる叡知を引き継ぎ、ほんとうの自分を見つけるために必要なものばかりだ。キリスト教と結びついた、西洋的な「アイデンティティ」というものが入ってくる前のマヤの人々の自己実現とは、このようなものであったのだろうか。幻想の描写は子供向けとは思えぬほどの迫力に満ちていて、また美しい。
レヴィ=ストロースや山口昌男の著作が好きなら読んで絶対に損はしないと思う。短いがとても好い本だった。

『ウィトゲンシュタインの愛人』デイヴィッド・マークソン 国書刊行会
ベケット『ゴドーを待ちながら』や筒井康隆『虚人たち』に比較出来そうな実験小説。J・G・バラードやアンナ・カヴァンに類する「SF小説」として読むことも出来るし、終始、発狂した女性による心象世界の描写とみることも出来るが、いずれにせよ非常に完成度が高い。 画家である主人公の女性は、目を覚ますと世界に自分以外の凡ゆる人間が消え失せている事に気付く。野菜などの植物はあるが、犬や猫をはじめとする動物も全くいない。そんな世界で彼女はただひとり、文明の残滓をゆっくりと使いつぶしながら、タイプライターに向かって画家やギリシア神話、音楽家や哲学・思想家についての薀蓄と、過去の記憶に彩られた独白を打ち続ける。言葉は同じところをぐるぐると回り、後になって本人の手により訂正がかけられ、とつぜん何日も間があき、とりとめもなく続いていく。「世界はそこで起きることのすべてだ」というヴィトゲンシュタインの言葉が何度も繰り返される。 これを心象世界ととればカヴァン『氷』のような絶望に満ちた物語にもなるし、そのまま素直に受け取れば不思議なサバイバル小説ともとれる。もちろん芸術にまつわるトリヴィアとして愉しむこともできる。(どこまで本当かは信頼が置けない書き手ではあるが)読者は揺れ動く独白に合わせて不安定なこころのまま読み進むことになる。自らの輪郭は見せないままに様々なものをいびつに映しだしてみせる鏡のような小説だった。ロブ=グリエよりも好きだな。

『修善寺物語 正雪の二代目 他四篇』岡本綺堂 岩波文庫
岡本綺堂作の「新歌舞伎」の脚本6篇を収録した戯曲集。表題の二作の他に「箕輪の心中」「佐々木高綱」「能因法師」「俳諧師」を収める。能面師・夜叉王の面にかける執念を描く代表作の「修善寺物語」はもちろん、鎌倉武士の頼朝に対する確執の「佐々木高綱」、武士の身分を捨てて俳諧の道に進んだ父と娘の人情話「俳諧師」なども以前読んだことはあるが、さらさらと読み進むうち、また新たな感慨に耽ってしまう。やはり綺堂は巧い。軽妙な「能因法師」がシェイクスピアの喜劇を読んでいるようで好かった。戸板康二による解説も文学ではなく演劇の立場から述べられていて新鮮だった。

『THIS IS JAPAN』ブレイディみかこ 新潮文庫
副題は「英国保育士が見た日本」。著者は『花の命はノー・フューチャー』や『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』などを読んで、自分が全幅の信頼を置いている書き手だ。本書は彼女が数ヶ月に亘り日本に滞在して、あちこち見て聴いて回った記録。いつものように地べたから見る姿勢を崩さず、かつ先入観無しに見て回った結果、図らずも本書のテーマは「日本の貧困」と相成った。元は2016年に出版された本だが、ここで取り上げられていることは、今もなお解決するどころか、ますます加速しているように思える。
今起こっているのは右と左の対立では無く上と下の格差であり、直すべきは経済、そして損なわれているのは人権であり人としての尊厳なのだ。日本でも怒りを持って声を上げるべき時だと強く思う。しかし高齢化と少子化が進む今、残された時間は少ない。

『時間は逆戻りするのか』高水裕一 講談社ブルーバックス
著者は宇宙論の研究者だが、専門的な内容ではなく、まるで夏休み子ども科学電話相談のようなノリで書かれた一般向けの読み物。数式をほとんど使用しないで、時間(時空)に関係するトピックスを、物理学を中心にしてこれでもかと盛り込んだ、幕の内弁当のような本だった。
「空間はなぜ三次元なのか?」「空間(タテヨコ高さ)は自由に動けるのに、なぜ"時間の矢"は一方向にしか動かないのか?」といった素朴だが深い疑問に対して、相対性理論や量子力学、超弦理論などの考え方を紹介しつつ、現在ではどのように考えられているかを説明していく。個人的には超弦理論と並ぶ最新宇宙理論の一つである「ループ量子重力理論」というのがおもしろかった。
当然ながら結論のようなものは無いのだが、それでも要約すると次のような感じに落ち着くのではないかと思う。
・マクロな世界で時間が逆行することは無いが、量子のようなミクロの世界では一部で逆行することはあり得るかも
・時間は重力(これも引力だけで斥力がない一方通行の物理力)と関係があるかも知れない
・ビックバンから時間が始まるとすると観測者の問題が出てくるので、ホーキング博士は虚時間による神の存在を必要としない宇宙論を考えた。同様に「サイクリック宇宙」といった新しい宇宙論が、超弦理論やループ量子重力理論などから生まれている
いずれにせよ現在進行形の研究テーマであり、自分が生きている間には結論は出ないだろう。それでも時々、本書のような解説本が現状説明をしてくれるのを読むことで、その間だけでも浮世のしがらみを忘れて悠久の世界に遊ぶことができる。「その研究は何かの役に立つのですか」と詰問してくる連中には、「こういうことを考えないと退屈のあまり死んでしまうのです」と答えておきたい。

『約束の果て 黒と紫の国』高丘哲次 新潮社
日本ファンタジーノベル大賞2019受賞作『黒よりも濃い紫の国』を改題のうえ加筆・修正を施したもの。現代中国を模したと思しき「伍州」。その古代にあったとされる架空の国「壙(こう)」と「臷南(じなん)」の歴史を綴った二冊の書物が、五千年の時を超えて「私」を黒と紫の国へと誘う……。
よき物語は滋味になる。古代中国(もしくはそれを模した世界)を舞台にした伝奇小説といえば、『後宮小説』『墨攻』『陋巷に在り』の酒見賢一、あるいは〈十二国記〉の小野不由美がすぐに頭に浮かぶが、本書もそれらに負けず劣らずのリーダビリティを持った物語だった。「南朱列国演義」という通俗本(小説)と、「歴世神王拾記」という偽史に記された「歴史」を順に読み進むうち、螞九(ばきゅう)と瑤花(ようか)という二人の男女の悲劇が姿を現してくる。「私」は本書の語り手であるとともに、"フランケンシュタインの怪物"を運命から解放する役割を果たすことになる。何重にも組み合わされた枠組みは最後にきれいな絵柄を見せて、『夢十夜』の「第一夜」を思い出させるものだった。黒と紫とはこういう意味だったのかと納得とともに本を閉じると、そのまま気持ち良く眠りにつけそうな、そんな本である。

『あなたに似た人〔新訳版〕Ⅰ』ロアルド・ダール ハヤカワ文庫
先日気がつかずに2分冊のうちの後半だけを買って読んでしまったが、なんとか前半も手に入れることが出来、順番が逆になってしまったが読み終えた。今回の新訳版は未収録作品が二篇新たに訳されているが、いずれも『Ⅱ』の方に入っているので、こちらは以前読んだものばかり。でも今の言葉で書き直された作品たちを読んでいると、初読の時の「気味の悪さ」がまざまざと蘇ってきて、やはり優れた短篇集だという思いを新たにした。
本書に収録されているのは11篇。賭け事をテーマにした作品が多いが、それは人間の心の闇があからさまになるものだからだと思う。他にも「金」や「怨みの記憶」などを巡る、意地の悪いエピソードが描かれている。(この短篇集に限っていえば、エドワード・ゴーリーの作風に近いかも。)
実を言うと以前から、異色作家の短篇集はほんとうに「ミステリ」なのだろうかと疑問に思うところがあるのだが、本書もミステリ文庫ながらまさにそういう印象を持った。まとめて言えば、悪徳、悪癖、悪寒、悪夢、そして後味の悪さや運の悪さといった「悪」を描くのが、広義の意味でのミステリということで良いのだろうか。(犯罪心理に近いといえば近い。)
小説としてのジャンルがなんであれ、悔しいほどに傑作であることに違いはない。

『砂の降る教室』石川美南 書肆侃侃房
今年、第1回塚本邦雄賞を受賞した歌人の第一歌集を、17年ぶりに新装版として復刊したもの。この人の歌は『短歌タイムカプセル』で初めて知って、とても気に入った。歌集は発行部数が少ないので、昔のものを読みたくてもまず手に入らない。この度、第一歌集が復刊されると聞き、探してやっと手に入れることが出来た。大学生の頃までに作られたみずみずしい歌ばかりである。以下、個人的に気に入ったものをあげてみる。
・満員の山手線に揺られつつ次の偽名を考へてをり
・黄桃色のひかり当たれるピアノからうつかり生えてくる矢野顕子
・明け方の網戸に来たる油蝉がなきだすまでの数秒に 死は
・隣の柿はよく客食ふと耳にしてぞろぞろと見にゆくなりみんな
・「二、三年寝ていた方が良いでせう」春ゆるみゆく内科医の声
・スペインの映画なりしかオレンジを急いで拾ふ少年の影

『体内飛行』石川美南 短歌研究社
今年の三月に出た著者の第五歌集。全部で280首を収録。結婚から初めての妊娠と、まもなく出産という時期に詠まれた歌「体内飛行」に、1980年から2019年までの自らの成長の記憶を詠んだ40首「1980-2019」を付す。著者いわく「日常はワンダーだと実感し続けた二年余り」を刻み込んだ短歌は、読んでいるこちらもわくわくするような驚きに満ちている。以下に個人的に気に入った歌をあげる。
・銀紙で折ればいよいよ寂しくて何犬だらう目を持たぬ犬
・眼圧の検査機の奥スライドの気球が浮かぶ  話がしたい
・パンケーキ焼ける匂ひに破られつ胃袋姫の浅き眠りは
・本棚に『狂気について』読みかけのまま二冊ある  この人と住む
・目を細め生まれておいで  こちら側は汚くて眩しい世界だよ
・ミルハウザー、カズオ・イシグロ、オンダーチェ  虹を端から飲むやうに読む

2020年(第128夜~第149夜)

《文月》

【第149夜】
出張する。移動距離を短くするため、安宅のホテルに泊まり徒歩で東京駅へと向かう。途中の道路に海苔が敷かれている。ロールが大き過ぎるのではないかと思ったが、はみ出さずに敷き終わった。自家使用なので費用は安いらしい。とろろ〜とろろ〜と歌う声がどこかから聞こえてくる。


【第148夜】
カフェで画像データをチェックする。パソコンを操作すると、部屋中にリストが映し出される。殆どは空のフォルダだが、たまにデータの入ったフォルダがある。テーブルの椅子の下にあるファイルを開くと、ロンドンから送られた猫の鳴き声が流れだす。カフェの飼い猫がにおいを嗅ぎにきた。


【第147夜】
感染のおそれが無くなったので、旅行へ行くことにした。選べる島は二つのうちひとつ。画面を見ながらカーソルを動かす。二頭身のキャラが海岸を歩いている。
案の定、黒い影が出てきた。しかし悪魔の出自が夕張炭鉱にあることはもう判っている。やれるものならやってみるがいい。


【第146夜】
二人の人を駅まで迎えに行く。7億円の予算をどうするか考えなくてはならない。ひとまず車を取りに、道路の反対側の駐車場へと向かう。横断歩道が遠いので、大きく迂回しないと道を渡れない。やっと駐車場に着いたら、考えが雑だと言われた。道路を突っ切るべきだったらしい。


【第145夜】
建築物の写真集を見ている。三部構成になっていて、第一部は1960年代の団地を写した白黒写真。第二部は現代のさまざまなマンションの風景が載っている。第三部は未来の家。過去と現在はともかく、未来はまずいのではないか。どうやら写真集を持ってきたのは青い猫型ロボットのようだ。


【第144夜】
ブラジルから荷物が届いた。箱を開けると、本ぐらいの大きさの黒い電子機械とLPレコードが入っている。機械にスイッチは無く中央に柱が飛び出ているだけ。柱の先端にレコードを嵌めると、高速で回転してボサノバが流れだした。レーザーで溝を読み取っているのだろうか。おもしろい。


【第143夜】
父親が独身時代に食べていた食事のメニューが出てきた。納豆に冷奴、海苔に卵と野菜、それに毎回違うおかずがつく。完璧な栄養バランスに感心した。図を見ると、おかずが白飯と味噌汁を正六角形の配置で取り囲んでいる。六門遁甲の陣というらしい。


【第142夜】
なぜか見知らぬ女性と決闘することになった。会場となる駐車場には双方の関係者が大勢詰めかけている。相手に恨みはないが、やるからには正々堂々としなければならない。先方の忘れ物を届けると、スピーカーから知久寿焼の新曲が流れてきた。いい歌だ。本当は決闘などしたくはない。


【第141夜】
ランチメニューで「九種類の温野菜サラダ」というのを頼んだ。注文を受けてから作るので、前の人の分を眺めている。大きな鍋でニンジンや玉ねぎなどが調理されている。豚肉も入っているようだ。もうすぐ出来上がり。最後に片栗粉でとろみをつけた。

これって八宝菜ではないのか。


【第140夜】
風呂に入ろうとしたら物陰に小さな人影が。とっさに捕まえると、服を着た30センチほどの穴熊。逃げようと体をくねらせる。大丈夫、怖くないよと頭をなでて話をする。これが噂に聞く取替え子か。また遊ぼうねと手を離すと、何度も振り返りながら荷物の奥に仲間と消えていった。


【第139夜】
小さな町で祭りの準備をする一家を取材した番組をみている。握りこぶしほどの大きさの蜂が羽を震わせながら、父親の身体を登っていく。雄蜂なので刺さないそうだ。登りきって髪の毛の中に潜り込むと動かなくなった。祭りのときまでじっとしているらしい。エンディング曲が流れ始めた。


《水無月》

【第138夜】
海辺で漁師からイイダコの卵を勧められる。漁網に掛かった透明な卵胞を絞ると、米つぶのような卵が溢れ出てくる。あわてて掌で受けるが気味が悪い。躊躇していると漁師が怒り出したので、思い切って口に入れ奥歯で噛みしめる。ぷちぷちと爆ぜて甘みが口中に広がる。茹でても旨いらしい。


【第137夜】
夕暮れの道を車で行く。渋滞で全く進まなくなる。工事による通行止めらしい。仕方なく裏道にぬけると大きな踏切で止められる。電車の通過を待っていると、いつのまにか自転車と一緒に満員電車に乗っている。次の駅で降りて戻ろうとするが、ここがどこなのかわからない。やがて夜になる。


【第136夜】
母親との二人旅。帰りの路線バスで寝てしまい、「16」についての夢を見た。目が覚めると終点の駅前。重たいバッグを抱えてバスを降り、ショッピングモールへと向かう。階段は海水で濡れ、コンクリートにはフジツボが付いている。海が近い。疲れたので途中の踊り場に布団を敷いて寝る。


【第135夜】
車で郊外の町を行く。大きなスーパーの横の道を抜けると、地元の商店街へと出る。楽器店の看板にはピアノ製造とある。半年待ちの人気店らしい。
空がとてもきれいだったので、車を停めて外に出た。大きな満月が、明るく輝く星と並んで夜空に浮かんでいる。携帯を出して写真を撮った。


【第134夜】
鄙びた温泉旅館へ。岸本佐知子、アラン・ドロンの両氏と合流するも、ご当地Tシャツを買ったらすぐ帰るのだという。土産物屋でチェ・ゲバラの柄など物色している。仏語の「さよなら」を検索したら「カルダノ」と出てきた。ちなみに中国語では「チュー」と言うらしい。違う気がする。


【第133夜】
一冊の本がある。表紙には『田辺聖子の薔薇一輪』とある。ページをめくると「目指すべき姿」や「その方法」などと書かれている。
ふと顔を上げると、骸骨の操り人形が物哀しい音楽に合わせて踊っている。ばらばらになったりまたくっついたり。巴里の街では皆が死を想っている。


【第132夜】
バスの出発時間までまだあるので、商店街をぶらぶら歩く。両側に土産物屋が並んでいる。蕗や山菜を混ぜ込んだ韓国のおにぎりの店。球根の水耕栽培セットや鍋焼きうどんの店。子どもが遊んでいるゲームの画面を覗く。蓮の実のような穴から次々と垂れ下がるインベーダーの顔がこわい。


【第131夜】
記憶の栄養は減ることがない。写真をアルバムから剥がし、細かく破いて口の中に放り込む。よく噛んで反芻する。噛んでいるうちに元どおり一枚の写真になるのでアルバムに貼り直す。何度でも栄養を摂ることができる。


【第130夜】
ウルトラマンの夢をみる。
怪獣が現れ、倒そうと奮闘するが逃げられ、何度目かにやっと捕らえることに成功する。三面怪獣ダダである。
エアコンが壊れ、買い換えようと電話するが繋がらず、何度目かにやっと話すことに成功する。霧ヶ峰である。

怪獣とエアコンの夢は繋がっていた。なぜか対になっていたのだと思う。


【第129夜】
竹書房が本のキャンペーンのために珍しい羊を輸入するという。大使館の前で待っていると、扉が開いて黒と白の二頭の羊が出てきた。額の真ん中に一本だけ真っ直ぐなツノが生えている。綱を持った係の人から、噛むので顔の前に手を出さないよう注意をうける。アミルスタン羊というそうだ。


【第128夜】
企画書のフォーマットが新しくなったので、さっそく使ってみる。台数、価格まで書いたところで、宙に浮かんでいた書類が落下を始める。あわてて原価を書き込むとぴたりと止まった。ふわふわ浮いている書類を前にして嬉しくなり笑う。うん、調子いいぞ。

2020年(第102夜~第127夜)

《皐月》

【第127夜】
タンクに液体窒素を注ぐ。もうすぐ出張に行く時間だが、2つもあるので時間がかかる。いっぱいに充填したら次は上部に水を張らなければいけない。水が少ないと危険なのだ。
途中まで作業を見ていたが、もう出掛けなくてはならないので、切り上げて駅へと向かう。駅弁を買わなくては。


【第126夜】
昔話題だったRPGを初めてする。ダイジェストモードを選ぶといきなりラスボス戦に。「どせいさん」というのが助けてくれる。相手は獅子の身体に人の顔がついた怪物。倒すと洞窟に逃げ込み、追いかけていくとケーキに盛りつけられたりと謎のエンディングが。なるほど話題になるわけだ。



【第125夜】
会社で感染症予防の経費を削減するため、ケロヨンの着ぐるみを使うことになった。緑色の蛙の全身スーツ。なぜこれで経費が下がるのかよく分からないが、中の人は大変だろう。赤色のもあって、これは女性用らしい。しばらく考えてはっと気づいた。そうか補色か。


【第124夜】
実家の押入れに吾妻ひでおの本があるのを見つけた。表紙を開くと著者のサインがあり、横に「うそつき!」と言葉が添えてある。
だんだん思い出してきた。SF関係のイベントで同人誌にサインをもらったのだった。階段を上ってくる音がして、兄が顔を出し「おめでとう」といった。


【第123夜】
会社の製品試験室に珍しく来客がある。お土産にするガス漏れ警報器の準備で、事務室と試験室の行き来が忙しい。エレベーターで下に降りようとすると、黒猫の親子が乗り込んできた。青い首輪をしているのでどこかの飼猫らしい。もたもたしているうちにお客さんは帰ってしまった。


【第122夜】
アラビア数字が書かれたリストを前に話し込んでいる。数字を計算に用いていいのは、イスラム教かユダヤ教に入信した人だけなのだそうだ。知らなかった。困ったな、それでは不便ではないか。


【第121夜】
名古屋から大阪へと向かう。家を出て、間違えて壁を壊してしまったが、壁の向こう側にはJR関西線のホームがあった。こんなに家の近くにJRが通っていたのか。時刻表を見ると米津新宮行きがあるらしい。知らない駅だがきっと関西方面なのだろう。ホームの後ろの方で列車を待つことにする。


【第120夜】
申請書類に必要事項を記入している。コンサルタントがやってきて講釈を垂れる。この近辺は「郷」や「村」の字が付いている地名が多いから保守的らしい。住所には未来を感じさせる漢字を使う方が良いとも言われる。そんなこといわれても。


【第119夜】
自宅に献血のキットが送られてきた。ポンプがついた本格的なものだ。動かすと管の中を泡が駆け上ってゆく。母親が試してみたらしいが、貧血気味なのに大丈夫なのか?
小さな赤い袋に触ると、くびれが自動で密封されポロリと外れた。父親の車で持って行くそうだ。自分も献血するかな。


【第118夜】
工場に来ている。昼休憩になり作業員が食堂にやってくる。今日は近隣から差し入れがあったらしく、廊下に並べてある物を一人ひとつずつ貰えるらしい。ポン菓子の袋や玄米をおばちゃん達が次々と受け取っていく。自分は部外者なので横で見ているだけだ。ポン菓子をちょっと食べてみたい。


【第117夜】
出張先の秋田のホテルで日本SF大会が開かれていた。打合せの間に開会式は終わってしまったが、ロビーにはコスプレをした人々が行き来している。楽しい。
夕食を摂ろうと屋台を回り、ウクライナの人と話をする。名古屋から来ているカレー屋があったので、付き合いで注文した。850円。


【第116夜】
1970年代に建てられた最初期の巨大マンションを観に行く。最上階17階のコンドミニアムを目指す。エレベーターで登り長い廊下を進むと、老朽化したコンクリ片が転がり配管が垂れ下がっている。家主は留守のようだ。手すりから外を見ると、コンビナートの炎が眼下に見える。夢の跡。


《卯月》

【第115夜】
山あいの保養施設に遊びに行く。ドアの鍵を開け、換気のために窓を開け放つ。前には田んぼが広がりキジが歩いている。
と、その時、遠くで煙と共に轟音が聞こえた。遠くの方から鳥や獣たちが逃げてくる。慌てて窓に駆け寄ると、猿が部屋に入り込んでくる。両手で追い払って窓を閉める。


【第114夜】
採掘場で謎の組織と闘っている。視界にうつる敵を次々にロックオンしてカンフー技で粉砕する。
岩陰に隠れると露天風呂があったので服を脱いで入る。犬型ロボットに囲まれてしまったが、襲ってくる気配がない。どうやら温泉に浸かっている場合の対処プログラムが無いようだ。助かった。


【第113夜】
海外の研究所へ出張して、顔なじみのスタッフを見かけ挨拶する。懐かしく話をするが、名前が思い出せない。
日本へ戻って仕事をしていると、声をかけられる。振り向くとその人が満面の笑みで立っている。やはり名前が思い出せない。その人はそれじゃあと挨拶して、空に昇っていった。


【第112夜】
大学院に進学することになり、初めての大学を案内してもらう。学祭中だが、周囲がみんな歳下なので少し恥ずかしい。
ひと通り見たところで妻と合流して、友人を加えた三人で公設市場を回る。駝鳥の卵の屋台をみたり、イカ玉のお好み焼きを食べる。友人は水槽の水垢を掃除し始めた。


【第111夜】
海外SF小説の翻訳をすることになり、自分はバリントン・J・ベイリーの某作品の担当に。今手に入らない既訳作品も含めて新たに刊行していくそうなので、これが終わったら次は何を訳せばいいのだろう。今のうちに候補作を選んでおく。『時間帝国の崩壊』はどうか。はたまたアレ?


【第110夜】
腕のいいメキシコ料理店を見つけたので、知人を誘ってランチに行くことに。店内に入ると床が水浸しになっている。入口で待っていると、向こうからプロレスのマスクを被った男が歩いてきた。店の中は皆マスクを被っている。ルチャ・リブレのレスラーが故郷の料理を食べにきているらしい。


【第109夜】
SNSや趣味でつながった方々と、日本SF大会に来ている。今夜は会場となるホテルのビュッフェで夕食会。今年は東北で開催なので、ビュッフェには美味しそうな郷土料理が並んでいる。生牡蠣やカキフライがあったのでとってテーブルに戻ると、皆が愉しそうに食事をしていた。嬉しいなあ。


【第108夜】
サッカーのワールド杯。競技場は街中の公園。樹や錆びたブランコの間を縫って、子どもほどの背の選手が走り回る。ハーフタイムになり、コーチが公園の外から、道にこぼれたボールをいくつも放り込む。どれが試合のボールか分からなくなってしまった。さすがはイタリアである。


【第107夜】
イラストレーターのYOUCHANさんのお宅を訪問。アイデア帳を見せてもらう。中身はなんと小学生の算数ドリル。なるほど、あの透明感のあるイラストは方程式から生まれていたのか。答えあわせが済んで赤く丸がつけられているノートをそっと閉じる。次のイラストのネタを見てはいけない。


【第106夜】
茶畑の広がる丘の町をひとり歩いていると、箱庭のような、ひと抱えほどの牧場が吊り下げてあった。中を覗くと5センチほどの仔牛が草を食んでいる。
目を離した隙に仔牛が柵を乗り越えて側溝を流れていく。慌てて追いかけると、坂の下には池があって、たくさんの仔牛が飛び跳ねていた。


【第105夜】
妻と車で田舎道を往く。古いスーパーに寄るが特に買うものはない。帰ろうとすると駐車場の横にプレハブの小屋がある。小屋の中央にはテーブルが配置され、周りをアジア風の屋台が囲んでいる。来月にはここも取り壊すらしい。
日が暮れてきた。車に戻ると座席に猫が寄ってきた。


【第104夜】
建物に三人で閉じ込められ外では邪神が目覚めようとしているなか、一人が凶悪犯であることがわかり応戦する。
ところが凶悪犯は実は自分だったので、夜が明けて電車で帰ることに。でも本当は乗客の中に凶悪犯がいるらしく、更にびっくり。大どんでん返しの連続で人気のある映画らしい。


【第103夜】
広報部が映像のスイッチをいれると、暗い会議室が真っ青に染まった。潜水艇の深海調査の様子が流れ、数時間に亘る報告が始まる。
深く潜るにつれ部屋が暗くなってゆく。頭上にオレンジ色の光が見えた。クラゲだ。やがて海底に着く。泥の上をホウボウが泳いでいる。静かな会議が続く。


【第102夜】
短篇集を買った。「行列」と「開閉式」が載っているのでさっそく読む。なるほど「決際譲機」というわけか。参考になる。会社のフォーマットとは違うが、気をつけて使えば問題ない。買った甲斐があった。

2020年(第83夜~第101夜)

《弥生》

【第101夜】
試供品のカップ麺をもらったので、会社で食べようとして床にこぼしてしまった。慌てて猫のトイレ始末用のビニール手袋と紙ウエスを持ってきて床を掃除する。部屋が味噌臭い。
がっかりだ。先日もこぼしたので気をつけていたのに。結局、二個もらったカップ麺は全部食べられなかった。


【第100夜】
会議の準備をしていたら、開始時間前に出席者が集まり始めた。自分もうかうかしてはいられない、急いで資料を取りに戻らなくては。
近道しようと実験室の中を抜ける。エスカレーターを上がるとそこは東京ドームシティ。売場の人混みを抜け石垣を登る。会議はもう始まってるだろうなあ。


【第99夜】
仲間内で出版した同人誌の最新刊が巷で話題に。海外長篇SFの連載を始めたのだ。作品のチョイスもさることながら、話題の中心は「リューシャドル」と名乗る覆面翻訳家。素人離れした文章はプロの文筆家の間でも絶賛されている。いったい誰なのか。もしや『キマイラの新しい城』のあの人?


【第98夜】
高級店が並ぶショッピング・モールに迷い込んでしまった。放し飼いのヒョウが後をつけてくる。襲わないと分かっていても気分のいいものではない。ルンバに乗った黒ヒョウ型ロボットが近付いてきた。ヒョウが気を取られている隙に外に出る。いつか逃げ出してしまうのではないだろうか?


【第97夜】
日帰り旅行に行くことになった。自分は前日まで修学旅行だった高校生二人を駅まで迎えに行く係に。一人は家に帰らずそのまま大きな荷物を引いている。時間が無いので駅まで急ぐ。名鉄はアラビア半島行きの特別快速。車内には遺跡の映像が流れ、列車は騒ぐ高校生たちを乗せてひた走る。


【第96夜】
会社の慰安旅行に参加する。名鉄電車を降りるとそこは金毘羅の温泉旅館。全体朝礼が終わって大浴場へと向かう。
服を脱ぎ扉を開けると足元までお湯が。さすがは温泉だ。向こうでは旅館の人が木の棒でお湯をかき混ぜている。洗い場も湯に沈んでいるが、どうやって身体を洗うのだろう。


【第95夜】
地図を頼りに、見知らぬ町を父親と行く。会食を待ち合わせた借家まで、まだ足腰がしっかりした父親が、リヤカーをつけた自転車を押してゆく。用水路があり道が狭くて渡れない。向こうに地図にあった銭湯の煙突が見える。迂回路を探して父親が行く間に、朝顔のある借家を探す。ここか。

いつのまにか兄がいる。母親を会食に連れて来なかったのかと訊かれる。認知症なので難しかったのかもと思う。
向こうから父親が近づいてきた。リヤカーに母親が乗っている。結局連れて来たようだ、良かった。母親はよく分からないなりに嬉しそうだ。皆で笑う。さあ食事にしよう。


【第94夜】
出張で東京に行く。朝早く駅の近くのおにぎり屋に入る。スマホのバッテリーがないので、充電する間に同行者のスマホを借りる。
夜になって、おにぎり屋が居酒屋に変わり会社の飲み会が始まっている。帰ろうと電話を取り出したところ機種が違う。朝、交換したままだったのを思い出した。


【第93夜】
ツイッターのフォロイーさんが職場の同僚になっている。仕事をしながら「津軽パワー」という言葉をつぶやいている。「黒にんにくエキス?」と訊いたところ、好きなバンドの新曲とのこと。相手の身体が妙に小さいが、会ったことがないので、これで正しいのか分からない。机の下に隠れてズボンを引っ張ってくる。


【第92夜】
大きな温泉ホテルに職場のメンバーと泊まっている。もう出発の朝なのだが、同部屋の連中が行方不明。キャリーバッグを転がしてエレベーターであちこち探すが、どこに行ったのか判らない。
出発まで時間が無いので一人で移動することにする。廊下の先にある地下鉄の改札へと向かう。


【第91夜】
仕事を終えて外出先から直帰する。三人で埠頭にあるビルを出ると、外はもう日が暮れて真っ暗に。ふと上を見上げると、一面の星空が広がっていた。頭上には天の河が流れ星座が投影されている。同僚がペンライトで星座を照らした。そんな解説無くても、そのままで充分きれいなのに。


【第90夜】
70年代のような学園もののTVドラマ。オリンピックを目指すサッカー部のキャプテンが主人公で、女番長が実は彼を好きだったりする。
学園に通う途中にある通称「がたがた坂」が渋滞になり、彼女たちが「これじゃガタガタさかざかだー♪」と歌う。何じゃそりゃあと観ながら呆れている。


【第89夜】
新型ウイルスのため出張が禁止となったが、東京に行かなくてはならない。一面に赤い花が咲く田んぼの道をとぼとぼ歩いて行く。やがて国道が見えてくる。背広の男たちが青い蟹を捕まえて路線バスを待っている。バスが来たので飛び乗るが、混んでいたせいで整理券を取り損ねてしまった。


【第88夜】
岐阜の街に行く。会社の同期とばったり会う。広い交差点に椅子を出して交通量の計測をしている。あれ、そんな仕事だったっけ?
話しているうち時間になったので、皆で車に乗って能登まで移動することに。途中で繁華街を抜ける。おかげ横丁をまねて岐阜の門前に作ったのだそうだ。


【第87夜】
自動販売機でコーヒーを買おうとお金を入れたら、ボタンを押していないのに、なぜかファンタのグレープフルーツ味 1.5Lペットボトルが勝手に出てくる。もう一度やってみるが、230円入れたところでやはり勝手にファンタ。二本のペットボトルを手にして途方にくれる。コーヒーが飲みたい。


【第86夜】
プロ野球の春季キャンプに同行する。会社にはロシア国内で使える貸出用ノートパソコンが一台しかないので、チーム全員分のアカウントを作ってログインしなければならない。なぜか自分が情報システム委員にされ、管理を任されることに。正直よくわからない。困ったなあ。


【第85夜】
重要な6つのキーワードがある。出来れば秘密にしておきたかったのだが、ばれてしまったので仕方がない。皆でひとつひとつ具体的な例を当てはめてみる。ああ、こういう意味だったかと納得する。最後のキーワードはFRIENDLY。当てはまる画像は白梟。そうか、あの人だったか。


【第84夜】
妻と一緒にヨーロッパ旅行。石造りの建物のなかにある土産物屋を歩く。本に関した店らしい。紙の束やスタンプ、飾り文字や古書に模したデッサンが置いてある。
外国人の男性がスケッチしている。オリジナルの絵を描いてくれるようだ。おそるおそる話しかけたら日本語が通じた。


【第83夜】
フォロイーさんと一緒にツイッターのツイート分析をしている。優れたつぶやきの上澄みだけを抽出して、つぶやきのイデアを取り出すのだ。
装置を動かすと少しずつ美しいツイートが溜まっていく。とろりとした透明の液体が穏やかに光り輝いている。こぼさないようにそっと小瓶に移す。
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Author:舞狂小鬼
サラリーマンオヤジです。本から雑誌、はては新聞・電車の広告まで、活字と名がつけば何でも読む活字中毒です。息をするように本を読んで、会話するように文を書きたい。

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